『ショーン・オブ・ザ・デッド』 エドガー・ライト 2004

ロメロ的ゾンビの最も正しい使い方
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大傑作『ホットファズ』の監督の作品ですが、日本ではDVDスルーで劇場公開されなかったようです。タイトルから知れるようにゾンビものですが、従来のゾンビものをうまくネタフリにしており、それでいてゾンビ映画特有の要素もきちんと盛り込んでいるとあって、非常に巧みかつ面白い作品でした。

『ホットファズ』でもミステリーとコメディのきわめて絶妙な調合を行っていましたが、本作もまたゾンビものとコメディをうまく混ぜ合わせている。最もわかりやすいのは、ゾンビの滑稽さを全面に表している点です。ロメロが造形し、最も一般的となった「映画的ゾンビ」は、非常にゆっくりと歩くのが特徴です。夢遊病者のごとく、すごくとろとろしているんです。この特性を活かして、随所で笑いを生み出していて、ことごとく面白いギャグになっています。一方でゾンビの怖さもしっかり演出されていて、今までに観たゾンビ映画の中でいちばんに好きです。そう、この映画が大変に偉いのは、きちんとゾンビ映画の王道も踏まえていることです。過去のゾンビ映画をネタフリにするだけではなく、過去のゾンビ映画演出をちゃんと守るんです。あのインテリ男の最期のくだりで、特にそう感じました。あれを観ると、ああ、ゾンビ映画を観ているなあと誰しもが思うことでしょう。

 その一方で、今までにはあり得なかったラストシーンをつくった。何もかもがゾンビによってめちゃくちゃになりましたみたいな無責任な終わらせ方はしないんです。それでいいのか、と思わせつつ、これでいいのだな、と思わされる結末です。この映画はゾンビもの、特にロメロ的ゾンビを用いた映画にとって決定打となる作品じゃないでしょうか。

 今後この手のゾンビを使う場合は、相当に大変でしょう。少なくとも、単純にゾンビが出てきてきゃあ怖い、という映画はもうつくれないし、逆に過去の映画を観るに当たっても、ゾンビの滑稽さを的確に笑いのめしたこの作品を思い出してしまう。途中、ある目的地に行こうとした主人公たちが、ゾンビの大群に遭遇します。道には大量のゾンビがいて、うかつに進めば殺されてしまう、という状況。そのときに彼らが取った行動は、ある意味最もシンプルで、今までのゾンビ映画すべてを笑っている。「それをやっちゃあおしまいよ」的な行動で切り抜けるんです。ああいう方法で切り抜けた本作が公開されたら、後の作品ではもうあの局面自体を使うことができないでしょう。実はあれがいちばん正しくて、いちばん笑えるんですから。その「練習」をするくだりもいいですねえ。あの練習があるからこそ、余計に効いてくるんです。

 編集、テンポも大好きです。ごく短いカットを数秒つなげるだけで、もろもろの説明を済ませていたり、あるいはその活用でギャグを生み出したり。序盤はあまりゾンビが出てきませんが、ああいう編集で後々までテンポを殺さず進める手腕に惚れます。

 今日はあまり深い話をする気になりません。どこが面白いとかどこが優れているとか言葉で言う必要をあまり感じないんです。変にネタバレしたくない。多少なりともゾンビ映画を観ていると、余計に楽しめること請け合いです。ゾンビ映画なんてぜんぜん観たことがない、という人は、先に他の作品、特にロメロをいくつか観てからのほうが楽しめるはずです。そうすることでこの映画の優れた点がさらにわかりやすくなると思います。
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by karasmoker | 2010-02-01 04:19 | 洋画 | Comments(0)
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