『氷の微笑』 ポール・ヴァーホーヴェン 1992

無様さが足りない。女性嫌悪的だけどきっと女性向けの映画。
d0151584_2344887.jpg

原題『Basic Instinct』
 映画自体は100年以上の歴史を持ちますが、ぼくが観るのはもっぱら1950年代以降で、その中でも60~80年代が多いのですね。90年代の映画、特に日本映画とアメリカ映画については90年代がいちばん少ないかもしれないです。

 それほど数を観ていないせいもあってか、90年代のアメリカ映画にはそれほど惹かれないんです。重要な作品は多いけれど、年代的風合いは80年代以前のものに及ばないし、CG技術を用いた映画にしても2000年代のものに負ける一方、80年代的野蛮さも薄れている。そういう印象が大きいのです。とはいえ、まだまだ観ていないものが多いわけで、後にはまったく別のことを言い出すかも知れませんが。いや、言い出すのでしょうが。

 さて、言わずと知れた有名作品『氷の微笑』。
 シャロン・ストーンの名が一躍日本で広まったのもこの作品からのようです。
 確かに当時のシャロン様はとてもお美しいのでございます。シャロン様を愛でるうえで格好の映画と言えましょう。まだまだハリウッドが喫煙にうるさくない時勢だったのもあって、ものういスペシャルビューティぶりがいかんなく発揮されております。
d0151584_23444838.jpg

d0151584_2345914.jpg

d0151584_23452169.jpg

d0151584_23453690.jpg

d0151584_23454947.jpg

d0151584_23461170.jpg

しかしこの人はどうやらこれ以降のフィルモグラフィを観るに、あまり活躍していない感じがします。ぼくが無知なだけかも知れないけれど、おお、これぞ! というのがない。ただ、この映画を持たせたのは間違いなく彼女の氷の微笑のおかげであります。今のエリカ様はちょっとこのシャロン様を目指している感じがしないでもないです。妖艶なる絶世の美女を目指してけつかる感があります。ただ、結構がっつりとした濡れ場があって、シャロン様は頑張ってくれているのですが、おっぱいはややがっかりおっぱいです。大きくない乳房が離れているため、ホルモンを中途半端に盛ったニューハーフのようなおっぱいです。
d0151584_23463473.jpg

相手役というか主人公はマイケル・ダグラスです。ぼくは男性俳優を嫌いになることがあまりないのですが、マイケル・ダグラスは好きではありません。以前、松本人志のラジオ『放送室』で、彼と放送作家の高須が、「マイケル・ダグラスは面白くない」「すかすか、実がない感じ」と評していて、ぼくもそれに同意見なのです。主演を張るにはどうにも面白みがない。こういうのを目にすると、ああ、やっぱりイーストウッドですごいんだな、と思う。年齢的には10歳以上違うけど、もしこの役をイーストウッドがやっていたらもっと楽しくなったことでしょう。その場合は別に濡れ場だって必要なかった。あの辺のインパクトでごり押ししようとしているのは、実はこの映画の弱みでもある。

 基本的に映画におけるエロ描写、濡れ場描写は肯定するというか、待っている派の人間です。映画の醍醐味は数ありますが、エロ要素はきわめて重要です。土台映画とは見せ物ですから、観客が観たいものを見せてくれるのは偉いのです。ただねえ、エロくはないんですねえ。セックスシーンを撮ればエロだ、というのは非常に低劣かつ蒙昧な考えであって、エロの本質はきっとそういうものじゃないんです。よく思うことで、エロいってことの本質には、「無様さ」があるんです。人間の営みとしてひどく無様であること。これはエロにとって重要です。韓国のキム・ギドクはその辺が異常に上手い。ほんのちょっとしたカットであっても、セックスをしっかり無様なものとして決めてくる。男性と女性が下半身の衣服を脱いで覆い被さって往復運動をしている、その姿勢は限りなく無様ですよ。AVでも、無様なもののほうが絶対的にエロい。ヴァーホーヴェンは画家のヒエロニムス・ボスが好きだと言うし、その辺がわかる人だと思うのですが。

 たくさん出したわりにエロが弱いし、ストーリーの部分もいささか退屈です。でも、退屈を感じたのはぼくとの相性が大きいとも思います。映画としての毛色が似ているサスペンスだと、有名どころではブライアン・デ・パルマの70、80年代作品、『ミッドナイト・クロス』とか『悪魔のシスター』とか、あるいは『フューリー』『殺しのドレス』を連想しました。もしくは『サスペリア2』とかイーストウッドの『タイトロープ』とか。実はぼくはその辺の作品の雰囲気というか、物語運びが苦手なんです。どうも退屈だったんです。だから逆に、今あげたような作品が好きだ、という人にはいいかもしれません。

 サスペンスって、小説でもそうですけどわりと中だるみするんですね。最初の状況設定とクライマックスの盛り上がりがあっても、中だるみが挟まると熱量は大きく減じてしまうという性質を持っている。ここは作劇を研究する上で大事なところなんですが、それをするほど今は頭を回転させる気力がないのでまた今度。

 ラストはまあ、まあいいんじゃないでしょうか、女性嫌悪的で。「なんだかんだ言うても信用でけへんで」というあのラストはちょっと人生論的なものをすら感じます。あれをハッピーエンドにしていたら最悪だし、かといってダグラスを殺すのも安易。あのもやもやした着地は着地としては正解だと思います。今日はこの辺で。
[PR]
by karasmoker | 2010-09-08 23:49 | 洋画 | Comments(0)
←menu