『ホット・ファズ 俺たちスーパーポリスメン』 エドガー・ライト 2007

本当は予備知識まったくなしで観るのがいい。それは百も承知なんですけど。 

 
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相変わらずぼくのアイチューンのヘビロテは宇多丸のシネマハスラーで、もうひとつは町山智浩の映画特電です。この二人の映画評論ばかり最近は聴いています。雑誌は読まないたちなので、新作映画の評価となると、主にこの二人に頼っています。他にも信頼している評論家はいますが、次々と新作を語る人となるとこの二人になってしまう。映画評論の本とかも書店で探すんですが、どうも昔の、それもぼくの映画観(えいがみ)レベルではまだ入り込めぬような、渋い映画ばかりを取り上げるものが多いんです。新作を取り上げるよい評論家を知っていたら、どうかおせーてください。

 さて、その二人が激推しして、ずっと観たかった『ホット・ファズ』です。以前、メル・ギブソンの『アポカリプト』を、「娯楽映画としては完璧である」と絶賛したぼくですが、それと同じくらいの大傑作でした。まだ二つとも観ていない人は、ぜひこの二作を一緒にレンタルし、連続で観ましょう。「映画はやっぱり面白い!」と素直に思えるはずです。思えない場合、あなたは嗅覚及び味覚が壊れている可能性があるので、一刻も早く病院に行きなさいこのばかたれ。

 すごく仕事のできる警察官が、それまで勤務していたロンドンから田舎へと異動させられます。その田舎でも持ち前の職務精神を発揮し、ばりばり働くのですが、同僚は皆たるみきっており、ぜんぜん仕事甲斐のない状況になってしまいます。何しろその町はすごく平和で、そんなにばりばり働いても仕方ないじゃないか、みたいな雰囲気なのです。そんな折り、とあるカップルが殺されます。主人公は現場の状況から殺人の可能性を疑いますが、周囲は皆事故だと決めつけて動こうとしません。その後も似たような出来事が起こり、主人公は捜査を進めるのですが、誰も彼も事故に過ぎないと言って取り合いません。この田舎町はすごく平和で、事件なんか起こる場所じゃない、と皆が口を揃えて言うのです。ところが、ついに主人公が殺人が行われる場面に遭遇し…。

 こう書くとまるでミステリー。いや確かにミステリー。しかし、実際観ればわかりますけれど、映画の風合いはぜんぜんミステリーっぽくなくて、むしろコメディ色ばりばりです。何度も声を上げて笑ってしまいました。それがこの映画のすごいところです。観ていない人にも配慮して書き続ける良心的なぼくですから、あまり詳しくは述べませんが、コメディとミステリーをここまできちっとミックスした映画が他にあったでしょうか。最も素晴らしいのは、コメディとして笑いになっていた部分の数々が、ミステリーの伏線として生きてくるところです。田舎の気の抜けた登場人物たちの言動、それ自体が笑わせるんですけれども、なるほどそれにはきちんと意味があったのです。

 ネタバレをある程度しないと書けないので、一応警告します。はい、警告しました。

 一応ほのめかす程度に書いておくと、この手の設定はSFにはよく見られるものです。星新一も似たようなものを描いていますし、ぼくの知っているのでいちばん近いのは『銀河鉄道999』の「ざんげの国」です。ああ、これでわかる人にはわかってしまいました。コメディやアクションの味付けはもちろんまったく違いますが、設定としては一緒です。

 アクションシーンも見事です。一方で、ここでもすごい。すごくきちっとしたアクションでありながら、そこに笑いがある。主人公がショットガンを持ったババアを跳び蹴りするシーンは大爆笑です。いまだかつて、ババアが跳び蹴りを食らう映画があったでしょうか。アクションのクオリティは非常に高く、サスペンスがあり、謎解き要素もあり、それでいて全編に渡って笑いを忘れない。娯楽映画として、非の打ち所がないのです。

 主人公とデブのぼんくらの対比もお見事です。あのぼんくらが格好いいんです。主人公のサイモン・ペグがずっと格好いいんですが、それに比してあのぼんくらニック・フロストはずっと格好悪い。でも、あんなにも格好悪いぼんくらが、クライマックスでは大活躍します。これがまたあいくるしい顔をしているんです。クールで職務に忠実な主人公と、映画の警官に憧れながら何もできずにぶくぶく太っているアホのぼんくら、このコンビが最高なんですが、このアホのぼんくらが光り輝くんです。このニック・フロストの働きはこの映画でものすんごく大きいです。サイモン・ペグだけだったら、ここまで面白くはなっていません。彼だけだと、この映画のコメディ要素が大幅に削られ、そうなるとミステリーとアクションの話になってしまう。この映画におけるコメディの割合、その調合ぶりがあっぱれ。言うことなしです。

 映画にせよ何にせよ、期待値を上げすぎないほうがいいんです。というか、期待値って絶対低いほうがいいんです。これはもう、あらゆることに当てはまると言っていいでしょう。なのですが、賞賛すべきものにはやはり賛辞を送らねばなりません。それに、おそらくこの映画を観て、「面白くない」ということはないんじゃないでしょうか。少なくとも、退屈させられることはないと思います。これは保証できます。えっ! 観たけど面白くなかったですって! 『アポカリプト』も駄目だったって! そういう人はもう、なんかうんこ臭いので、どうかこれ以上近づかないでください。 
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by karasmoker | 2009-10-04 07:48 | 洋画 | Comments(0)
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