『ニューヨーク1997』 ジョン・カーペンター 1981

スネーク的格好良さ
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 原題ESCAPE FROM NEW YORK
 マンハッタン島がまるまる終身刑の刑務所になっているという設定の近未来アクション。大統領がこの島に誘拐される事件が起こり、それと時同じくして一人の犯罪者がこの島に収監されようとしていた。彼の名はスネーク・プリスキン(カート・ラッセル)。かつて戦場の英雄として名を馳せたスネークは無罪放免を条件に、マンハッタン島へと単独潜入し、大統領の救出を試みる。人気ゲームソフト『メタルギア』シリーズの元ネタとしても有名。

 1981年の映画で1997年を描いているのですが、今に照らせば2026年ということです。うーん、絶妙な「未来さ」です。2030年以降だと未来! って感じだし、2010年代ならもうすぐ! って感じがしますが、2026年はぼくの中でかなり微妙な未来さ加減です。

 この映画に描かれた16年後では、マンハッタンが完全に機能していないものになっています。荒廃した大都市っていうのはそれだけで単純な面白みを生みますね。ピクサーの『ウォーリー』なんかはその極致で、あの荒廃描写はひとつの集大成であるように思います。世の中には廃墟が好きな人というのがいますが、ちょっとわかります。長崎県端島、いわゆる軍艦島にはいつの日か行ってみたい。誰もいない街というのは、なんだか美しいんです。それ自体がひとつの大きなオブジェみたいに思えるんですね。都会の明け方は、それに近い感じがします。

 本作のマンハッタンは囚人の街になっており、いちばんイメージとして近いのはテレビゲームの『ファイナルファイト』です。あのゲームは本作に影響を受けたことでしょう。あるいはFF6に出てくるゾゾの街にも似ています。とにかくどうしようもない場所なのです。そこに潜入するスネーク・プリスキンが、悪党の親玉に連れ去られた大統領を救出するため、東奔西走を繰り返すわけです。

 この映画の公開は1981年、この半年後にはあの『マッドマックス2』が公開されています。あれもぶっ壊れた未来の話ですが、悪役の造形は結構似ています。マッドマックス2のほうがぶっ飛んでいるんですが、ファッションとかはどちらもパンク風で、この辺は漫画的なおもしろさを感じるところです。悪役以外にも訳のわからない人たちが出てきて、これも愉快です。

 ゾンビ的な人たちが夜の街でいきなり家の床をぶち破り、地下から出てくるんです。途中、何かいわくありげな女が出てくるんですが、話している最中にいきなり地下のゾンビ的な人々に襲われ、以降彼女は一切出てこなくなります。あれはちょっと笑います。すっごくフリの長いギャグみたいなものですよ。彼女は何か物語的機能を担うのかなと思いきや、その後何もなく、ただ襲われるだけの人でしたから。だったらなぜあんなに意味ありげだったのか。思い返して笑うこと請け合いです。

 全体を通してあほっぽいところはあほっぽいというか、ちょっとゾンビ映画のノリが入っています。記号的に倒される悪役が出てきたりするし。それにアクション映画として観てみても、他のいわゆるハリウッドアクションに比べればぜんぜんたいしたことない、という感じも大きいのです。ゆるゆるなところは結構ゆるゆるなのです。たとえばあのアーネスト・ボーグナインの出てくるタイミングが良すぎるのです。なんであんなにどんぴしゃのタイミングでやってくるのかとつっこみたくなります。でもその辺をご愛敬とするのがこういう映画の楽しみ方でもありますから別によいです。

 でも、この映画はとびきり格好良いです。ラストシーンが素晴らしいので、痛快感は相当に大きいです。このラストを書いたとき、監督は「できた!」と嬉しくなったことでしょう。特に後に公開される『ランボー 怒りの脱出』と比較してみると、この映画の格好良さが引き立ちます。

『ランボー 怒りの脱出』も潜入ものでしたが、あの映画がやっぱり嫌なのはランボーに「国に忠誠を誓います」と言わせてしまうところです。だったらなぜ三作目でタイの寺院なぞにいたのだ、とつっこみたくなるわけです。その点で行くと『ニューヨーク1997』のラストはそんな野暮な真似はしません。あのラストでかなりポイントが高くなりました。
 
 ちなみに、このスネーク・プリスキンもランボーもメタルギアシリーズを造形するうえで多大な影響を与えているキャラクターですが、MGS3におけるラストはいいですよ。艱難辛苦乗り越えてミッションを達成したスネークは、大統領や記者団に囲まれながら敬礼します。何も言いません。あそこで何も言わないのがいいんです。あのときのスネークは、「こいつらに何がわかるものかよ」という顔なんです。ランボー2の失態からきちんと学びを得て、MGS3はつくられたわけです。日本の大作映画はぱーぷーの踊り場と化していますが、ゲームは違いますね。ハイクオリティなゲームが(それとアニメが)日本映画界を引っ張っています。ゲームとかアニメをオタク文化だとけなしているやつらが、非実在青年とか言い出すのです。馬鹿どもめ。

 なんだか話が右往左往していますが、久々の映画話なのでご愛敬。今日はこの辺。
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by karasmoker | 2010-03-12 23:52 | 洋画 | Comments(0)
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