『007 ドクターノオ』 テレンス・ヤング 1962

書いているうちに印象が変わった。ものを書く醍醐味。
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有名すぎて逆に観ていなかったシリーズ。ジェームズ・ボンドを観たのはこれが初めてです。毎回偉そうに映画について語っておきながらこういうのを観ていないなんて逆にお茶目、ともっぱら評判です(お茶目でも評判でもない)。

 評判、で思い出しましたが、なぜか昨日はtwitter.comとmixiからのお客さんがたくさんおりました。でもtwitterのどこからなのかあまりよくわからないし、mixiにいたってはそもそも入会していないから突き止めようもないし、どういうわけでいらっしゃったのか気になるところです。どうせ悪口を言われているんだ、きっとそうだ。

 さて、誹謗中傷には目もくれず今日も書くのです(別に何も言われていない)。
 映画を観て『MGS』を思い出しました。メタルギアソリッドは最愛のゲームのひとつですが、やはりあのゲームの元ネタにジェームズ・ボンドはあるようです。メタルギアシリーズの最高傑作は最新作の4でなく3だろうと思っているのですが、随所随所であのゲームを彷彿とさせますね。沼地を渡るシーンとか最後の研究所への侵入とか、排気口を通るシーンとか敵の銃のタイプを見抜いてほくそ笑む場面とか。シリーズをもっと観ていけばまだまだありそうです。
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 映画自体は50年も前の作品ですから、その後陸続と洗練を続けた他作品と比べれば、どうしても面白みが足りなく感じられてしまいます。こればかりはしようがないのです。当時の感性をぼくが持っているはずもないし、時代的風合いを感じるほどイギリス映画を観ているわけでもないし。音声解説コメンタリーを聴きながら観るって手もあるんですけど、そこまで付き合おうとも思わないし(ここがぼくのエイガミレベルの低いところなんだろうなあと思いつつ)。

 と言いつつも何かしら書くとするなら、前半はショーン・コネリーasジェームズ・ボンドがうろうろ歩き回ります。どこに行ったらいいのやら、情報捜しだみたいな感じでうろうろします。思うに、サスペンスや謎解きものの類って、本当にこの「うろうろ」が勝負なんですね。そりゃ白熱するクライマックスや驚きの真相ってのが肝にもなるけど、いかに「うろうろ」を「うろうろ」に見せないかが大事になるのでしょう。作劇としていちばん理想的なのは、そのうろうろがすべてクライマックス感を生み、なおかつ後半の伏線になっている状態なのですが、本作はそういうものでもなかったです。いや、それなりにあれこれやってくれるので、サービス精神はあります。それは嬉しいのですが。
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 これは今の時代に生けるぼくの感性、考え方なんですけど、肝心な「ドクターノオ」(原題も『Dr.No』です)の登場が遅すぎる。誰やねん、みたいなおっさんです。この点、同じ「孤島冒険もの」であるピクサーの『Mr.インクレディブル』は洗練されていて、宿敵が冒頭で一度、印象深く登場するんです(しかもそれがちゃんと「まさかの展開」になっている)。ドクターノオはタイトルにも起用されている割に、別にそんなに怖くもないんです。悪の組織の象徴的な代表、というより、なんだか雇われ親分というか、社長というより店長くらいの存在感なんです。まあ一作目だしジェームズ・ボンドをたっぷり描こうということだったのでしょうけど、そのためかクライマックスが楽しくなかったですね。
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 でも、この前、同じイギリス映画の『ジャガーノート』について、新宿のバーのマスターに「面白くなかったですよ、あれはああでこうで・・・」と話したら、「違うね。そんなのはどうでもいいのだよ。あれはリチャード・ハリスのアイドル映画なのだよ。ハリスを愛でればいいのだよ」と返されました(彼の店にはあのタランティーノが来たこともあり、ぼくにとっての映画賢者の一人なのです)。

 そう考えるなら、本作もまたショーン・コネリーのアイドル映画として愛でればいいのかとも思います。そういえば薬師丸ひろ子の『セーラー服と機関銃』における三國連太郎だってよくわからないおっさんだったわけです。コネリーの右往左往ぶりを愛でるのが、今この映画を観るときの正しい態度なのでしょう。

 わかりやすいツッコミどころは笑ってしまえばいいのです。目を血走らせて真剣に突っつくのは馬鹿のやることです。それまで一生懸命頑張ってくれていた黒人男性が無残な死を遂げるのですが、死んだその瞬間から後、一切まったく顧みられないのも阿呆ポイントが高くてよいのです。ボンドたちの飲み物に睡眠薬が盛られるのですが、それまで警戒心の強かった彼がなぜか簡単に引っかかるのも面白いです(中盤、家の中でウォッカを開けるときは警戒しているのに。美女を前にしてちょっとイキって失敗した感じがキュートです)。その睡眠薬が物語的に何の意味もないのもいいです。
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 クライマックスの司令室みたいなシーンも笑います。潜入したはいいけど何をすればやりようがなくて、ボンドがドクターノオの後ろでぼんやり突っ立っているのが面白いです。しかもドクターノオはそれに騙されるし。牢獄から出るときもなぜか水が流れてくるんですが、その水がどこに流れたのかよくわからない。あとはウルスラ・アンドレスの拘束状態がものすごく投げやりなのも面白い。
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 きわめつけはラストです。なんだかんだで任務達成じゃい! と島から逃げ出すのですが、島にいた他の人々もえらいこっちゃと逃げ出します。悪の仕事に荷担していたとはいえ別に悪人とは限らないのだから一緒に逃げさせてあげてもいいのに、当たり前のように蹴飛ばしてボートから引きずり下ろします。あの辺の乱暴さは面白いです。

 貶しているのではまったくありません。映画は往々にして、時代を経れば違う面白みが宿るものなんです。映画の変なところを馬鹿にするのでなく、あるいは真面目くさって擁護するのではなく、変なところを変なものとして面白がるというのは大事なのです。90年代のトレンディドラマなんかでも、今ならば「ありえねー」と笑えてしまうものは多いわけで、それは過去の自分の生き様が笑えてくるのと同じことなのです。肯定しつつ、笑っているのです。笑いつつ、肯定しているのです。もちろん、適当につくって失笑を買う最近のテレビ局ものに対する笑いとは、まったく異なるものです。

 なんだかんだ言いながらも書いているうちによかったんじゃないかと思い直しました。今後も折に触れ、こうしたクラシックスを愛でていこうと思いました。おわり。
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by karasmoker | 2010-09-10 23:33 | 洋画 | Comments(5)
Commented at 2010-09-11 16:36 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by karasmoker at 2010-09-12 01:44
コメントありがとうございます。お褒めにあずかり光栄です。しかしブログでだらだら長々書くのが好きなので、twitterをやる予定はないのでございます。

 今後もご愛顧いただければ幸いなのでございます。ブログも覗かせていただきたいと思ひます。
Commented by karasmoker at 2010-09-12 02:20
追記。リンクいただきありがとうございます。こちらも貼らせていただくのでございます。
Commented by rb at 2011-05-07 11:49 x
今の日本では自粛封印されそうな映画ですね。

「ロシアより愛をこめて」
「サンダーボール作戦」でスペクター首領を演じる

アンソニー・ドーソンが
声だけのドクターノオに叱られビビりまくる場面は笑い所です
Commented by karasmoker at 2011-05-08 06:56
コメントありがとうございます。
ぜひチェックしたいと思います。
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