『女囚701号 さそり』 伊藤俊也 1972

濃い!!!!!!!!
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 一般的、経験的に言って、面白い映画は体感時間が短く、逆もまた然りですが、時にはその濃さゆえに時間がゆっくり感じられる映画もありまして、本作がまさにそうでした。一言で言えばきわめて濃い映画です。すべてのシーンが濃いのであり、画面から発される圧力が時間をせきとめてしまうほどなのです。抽象的な言い方でわかりにくいですな。

すかすかな映画はたとえ面白くなくても、わりと時間が早く経つんです。時間は「流れるもの」とされますが(ところでなぜ「時間」は「流れる」という動詞を得たのでしょう)、まさに淀みのない川のごとく、すかすかな映画はその分時間も早く流れていきます。ところが濃い映画というのは逆で、流れゆく時間をいちいちせき止めてくる。強烈な感覚を次々と与えてくるのであり、それにびしびし当たっていると、時間はなかなか流れていかないのです。そういうことを感じたんだ、ぼくはさそりを観て。

 女子刑務所の話なんですが、もうリアリティは何のその、とにかく映画的な濃さをマックスまで押し上げる強烈な描き方です。これぞ映画的快楽であります。梶芽衣子演ずる主人公松島ナミが脱獄を図って失敗、拷問を受けるんですが、この冒頭のシークエンスだけでもう完膚無きまでに魅了されました。漫画原作の作品らしく、演出もかなり漫画的というか、わかりやすいデフォルメがなされているのですが、これはもう本当に「濃い」の一言に尽きます。表現として一切の迷いがないのです。表現とはかくあるべし、という思いです。増村保造、岡本喜八、石井聰互、最近で言えば園子温や白石晃士、彼らに通ずるのはその「大胆不敵さ」。怪我を恐れず、「やったれーい!」と爆進する姿勢。本作にも同じものを感じました。伊藤俊也という監督は知らずにおり、お見逸れしていました。なぜかこの監督はルパン三世の『くたばれ! ノストラダムス』も監督しているようです。

 増村映画がそうであるように、本作も名女優によって支えられています。梶芽衣子は今時のジンビーとしても十分に通用するのであり、雰囲気としては『バトルロワイアル』の頃の柴咲コウっぽくもあり、顔立ちは黒木メイサっぽくもあるのですが、彼女たちにはまかり間違ってもできぬ汚れ方をしております。迫力が段違いであります。今時のモデル上がりとは訳が違うのであります。全編にわたり台詞は大変に乏しいのですが、その分だけ表情に迫力がこもっており、数少ない台詞であるところの「おしゃべりが過ぎるよ」は格好よすぎなのであります。回想シーンにおける「半乳放り出し襲撃」は今の女優になどとうていできぬ所行であり、あんな演出を思いつく監督はアホじゃないかと思います(もち
ろん賛美の文句です)。それと敵役として出てくる横山リエ! この人はいい! ぼくにとってある意味、理想像です。台詞回しはそれほどにうまくはないのですが、この人の顔立ちがね、ぼかあ、好きだなあ。やさぐれきった女囚役なんですけども、そのやさぐれぶり、愛を信ぜぬ感じ。梶芽衣子は誰がどう見ても綺麗ですよ。華もありますし、時代が時代なら吉原きっての花魁ですよ。一方この横山リエはいかにも不健康そうで、太陽が似合わぬ面で、だけどね、あたしゃあの子が好きでたまらねえのさ! なんかこう、狂わせる面なんだよね。ああいう女ならあたしゃあ一度狂ってみたいもんだね。

おしゃべりが過ぎています。この映画は全シーンに渡って濃いのであり、ひとつひとつを仔細語ればそれだけで一日仕事です。リアリティなんてものは吹き飛んでいるから、アホみたいな表現も多いですよ、看守たちはまるでショッカーみたいだし。でもこういう大胆不敵なものは、今の時代に欠乏しているように思えてならないので、余計に褒め称えたくなる。なおかつこの映画が偉いのは、女子刑務所という特性を活かし、ふんだんにおぱーいを登場させるところです。梶芽衣子もそうだし、とにかくたくさんおぱーいが出てくるのであり、後半における「看守監禁レイプ」は笑いました。囚人の女たちが看守を監禁し、レイプするのです。なんたる展開! 巨乳の囚人がたわわな胸を看守に押しつけるのです。あれはもうすごい話です。なんとうらやましい状況でしょうか。オープニングクレジットの場面もただおぱーいを見せたいだけみたいなシーンで、そういう馬鹿らしさは大事! 大事なんだってば!

本作のサソリの格好を引用した『愛のむきだし』でも、ひかりちゃんのレズシーンとかオナニーシーンがありますが、あんなのは物語を語るだけなら別に要らないわけです。でも、パンモロもそうですが、ああいうものは映画的サービスとして非常に意味があるのです。断言しますが、4時間の『愛のむきだし』を支えたのはああしたエロシーンの数々なのです。「わっ、おパンツだ!」と思うだけで、映画は楽しくなるのです。今回の作品にしても、「わっ、おぱーいだ! おぱーいがたくさん!」「わっ、乳房だ! 乳房発見!」「わっ、乳首だ! みんな、乳首があるぞ!」という刹那の感動によって支えられているのです。

 ずいぶん偏差値の低いことを延々と書いているのですが、とにかく本作は映画的快楽に充ち満ちているのです。『愛のむきだし』でサソリの格好が出てきたのもわかるというものです。あの作品は本作へのオマージュです。銃撃あり、格闘あり、おぱーいあり、非常に豊かな作品でありました。
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by karasmoker | 2010-02-02 00:54 | 邦画 | Comments(0)
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