『ナチュラル・ボーン・キラーズ』 オリヴァー・ストーン 1994

格好つけている。嫌い。
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「ドラッグ・ムービー」という言葉があります。この語の正しい定義がよくわからないのですが、たとえば麻薬、覚醒剤を扱っている映画が「ドラッグ・ムービー」なのかといえば、それは単にモチーフの問題に過ぎず、本当の意味ではないと思われます。この語が示すのはぼくが思うに、「酩酊状態で観ると楽しかろう映画」あるいは「観客を酩酊状態に連れて行く映画」なのですね。当ブログでは今後、合法的かつ意味の明確な語として、「ドラッグ・ムービー」の代わりに、「アルコール・ムービー」という言葉を用いたいと思います。意味は上述の通りです。「アルコール・ムービー」は造語ですが、こういう造語をつくっていくことは評言において大事なのです。「切り株映画」みたいなもんです。

 わかりやすい例だと、石井聰互の『爆裂都市』があります。塚本晋也の『鉄男』もそうですね。デヴィット・リンチの『インランド・エンパイア』もそうでしょう。ぼくは悪酔いしました。ダーレン・アロノフスキーの『レクイエム・フォー・ドリーム』はドラッグ・ムービーではあるけれど、ぼくの定義する「アルコール・ムービー」ではありません。観客は地に足をつけたまま鑑賞することができますから。

『ナチュラル・ボーン・キラーズ』はアルコール・ムービーでした。酩酊させるというより、酩酊状態で観ると楽しそうなのです。フィルムは編集によって細かく細かく刻まれており、アニメや映像効果もふんだんで、酔っぱらいながら映像に酔えたなら乗れたことでしょう。しかし残念なことに、しらふで観るとそうでもないのでした。 

 お話はアメリカ映画の得意ジャンル、逃避行カップルの話です。殺人を繰り返しながら逃げ回るカップル、ウディ・ハレルソンとジュリエット・ルイスの様子が、これでもかというほどのカット割りと映像効果を駆使して描かれます。
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 感じとして近いのは『デビルズ・リジェクト』です。あの最悪家族と似ていて、とにかく理由もなく人を殺して回るのです。基本的にぼくはこの手の主人公カップルが嫌いです。ぼくは倫理的な人間であるので、無辜の人々を何の躊躇もなく殺すようなやつに感情移入することができぬのです。こいつらは本当に最悪です。

『俺たちに明日はない』『カージャック!』『ダーティメリー・クレイジーラリー』などは、最悪なやつらなりにまだかわいげがあるんです。『カージャック!』のゴールディちゃんなんて、飛び交う弾を避けながらポイントシールの束を持ってうろうろしていたりするし、『ダーティメリー』も三人の掛け合いがキュートだったりしたんです。でもこの作品の場合、映像技巧を駆使しまくってくれているから、この主人公二人に対しても、「格好つけとるな」というのが否めないんです。

 スタイリッシュな感じがものすごく嫌いです。こいつらの哀しさがちっとも見えてこない。やっぱりね、哀しいからこそ熱いんです。どうしようもないやつらが、どうしようもなく間違った生き方にそれでも必死こいている、その様が熱いんです。ゴールディちゃんはものすんごいアホですよ。でもそのアホがアホなりに見いだした答えを必死で追い求めるからこそ、無様で格好悪くて、いいんです。この『ナチュラル・ボーン・キラーズ』はなんか、モテようとしています。モテようとしつつ、真面目に生きている人の命を軽んじる。それじゃあ、応援できないです。

決定的なのはあのドラッグストアの場面です。女が毒蛇にかまれ、男が血清を求めて店員につっかかるんですけど、この場面で「俺はこの女を助けたいんだ!」という必死さがちっとも伝わってこないんです。「けけけ、警察を呼ぶなんていい度胸してやがるな」みたいにして店員をびびらせる。そうじゃないじゃん。そこだけは、恋人の命を救うことに対して無様な一途さを見せろって。そうすれば、この男の哀しさが出てくるやん。生きていくよすがとして女を大事にしてるんやなと伝わるやん。それすらもないんです。
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 で、無事逮捕されて刑務所に収監されるんですけど、ここも嫌いです。男がテレビのインタビュアに、ごちょごちょ哲学めいたことを語りやがるんです。人を殺したことを正当化するようなことを言うんです。そこでもまだ格好つけとんのか、という話ですよ。格好つけてるやつの話をずーっと見せられて不快で、途中でやめようかと思いました。その後クライマックスを迎えるんですが、そこまでの展開が強引というか、もう周りのやつらがアホばっかりです。アホと格好つけのスタイリッシュな映画を見せられても何も感じられません。『ばかのハコ船』という映画は、主人公が格好つけつつも、もうどうしようもなく格好悪いから、その無様さが痛烈なんです。一方こちらはなんだかんだで切り抜けて、最終的に格好つけて終わりです。なんでそんなに格好つけたいのでしょうか。
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 結局ね、簡単な話、この主人公カップルを好きになれる要素が、ひとつもないんです。『デビルズ・リジェクト』のやつらも嫌いですけど、あれはラストがものすごくいいんですよ。あれは一級のカタルシスをもたらすんです。あれこそが映画的な落とし前なんです。『ナチュラル~』はそれすらもない。
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 これを格好いいと感じるとしたら、それはものすんごく表層的な格好良さですよ。映画の中で、ボニーアンドクライドの真似なのか何なのか人気が出て、「あたしを殺して」とか看板持った応援団みたいなのが出てくるんですけど、この映画を褒めるのって、あのプラカードを持った馬鹿女と一緒だってことです。ボニーアンドクライドとも時代が違うでしょうし、ぜんぜん擁護できないです。ぼくもね、それなりに映画は観ていますから、「暴力描写が不快だ」とかそんな浅いことを言っているわけじゃないですよ。何が不快なのかって言えば、これが格好つけの暴力描写だからです。スタイリッシュな映像技巧で内面を欠いた連中が格好つけて人を殺しているから、それが嫌なんです。描くならちゃんと描いてくれよ、と思います。
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by karasmoker | 2010-10-10 04:26 | 洋画 | Comments(10)
Commented by 名無し at 2013-09-25 19:01 x
嫌いって書くなら最初から観るなよ!
Commented by karasmoker at 2013-09-25 23:31
うるさい
Commented by 通りすがりだが大体見た at 2013-09-26 20:25 x
ここの管理人、口調とか丁寧に見えるけど基本的に「俺様」だから何言っても無駄。いちいち癇に障る書き方で作品をこき下ろすが、他人からなんか言われると「うるさい」だの「コメするな」だのw 長文だが、中身は僕には合わない僕には合わない、ばっかのスッカスカで的外れな映画評ばっかだし、もう自分の好きな映画だけレビューしとけばいいんじゃないかな?w 2,3日もすればこんな自己満ブログの事は忘れるだろうけど、末永く頑張ってね!!
Commented by karasmoker at 2013-09-26 22:40
きみもがんばってね
Commented by 通りすがりですが… at 2013-10-06 04:50 x
初めまして!今BD観終わって検索していたらここに当たった者です、ハイ。私は管理人さんのご意見に近いです。どんな背景があるにしろとにかくあの二人組の無辜の人々をぶち殺してハッピーエンドと言うのが納得いかなくて…『暴動島根刑務所』の松形弘樹や『ワイルドバンチ』のビル・ホールデンの方が何ぼか感情移入できるというか…むしろ同類に無残にぶち殺される”もう一つのエンディング”というのが最高に良かったですね!何であっちにしなかったのでしょうか?w……いろいろ尖った批評書くと批判されることもありますが、めげずに頑張ってくださりませ。ではでは。
Commented by karasmoker at 2013-10-08 07:34
 コメントありがとうございます。
 もう三年前の記事なので今観るとどういう感じ方するかわからないんですけど、「上のようなコメントの人たちが褒めている作品だな」と思うとあまり再見する気にもならなくなってしまいます。激励を賜りましてありがたいのであります。
Commented by ななし at 2014-05-21 14:22 x
つまり人の気持ちを考えないで正論や正しい事しか言わない人たちみたいなのがほめるんですかね
Commented by NK at 2015-08-31 21:34 x
 オリバー・ストーンがタランティーノの脚本を変えたから微妙な映画になった。映像はカッコイイね。ミッキーの哲学語りも良かった。個人的にはすごく酔えた映画だったし、感情移入は問題なかったよ。いい映画なんだけど、そこで止まってるよね。タランティーノが監督椅子に座ってたらもっとしっかりとした映画になっていた。これは間違いない。だから悔しい。ナチュラル・ボーン・キラーズは好きだ。だけど、結末は嫌いだ。俺はミッキーとマロリーに死んで欲しかった。暴力に生きて暴力に死ぬ。子どもなんて飼わないで欲しかった。オリバー・ストーンは二人が貫き通した筋を生まれながらの殺し屋である本能と生物的な本能として通したんだろうけど、これじゃあミッキーとマロリーの二人である必要はなかった。やはり、ミッキーとマロリーはナチュラル・ボーン・キラーズとして暴力の中でのみ生きそして死んでいって欲しかった。
Commented at 2016-04-20 00:58 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented by karasmoker at 2016-04-20 02:33
> 匿名さん
大変お優しい方なのですね。ただ時として、優しさが押しつけになってしまうこともあるかもしれません。相手の気持ちはきっとこうであろう。そう決めつけてしまうのは、もしかしたら危ないことかもしれません。ぼくは今のところ、別に傷ついていないので、「傷つく管理人さん」はどこにも存在しないのです。他人のブログの仕様に注文をつけるのも面白いと思うのですが、「コメント欄を見ない」という解決策を、ぜひお試しになってください。すぐにできます。
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