『がんばれ! ベアーズ』 マイケル・リッチー 1976

『ロッキー』と併せて観たい作品。
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原題『The Bad News Bears』 
 喫煙者を引退しジョガーとしてデビューし、一応十日ほど経過しました。今のところは平気の平左で、そりゃ吸いたいか吸いたくないかでいえば吸いたいけれども、そんなのは煙草に限らず女性の乳首とて同じことであり、吸いたいけれども吸わずに生きていくことはできるのだから、吸わずに過ごすとりあえずの日々。走るのはこれ楽しく、なんていうかあれだね、ロッキーのテーマとか聴きながら走ると、丑三つ時にヒロイズムが去来すんね。ほいで楽しくなってるるるる。
 
 さて、映画の話。
弱小少年野球チームが頑張るお話です。弱いチームが頑張って強くなっていく、というのはスポーツもののド定番で、その中でも代表的クラシックと言えましょう。と言っても、スポ根ど真ん中で汗と涙をまき散らす種類のものではまったくなく、ほえーっとしながら観ていられます。クラシックの傑作、というより、ほんわか定番作品でしょう。下手に闘争的な演出をかますこともなく、それこそ近所の子供の草野球を観る感覚で楽しめる一品です。
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 1976年公開の本作ですが、1976年と言えば『ロッキー』が思い出されます。アカデミー賞を取った有名作品の一方で、実はこの『がんばれ! ベアーズ』も似たような話です。ウォルター・マッソー演ずる監督は過去にマイナーリーグの選手をしていて、今は清掃員のバイトをして暮らしています。境遇としてはロッキー・バルボアと似ているわけです。で、マッソーはロッキーとは違う生き方を選び、少年野球の監督という、とても小さな次の一歩を踏み出していきます。
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 チームはぼろぼろで、英語の通じないメキシコ人少年二人も混じり、フライもゴロもまともに捕れない連中ばかり。定番として、最初はどん底状態です。ここを救うのが『ペーパー・ムーン』で一躍有名になったテイタム・オニール。彼女はかつての天才ピッチャーとして登場します。テイタムはとっても可愛いです。なおかつ風格があって、周囲のじゃりガキとはやっぱり違う。で、これが映画としてうまいところで、このエースピッチャーに女子を入れてきたのがいいんです。この映画の魅力は女子エースという設定、そしてテイタムによってかなりバージョンアップしています。正直、マッソーのおっさんとじゃりガキだけでは、すごく地味な話になったはずなんです。綺麗な女の人も出てこないし、マッソーはちっともモテる気配がありません。そんな中でこのテイタムは、「映画の中の華」を一身に担っている。このテイタムを観るだけでもこの映画は楽しめます。
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 映画のサイズとして、仰々しくないのがとても好感が持てます。これはあくまでもアメリカの一地方の小さな少年野球でしかない、という視座をずっと持ち続けている。だから別に、野球の試合の場面とかも、それほどのハラハラドキドキはないんです。スポーツ観戦的な快楽はあまりない。でも、野球少年たちが、ぐずはぐずなりに、下手は下手なりに、よちよちと頑張って走っている様はすごく心地よいのです。ああ、確かにこのような瞬間は人生にある、と思える。ぼくは野球経験がなく、サッカー少年でしたけども、まあサッカー少年と言っても本当に平凡なる放課後の部活程度の話。なんだかこの映画は、自分の過去ともちょっと重なって見えてくる。すごい大会で優勝とか、全国大会でうんぬんと言われたらもうわからない。でも、この規模のこのレベルのものなら、自分の過去を参照して記憶と重なってくる。そう思う人は多いんじゃないでしょうか。それがこの映画の愛される大きな理由だと思うんです。

『ロッキー』はチャンプに立ち向かう大きな出来事として描かれたけど、このベアーズたちはせいぜい地元の強豪チームに立ち向かうだけ。『ロッキー』はアメリカ人の大きな夢の象徴になっていくわけですけど、このベアーズは小さくて非力な連中があくまで小さな戦いを続けるだけ。ただ、ぼくたちの人生はおそらく『ロッキー』にあらず、むしろこの『ベアーズ』的な一歩一歩でやってきたわけです。そう言う人が多いはずです。なので、どちらも前向きな作品ではあるけれど、『ロッキー』と『ベアーズ』は相互補完的な関係にあるようにも思います。
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 演出もエモくないのが1970年代のアメリカっぽくていい具合です。粋です(こういうのを観ると、やっぱ最近のTBSは下品だなと思います)。最後の試合なんかもねえ、丁度いい突き放し方をしますね。マッソー監督がぜんぜん熱血じゃないのも面白いんです。勝つぞ、という気持ちはあるんだけど、「おまえは引っ込んどけ、あいつが上手いからあいつに任せろ」というような、この手の話の主人公にはあるまじき指示を出すから面白い。くたびれ感がぼくは好きですね。で、最後も最後で、日常な感じ。終始一貫して、少年野球の駄目チームという身の程をわきまえているから正しい。これが盛り上げるために全国大会だのなんだの言い出すとおかしくなるんです。華やかさはテイタムちゃんが持っているので、後の要素は地味でよし。
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 で、これまた『ロッキー』と似ているんですけど、勝ち負けなんてどうでもいいんです。スポーツは勝った負けたが当然大事になるけど、映画として、中盤までの出来を観て、既に映画としては勝っているから、勝ち負けはどちらでもいい。この辺のニュアンスをもう少し細かく伝えたいけど、疲れた。ともかく観ておくべき作品ではありましょう。
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by karasmoker | 2010-10-28 20:46 | 洋画 | Comments(0)
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