『シド・アンド・ナンシー』 アレックス・コックス 1986

ナンシー役がかわいけりゃ。
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ぼくは洋楽というものにまったく疎いです。大体十代中盤くらいから聴き出す人が多いんじゃないかと思うんですけど、ぼくはその路線を完璧に素通りしました。日本語が好きなので英語の歌詞にぜんぜん惹かれなかったんですね。

 なので、パンクもロックもプログレとかもちっともわからない。セックス・ピストルズもローリング・ストーンズもキング・クリムゾンもマイケル・ジャクソンも知らない。大学の頃、「レッド・ホット・チリペッパーズ」の話をしている人がいて、「新発売のお菓子かな? それともレストラン的な何かかな?」と思っていたくらいです。

 なのでシド・ヴィシャスも知らず、強いて言えば椎名林檎の「ここでキスして。」で名前を知っていたくらい。「セックス・ピストルズのベーシストだ」ということはわかったのですが、それが一体どういう存在なのかぜんぜんぴんと来ない。そういうレベルのぼくが観てみました。

『シド・アンド・ナンシー』と銘打たれておりますので、これはこれはボニーアンドクライド的、あるいは『カージャック!』的、『ダーティメリー・クレイジーラリー』的な何物かであろうと思い期待して観ました。シド・ヴィシャス役はゲイリー・オールドマン。シドは1979年に21歳で死んでいるのですが、オールドマンは撮影時それより年上であり、若造っぽさはなく、むしろ渋さが引き立っております。その点は本来のシドファンからすると問題なのかもしれないけれど、ぼくにはとても格好よく映りました。園子温の『ハザード』におけるジェイ・ウエストには及びませんが、このタイプのキャラクターは好きです。セクシーです。世間にもっとこのオールドマンブームが起きていてもいいんじゃないかしらと思うくらいとてもセクシーです。
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 一方、恋人のナンシー役を演じたクロエ・ウェブという人なんですが、この方は・・・ちょっと・・・あの、えっと、ブス・・・じゃないでしょうか。ナンシーは21歳くらいで死んでいるようですが、クロエはちっとも21歳の溌剌さはなく、というよりももうおばはん、時折おっさんに見えるくらいでして、オールドマンと釣り合いが取れていないのです。実際、オールドマンと同い年くらいです。ヒロインがこれだと加点できません。その意味で『スパイダーマン』のカーステン・ダンストに似ています。顔立ちも似ている気がします。『スパイダーマン』はこのヒロインのがっかりぶりがたまらない映画です。「主人公は誰のために頑張ったらええねん」「この女のために頑張るスパイダーマンをいまひとつ応援でけへん」と思わされます。ナンシー役は絶対もっとかわいこちゃんがいたはずです。実際のナンシーだってもっと綺麗です。クロエ・ウェブは意地の悪いおばはんみたいなんです。これは恋愛映画としては相当の打撃です。しかもキャラクター的に結構はっちゃけているものだから、「うわ、えらくはしゃいでいるな、ブスなのに」といちいち思わされます。
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内容的には、要するにシド・ヴィシャスの伝記映画なのですが、もうひとつ話の起伏に欠けます。早世の伝説的ベーシストというからには、はてさてどんなに破天荒な人生を送っているのだろう、と期待するわけですが、薬をやってだるだるになって、ブスとちゅっちゅしているばかりなのです。ヒロインがブスである以上、もはやストーリーなり何なりで頑張ってもらうほかないのですが、結構ぐだぐだしています。これがね、それこそ『カージャック!』のゴールディちゃんとかあのレベルならばね、ぼくは何も言わないんです。「ふほほ、ゴールディちゃんと送る退廃の日々よ。ヘロインの海にたゆたいながら漫然と過ぎよ」などとヴィシャス気分で楽しむことも叶うのですが、ヴィシャスにはもっと暴れてもらわないとつまらないです。すごくめちゃくちゃなパフォーマンスをするかと思いきやそうでもないし。

 その分、この映画でいちばんいいのはあの「マイウェイ」を歌うシーン。あのシーンはだるいトーンから一転して、実に快楽に充ち満ちている。椎名林檎いうところの「シドと白昼夢」みたいな美しさと愉しさで、ああいうのをもっともっと放り込んでくれればよかったんです。現実はだるだるだけど、ヘロインが見せる幻覚の中では光を浴びている。そういう起伏を織り込んでいけば、この映画におけるヴィシャスの憂鬱だってもっと引き立っていたと思うんです。あのシーンだけなんです。彼が爆発するのは。あとのギグシーンは普通に盛り上がっているだけ、もしくはだるだるなだけ。

ああいう夢見の場面と、それからヒロインの女優。この二つを変えることで、もっとこの映画は魅力あるものになったと思うのは、ぼくがシド・ヴィシャスあるいはパンクに何のゆかりもないからでしょうか。ヴィシャスを取り巻く他の人間の動きもよくわからないんです。どうして彼がああなっていったのか、ぜんぜんわからない。いや、そりゃむろん人の人生ですから、わからないものではあるんですけど、それにしたって墜ちていくくだりに明確な描写がなさ過ぎる。これだと単に、ブスに取り憑かれて駄目になっちゃったやつです。雰囲気で行こうとしとるな、と思わされます。

 終盤の刺殺シーンはいいです。あそこはまあいいです。でも、しつこいようですけど、ヒロインが別の人ならもっとよかった。薬でぼろぼろになっているんじゃなくて、もとからむくれっつらの人ですから、なんか、ぜんぜん、艶やかでない。

 もったいなさを感じさせます。ゲイリー・オールドマンがとても魅力的なのに、他の要素が彼の魅力にちっとも追いついていないという印象を受けるのでした。
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by karasmoker | 2010-07-15 20:11 | 洋画 | Comments(11)
Commented by at 2010-12-21 20:45 x
私はこの作品はコレでいい。シドとナンシーの関係に忠実な伝記作品になってると思いましたよ。
パンクムーブメント自体が退廃的であり無秩序なものだったから、こういうダラダラ感にしてるのでしょう。
特別お気に入りではないですが、嫌いでもない作品です(笑)。
シド自体、ピストルズのオリジナルメンバーでなく、後ガマで加入したマスコット的な存在だったんで苦悩があったものと察してます。
なんなら、「No Future a SEX-PISTOLS Film」を見てからなら納得できるかも知れません(笑)。
Commented by karasmoker at 2010-12-22 06:02
これはもう個人的な感覚により、「ナンシー役がブスである」というその一点において、楽しくない映画なのです。いや別に美男美女の物語を称揚するわけではないのですが、なんというか、「ブスなのに調子をこいている」様が嫌になるのです。関係ないですが、ぼくは小雪という人が美人の枠に入ることに、あまり納得がいっていません。
Commented by 名無しさん@おなかいっぱい at 2013-01-10 06:28 x
実在のナンシーそっくりだろ
なに半可通が知ったかで語ってんだかな阿呆w
Commented by karasmoker at 2013-01-10 23:34
 コメントありがとうございます。
 グーグルの画像検索ではもっと美人な本人の写真が出てくるのですが、当時の事物に精通されている方からするとそっくりなのですね。とても参考になります。
 文意から察するに、とてもパンクに精通されている方とお見受けします。自分の名前を記入する欄に、匿名掲示板のデフォルトネームをつけ、見知らぬ人間のブログの二年半も前の記事につまらない書き込みをする。なるほど、さすがパンクに造詣の深い方はやることが違いますね。パンクに造詣が浅くて本当によかったと、心から思えます。
Commented by やまだ at 2014-01-05 02:26 x
映画とかみないほうがいいよ
Commented by gury at 2014-05-29 04:00 x
本物のナンシー知らないんですよね?
クロエよりうんと不美人ですよ
ヒロインが美人じゃなきゃ納得できないなら、観る前にヒロインが美人かどうか調べてから観ればいいんじゃないですか?
クロエは他の映画では可愛いですよ
ナンシー役だけ観て不細工だって言うのって、何か変な感じ…
ナンシーをよりナンシーらしく演じたクロエに私は女として素晴らしいと思ってます
本当は素敵な女性ですよ
あなたの御意見、本当のナンシーを知ってから書いた方がいいんじゃないですか?
ちなみにシド役のゲイリーオールドマンはシドの実母から「本当のシドニーに見えて感動した」って賛辞をもらってますよ
Commented by gury at 2014-05-29 04:12 x
って言うか、本当にシドがナンシーを殺したかどうかも定かではなく、諸説あるんですよ
PUNKSじゃないなら、御意見しなければいいのに…
はっきり言って不快です
Commented by karasmoker at 2014-05-30 23:17
4年前の記事にわざわざコメントいただけるなんて、
いやはやPUNKSは違います。
僕はPUNKSを知りませんが、本当にPUNKSな方なら、
4年前の不快な記事なんて放っておいて、my wayを突き進んで
くれりゃあいいものを!
Commented by 私はパンクスではありませんが at 2014-07-06 00:22 x
この記事にコメントしてほしくないなら、コメント欄を閉じるなり記事を削除したらどうでしょう?
現在もまだ記事を全世界に向けて閲覧可能にしてコメント欄も開放中にしてるのは他でもない貴方自身なのに、その返答は筋が通っていません。

貴方の理屈でいうなら、24年も前のつまらない映画なんかわざわざ記事にせずに、放っておけばいいものを!
Commented by karasmoker at 2014-07-06 00:52
コメントありがとうございます。
Commented by ジョン・ポール at 2015-11-09 20:54 x
返す言葉もないですよね。
記事は閉じない限り、永遠に残ります。
そのような記事に対してコメントする事は普通ですよ。
あと、他人が作った映画に対して自分の理想をぶつけすぎですね、もうちょっと冷静に判断しましょう。
まあ、こんなんだから休止中なのかもしれないけどね(笑)
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