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『ロミオ+ジュリエット』 バズ・ラーマン 1996

わかりやすい駄作だと思うのですが。

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言わずと知れた超有名古典劇だけあって、過去何度も映画化されているようですが、今のところこれがその中で最新となっているようです。バズ・ラーマン監督は『ムーラン・ルージュ』の前半がすごくよかったので期待して観ました。

 ぼくとしては見終えてから、「これは結構わかりやすい駄作だな」と思ったんですが、いやあアマゾンなんかでは五つ星レビューが多いんですね。褒めている人の大体はOLじゃないでしょうか。OLが褒めているということはろくなもんじゃないということです(反感しか買わないことをこうやってぼくは言ってしまうのだ)。

 昔の戯曲を現代劇にアレンジしているのですが、現代劇にすることと現代風にすることはぜんぜん違っていて、見てくれは現代劇でありながらちっとも現代風ではなく、だからこそ物語の進行と人々の動きに大変な乖離が見られます。それが最も顕著に表れているのがあの台詞回しですね。

 いかにも原作から持ってきたような詩的にして大げさな台詞回しが多いのですが、いかんせんこれは現代劇のトーンとしては合わない。冒頭でちんぴらたちのどんぱちを映してしまったでしょ。あのせいで余計にトーンが一致しなくなってしまった。ちんぴらたちとロミオ、ディカプリオは友達なんですが、一人だけ浮いています。ノリがぜんぜん合っていないので、もう映画的にばらばらになっている。クライマックスの誰もが知っているあの場面でも、あろうことかディカプリオはアロハを着ているんです。よりにもよってアロハって。

 古典的な恋愛劇と現代っぽいちんぴらの部分が一緒にあって、互いを殺し合っている。ちんぴらの浜辺の部分とかはもうすっごい面白くない。ちんぴら映画ならちんぴら映画で、あの浜辺のシーンも楽しくなるのに、一方ではお堅い恋愛劇も入れようとするから、結局映画の雰囲気がどっちつかずです。普通の映画っぽい形で、愛のささやきを交わすのはまずいでしょう。プールのシーンで戯れるシーンがありますが、今度は古典からそのまま持ってきたような会話だったり独白だったりするくせに、撮り方はきわめて普通です。だからね、現代が舞台の恋愛劇を見せられながら、台詞だけはやけに昔っぽいという、どうにもならない乖離があるんです。これならいっそ、もう思い切り昔っぽくターボを掛ければよかった。割り切って大げさにやってしまえば熱量も生まれたのに、二人の別段面白くもないちゅっちゅですからね。OLはこの程度でいいのでしょうけれど(だからぼくはどうしてそういうことを言うのだ)。

 ジュリエット役はクレア・デーンズという人ですが、ジュリエット役にはミスキャストだったように思います。それほど可愛くない、いや可愛らしいですけど、なんていうか、クラスでも三番目くらいの感じです。「ソフトボール部に可愛い子いるよな」「え、誰だろ、あ、あの子か、うん、まあ可愛いね」くらいの感じです。超有名古典劇の誰もが知っているヒロインですが、それにしてはちょっと普通すぎるんです。でもこれはOL受けするにはいいのです。レオ様に愛される相手を普通の女にするほうが、移入しやすいのです。これは「倖田來未がそんなに美人じゃないからギャルにも受ける」のと同じことであって、あれは素顔がブスっぽいからいいのです。ギャルメイクを肯定するためにはそれがいいのです。ブスでもごてごてメイクをするとモテる、という、厚盛りメイク肯定論を体現するのが、倖田來未なのです。

 まともな方向に話を戻すと、話運びがちょっと無理があります。古いものを現代に直すとき、そこでは当時と現代をどう調整するかが鍵になる。つまり、今の時代では通用しないものをどうするか。たとえば携帯電話のない時代とある時代では物語の作り方が違うわけで、この映画でもそこが重要だったし、何なら活かすことだってできたと思う。この映画では携帯電話は出てきませんが、現代になっているのだから変えなくちゃいけないところがあった。それを怠っています。

 いちばんまずいのは殺人を犯したロミオを捕まえもせず、「街から追放」という意味不明の処置を行うことです。警察もいるんですよ。なぜ捕まえないのかわからない。昔ならまだわかるというか、観る側としても見逃せる部分じゃないですか。このヴェローナの都から出ていけ、という風にして物語を進めるのは、シェークスピアの時代のものなら別にいいじゃないですか。でもこれは現代を舞台にしているので、そこは看過できない。これだともう、単純に当時を再現するのが面倒だったり金がなかったりするから現代にした、というだけです。金がないから現代劇にした、というなら、その分頭を使って説得力を持たせないと駄目でしょう。そもそもがモンタギュー家とキャピュレット家が何なのかよくわからない。対立している両家って、何? マフィアなの? 何なの? 現代劇にする上での説明がぜんぜん足りていません。

 しかもえらいことになっているのは、神父からの手紙が届かないというくだりのずさんさ。行き違いなり何なりという物語の面白みを活かせる場面なのに、ここはびっくりします。逆にびっくりします。郵便屋が手紙を届けるけれどそれがロミオに渡らない。これでラストに繋がるわけですが、郵便屋が届けに来たとき、ロミオはすぐ横の草原で遊んでいるんです。このせいで手紙が渡らなかったのだ、という風にしたいのでしょうけど、あのさあ、手紙でしょ? なんで「不在通知」になるの? 宅配便じゃねえんだから、不在通知はおかしいでしょ。

 物語の節々がずさんで、登場人物の造形もすかすか。クライマックスはというと、ここはちょいと工夫してはいるんです。ロミオが毒を飲んだちょうどその瞬間に、ジュリエットが目覚めるという体を取っている。だからいまわの際のロミオと目覚めたジュリエットのタイミングの悪さの妙が活きる、とこういうわけなんでしょう。でもさあ、だったらさあ、あの場面ね、吐き出せよロミオ、今飲んだばかりのその毒をなんとか吐き出そうとしろよ。本当に今飲んだばかりなんだからさ! いや、毒が回ってできないのだ、というのなら、じゃあなんで死に際に喋っているんだよ! しかもまたももったいつけた格好つけた台詞をよ! 喋れなくなっているなら、一言も喋っていなければ、まだこのシーンは救いようもあった。辛うじていいものになり得た。がくがく震えて吐血したりしていればね。それもねえんだよ、結局綺麗に綺麗にやってるんだよ。ここが最後のチャンスだったのに!

これを褒めるっていうのは、ぼくにはさっぱりわからない。褒めどころが非常に少なく、あっても見てくれが一見綺麗だとかそれくらいしかない。だからすかすかなものをすかすかだと思わない人、なんかシェークスピアを原作にしている有名なお話を現代風にアレンジしてすごい! とか素直に思える人、つまりあまり頭がよくない人には、おすすめしておきましょう。
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by karasmoker | 2010-01-16 00:03 | 洋画 | Comments(22)
Commented by ぽぽぽぽーん at 2011-05-04 02:11 x
あたまかわいしょうしね
Commented by karasmoker at 2011-05-04 02:53
がんばってください
Commented by アホか at 2011-11-07 18:21 x
手紙でも不在通知あるし。
書き留めってしってる?
小学校じゃ習わないかもね。
かきとめってよみます。
だいじなてがみをおくるときにつかいます。
るすのときは不在票がはいってます。

あと、予算がなかったって、このえいがのよさんしらないんですか?ものすごい予算ですよ。

勝手に馬鹿なのあしょうがないけど、馬鹿な自分の脳内をさらして、ネットを汚すのは勘弁してくれ。
一生一人で馬鹿やってろ。
脳みそ取り出して綺麗に洗ってでなおしてこい。ばかやろう。
Commented by karasmoker at 2011-11-07 20:56
 コメントありがとうございます。
 ぼくのような無知蒙昧な輩に懇切丁寧なご指導をいただき、大変に恐縮している次第でございます。書留の存在については思い至りませんでした。なにしろこの映画においてあの手紙は火急の用件を記したものと見え、本人不在の場合は不在票を入れるという、書留という悠長な方法をとるのはおかしいと思ったのです。ですのでここは「その状況で書留かよ! ポストに入っていたらすぐ内容がわかるようにしておけよ! 意外とのんびりしてるなおい!
物語の緊迫感がそがれているよ!」とつっこむべきだったのですね。反省しております。
Commented by karasmoker at 2011-11-07 21:07
 続きです。予算についてですが、「ものすごい予算」とおっしゃられていますが、IMDBによりますと制作費は1996年当時で1450万ドルとあります。庶民にとっては大変な高額ですが、当時のアメリカ映画としてみれば「ものすごい予算」と呼ぶにはいささか不適当かと存じます。14世紀のヴェローナを形作るには十分な予算が足りなかったのではないか、という意味合いで述べたのですが、あいにく無知なぼくにはアメリカ映画の制作費にまつわる知識がそれほどないのです。大変にご聡明な方とお見受けしますので、ご教授願えれば幸いに存じます。
Commented by karasmoker at 2011-11-07 21:15
 続きです。長くなって本当に申し訳ありません。予算のくだりでぼくは「現代劇なのに、殺人犯を街から追放して終了」というのはおかしいのではないか、と述べました。郵便書留という細部の社会設計が行われているのに、殺人犯の処遇に関しては一見非合理的な法的処罰がなされているというこの点についても、ぼくにはよくわからなかったのです。重ね重ね恐縮ですが、貴方のような見識ある方にコメントいただけてとてもありがたいので、この機会にご高説を賜りたく思います。
Commented by ななし at 2012-08-03 13:39 x
言いたいことをそのまま代弁してくれてる
街から出て行けのシーンはマジでアホかと思った
何もかもがちぐはぐ
Commented by karasmoker at 2012-08-11 15:30
映画は時として、こちらの見方の甘さを露見させることもございます。もしかしたらぼくも貴方も、美点を見逃しているのかもしれません。いろいろと評してきて、そういう思いを持つようにもなりました。
Commented at 2012-11-20 17:22 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by karasmoker at 2012-11-20 21:39
映画を語ってるわりに素人ですね。
勉強し直した方が良い。ちんぴら映画なんて表現する段階でド素人。

非公開コメントにされるとは奥ゆかしい。せっかくなので公開コメントとしてペーストいたします。はい、ぼくはド素人なのです。ド素人が「なにさま」な評言を放るのが当ブログなのであります。
Commented by 通りすがり at 2013-01-04 01:21 x
たまたまここ覗いたんですけど、いい視点ですね。ぼくもわけわからない設定があると気になって作品を楽しめなくので、共感します。
しかし、おそらく、多少の矛盾があっても、引き込まれる展開であれば、それは評価するというか、フィクションてそういうもの!って楽しめるんでしょうけど。
Commented by karasmoker at 2013-01-05 21:59
コメントありがとうございます。
Commented by 通りすがり。 at 2013-04-13 15:48 x
すばらしい!
「現代劇にすることと現代風にすることはぜんぜん違っていて、見てくれは現代劇でありながらちっとも現代風ではなく、だからこそ物語の進行と人々の動きに大変な乖離が見られます。」
まさにその一言が、この映画の全てです。
ヤクザの息子がヤクザの娘に恋して、厨二病から抜け切れない台詞で口説きまくるだけです。
この記事を批判している人には、批判じゃなく建設的に、なにが良いのかご教授願いたいところ。
Commented by karasmoker at 2013-04-13 22:45
 コメントありがとうございます。
 年に一度くらいのペースで衛星チャンネルか何かで放送されているらしく、そのたび誰かしら何か文句をつけてくる当記事でございます。
 ぼくも丁重に、ご教授頂きたいと願うのですが、いつもしょうもない相手ばかりで、そのたびに記事の最後の一文が証明されていきます。
Commented by の~こ at 2013-12-31 18:48 x
面白く読ませてもらいました
共感する部分が多く、とても参考になりました
最近は書かれてないのですね?もったいない
映画を観るのは愉しいですが、自分が好きになれる映画を探すのは大変です♪

Commented by 通りすがり at 2014-01-16 01:32 x
コメントの返答が面白い(笑)
Commented by 通りすがり at 2014-01-16 01:32 x
コメントの返答が面白い(笑)
Commented at 2014-02-21 16:42 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by 通りすがり at 2014-03-14 03:53 x
たぶん、あなたが日本人でシェイクスピアに馴染みがないので面白く感じられないのですよ。シェイクスピアを古典として見慣れている人たちの間では、シェイクスピアへのポップなアプローチとして面白く見れるんです。元ネタにを良く知らないような人が観ても面白くはないでしょう。そういう楽しみ方をするための映画もあるんですけどね。
Commented by 文学部 at 2014-07-12 14:19 x
スタイリッシュな映像、ロミオへの同性愛チックな感情を匂わせるマキューシオなど私的には面白いと感じられる作品だったのですが、追放処分の軽さなど矛盾点への突っ込みには共感しました。
ただ、この映画の評判が当時のレオナルドディカプリオのアイドル的人気に支えられていたのはわかるのですが、統計するでもなく褒めているのはOL、頭の悪い人にはいいのだろうといった書き方は読んでいて不快です。
Commented by 辰夫 at 2015-05-23 19:38 x
内容については概ね理解できます。
なるほど、そういう視点も面白いです。
ただしクレア・デーンズについては
納得できるものではありませんね。
あんなに魅力的なキャスティングは
なかなか無いと思います。
Commented by ガラクタ市 at 2017-02-07 03:24 x
まったくその通りでありました、
つまらない。
アメリカ人の軽い頭に合ってる作品だったと思う。
現代版とか現代風まさにその通りで
アメリカ風だなと思いました。
シェイクスピアを観るのでなく
ディカプリオを魅せています(笑)
ばからしい作品だと思いました。
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