『スリーピーホロウ』 ティム・バートン 1999

ティム・バートンは本当にいい感じの映画的位置を確保していますね。
 
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 映画館デートなどという至極ありふれた体験。さえしたことのない公界知らずのぼくではありますけれど、まあその辺の人に比べれば映画について多少は詳しいよ、くらいは言えるつもりでして、そんなぼくが「映画館デートでお薦めの映画監督は?」と訊かれた場合、少し伏し目がちに舌を震わせながら、意味もなく手先をぶるぶるさせて、「ティ、ティ、ティ、ティム・バートンがいいんじゃないかな…うへへ…」と答えるでしょう(なんでそんな答え方を)。

 持ち前の無意味なまわりくどさを発揮して書き出しましたが、ティム・バートンはデートムーヴィーとして恰好の監督でありましょう。まあ映画館デートをする頃合いに丁度よく彼の映画が公開されているかどうか、その辺を突っ込まれるとあれですけれども、来年の春には『アリス・イン・ワンダーランド』が公開されますので、行きたいカップルはウキウキ気分で行けばいいじゃん!(情緒不安定)

 さて、とはいえぼくは2000年代のティム・バートンについてはまだちゃんと観ていないのですけれども、『ビートルジュース』から90年代の監督作はすべて観ています。『スリーピーホロウ』は大変に面白く観ました。この人の映像はやはりちょいと真似できないというか、どうしてこうもまあいい感じの画を撮れるんかいなあと思います。ちょっと他に見あたりません。超一流のパティシエみたいな人です。日本映画はこういうのが本当にできないですね。日本映画でも『下妻物語』の中島哲也や園子温など映像技巧のうまい人がいますけど、ティム・バートンの向いている方向とは全然違うし、実際アメリカ映画を観てみても、ハリウッド超大作云々とはやっぱり全然違う。本当に独特の、なおかつすごくいい感じのポジションを見つけた監督だと思います。

 アメリカの怖い民間伝承みたいなものらしいです。深い森にいる首なしの騎士が人々を惨殺するというもので、この映画ではジョニー・デップが捜査官としてその森に入っていくんですが、この首なし騎士がいいんです。予備知識まったくなしで観始めて、最初三十分くらいはなんか金田一耕助みたいな話だなあと思っていたんですが、あの首なし騎士が襲ってくるシーンではっとさせられ、持って行かれました。いい感じの怖さです。いちばん丁度いい怖さというか、撮り方がいいので迫力、スピード感があるし、あの騎士が出てくる舞台の背景もよく調和しています。ジョニー・デップの佇まいもいいです。『シザーハンズ』『エド・ウッド』のときも感じたんですが、やっぱりこの人は馬鹿っぽい役のほうがいいです。今回の映画でも首なし騎士が格好よすぎるので、どこか間抜けな感じなんです。日本では海賊をやって大ブレイクしたように思いますが、わかりやすいヒーロー的な役回りだと魅力が減じます。ティム・バートンはジョニー・デップとコンビを組んでいろいろつくっていますが、この監督の世界には合うんですね。顔はなんといっても綺麗なので、バートン的世界の住人として実に収まりがよい。

 首なし騎士はもう次から次へと人々の首を切っていきます。『マーズアタック!』でも人がばかばか死んでいましたが、今回はもう馬鹿みたいにわかりやすく首切りシーンを撮っていますね。もう一切のごまかしなく、生首の連続です。実際、生首が大量に出てくる場面もあって、この辺もぼくとしては大変好感度が高いです。とりわけいいなと思うのは、無辜なる人々も容赦なく殺している映画的誠実さです。悪巧みをしているおっさんだけではなく、無関係な女子供も殺す。子供が死ぬ場面こそ直接描いてはいないものの十分にほのめかすやり方で、この辺りはすごく誠実です。ハリウッドにありがちな、「恐怖の殺戮マシーン! でも女子供は殺さない! というか殺されないことになっている」というものではないので、おお、首なし騎士やるやんけ、ええやんけバートン、と思わされます。ティム・バートンの映画が持つ「いい感じ」からして、女子供は死なないことになりそうなんです。でもちゃんと、その辺の差別がないのがいいですね。

 松本人志が書いていましたが、殺人が出てくる映画で大人の男ばかりが殺されるのは変なんです、というかある意味差別的なんです。なんか当たり前のように、「おっさんは殺してよし」みたいになっているのに、「子供を殺すのは駄目」となります。子供を保護するような感じになっていますが、逆に言うとおっさんが保護されなすぎです。おっさんを殺しまくる映画はいくらでもあるのに、子供を大量に殺す映画は観たことがありません。こういう言い方をすると、そういうのは道徳上よろしくない、と言われそうですが、それも変な話です。おっさんを殺すのは道徳上かまわんのかい! ということですから。

話が逸れました。首なし騎士もジョニー・デップもいいんですが、クリスティーナ・リッチがこれまたいいです。ヴィンセント・ギャロの『バッファロー'66』より後年の映画なんですが、あの頃よりもロリータっぽさがあります。それでもちょっと鋭さもあって、雰囲気が安達祐実に似ていると感じるのはぼくだけでしょうか。それにしても安達祐実も『家なき子』がピークという状況にあります(ああ、そうか、こうして話が逸れていくのか)。今日付ウィキで観てみると、なんかぜんっぜん知らない映画ばかりに出ています。舞台やドラマで活躍していたのでしょうが、それにしても映画で活躍しなすぎです。十代後半の彼女をそういえばまったく覚えていません。おそらくはこのクリスティーナ・リッチ的な、小沢健二的に言えば「大人じゃないような子供じゃないような」、ぼく的に言えば「ガール・ゴーイング・トゥ・レディー」的なよさがあっただろうに、日本映画も惜しいことをしました。あ、でも、ルパンの「くたばれノストラダムス」がありました。あのときの安達祐実はいいです。俳優の声優活動に基本的に反対のぼくですが、たまーにああいういい例があるため、絶対断固反対! とまでは言えないのです。
 
 今日は変なほうに進みます。で、『スリーピーホロウ』ですが、この首なし騎士に首ったけだったぼくは、あの馬車チェイスシーンも非常に楽しめました。『バットマン』でもバットポッドを動かしていましたが、ここまでの白熱はなかった。やっぱりバートン的にも、『バットマン』はどこか借り物としてやっていたんじゃないでしょうか。今回のこれは自分のつくりだした世界で心置きなくやっている感じがあり、それが全編に満ちあふれています。推理劇みたいなくだりはちょっとだらだらするんですけども、それでも役者と首なしが魅力的で、かつあの死人の木とかも素晴らしく、あの魔女とジョニー・デップの間合いも素敵で、これはとても好もしい一品です。今のところぼくが観た中では一位『シザーハンズ』は揺るぎませんが、それに次ぐ堂々の二位となりました。そしてまだまだぼくには2000年代の彼の作品を観るという楽しみがあります。ふふふ、「観ていない」ということは、映画通を気取りたいやつには恥だけども、一人の映画観(えいがみ)であるぼくには単純に幸福なことなのだぜ、ふふふ(やっぱり今日は変だ)。 
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by karasmoker | 2009-09-29 04:22 | 洋画 | Comments(8)
Commented by shime4649 at 2009-09-29 09:34
かわいこちゃんじゃなくてゴメンなさいな紫芽路と申します。
はじめまして~! プログにはあまり載せてないけど映画好きです。

ホラー好きの私としては、「スリーピーホロウ」イイ線いってます。
いかにも~な村を舞台に黒魔術、白魔術が出てきてミステリアス。
首なし騎士が自分の頭を得て、口が開いたとき、歯がとがりまくってたのに感動しました。←はまるツボがヘンですか?
安達祐実ちゃん、今、「大奥」の再放送で見てますよ。和宮の役なんだけど、浅野ゆう子や木村多江なんかのシュッとした女優さんたちの中で、
あどけないまん丸顔がすごく引き立ってます。
「コープス・ブライド」もティム・バートンでしたよね。映画館で見てて、隣の席の女の子が号泣しててビビッた。ホロリとはしたけど。
Commented by karasmoker at 2009-09-29 21:34
はじめまして紫芽路さん、コメントありがとうございます。
>首なし騎士が自分の頭を得て、口が開いたとき、歯がとがりまくってたのに感動しました。
「首がない」ことによって、あの騎士が「対話しようのない存在」だってことが直接的に表現され、恐怖が強まります。しかし、いざ首を取り戻したときにあんな怖い顔が出てくると、「ああ、なんかもっと怖くなっちゃったぞ」「首はあるけど会話できそうにないぞ」となり、恐怖が持続するんですね。個人的には、あの騎士と少女二人が森の中で遭遇するあの間合い(及び枝をぺきっと折るあの間)が大好きです。
 
 
Commented by karasmoker at 2009-09-29 21:34
つづき。
安達祐実ちゃんについては、小学生の頃『家なき子』でぼろ泣きした者の一人として、今一度の大化けを期待しているのです。が、テレビドラマなるものをここ五年くらい観ておらず観る気もせず、かといって日本映画もやばい状況にあるため、どうにも大化けが難しい状況にあると感じています。

『コープス・ブライド』はぼくにはもうひとつでした。あの人間の造形のグロテスクさが、ぼくの好きなバートン的キュートさではなかったんですね。死者の世界はすごく楽しかったんですが乗り切れなかった。ただ、花嫁のあの女の子はとても可愛かったと思います。
Commented by shime4649 at 2009-09-29 23:59
さっきまで見てた「スターものまね合戦」みたいな番組に、安達祐実ちゃんが審査員で出てたよ~。シングルマザーだから、いろんな仕事をしなくちゃいけないんでしょうな。出演する作品とか選んでられなくて。

「ナイトメア・ビフォー・クリスマス」にしろ「コープス・ブライド」にしろ、
私は生身の人間が演じてない(アニメも)と興味が持てないのでした。
「スウィニー・トッド」・・・1、2年前の映画です。復讐劇かと思いきや、関係ない人までドンドン殺されちゃいます。ヘレナ・ボナム・カーター(ティム・バートンのパートナーという説明があったけど、妻とは違うのか?)もいい味出しています。この人、ハリーポッターでもアブナイ役やってます。
では、また遊びに来ますね。
Commented by karasmoker at 2009-09-30 01:13
>私は生身の人間が演じてない(アニメも)と興味が持てないのでした。

 それは大変にもったいない! 優れたアニメはとても沢山あるというのに! ゴールデンのドラマやバラエティを観ている場合じゃないですよ!
Commented by shime4649 at 2009-09-30 17:59
>優れたアニメはとても沢山あるというのに!

これは否定しませんよ。ストーリー的にも美術的にも素晴らしいと思われるものはたくさんありますもんね。
Commented by karasmoker at 2009-10-01 07:31
そうなのです。今の日本映画を引っ張っているのは、実はアニメだったりするわけです。
Commented by のりちゃん at 2013-08-04 00:16 x
はじめまして、のりちゃんといいます。
このお姉さん、誰かに似てると思ってましたが、安達祐実だったのね。
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