『シンプル・プラン』 サム・ライミ 1998

面白いけど、『ファーゴ』を思い出しちゃって、比べちゃって。
d0151584_181548.jpg
 
 サム・ライミ作品ってほとんど観ていないです。『死霊のはらわた』もまだ1しか観ていないし、『スパイダーマン』もDVDを人にもらって3を観たくらいで、1と2はヒロインがブスなので観る気がしません。最新の『スペル』も観ていないなあ。

『シンプル・プラン』は冬のド田舎を舞台にしたサスペンスもので、なかなか楽しく味わえました。三人の男が大金を見つけ、その金の処遇をめぐっていざこざが起きる話で、地味ではありつつも刺激的な展開も用意されており、ひとつのアメリカ映画娯楽作としてしっかり成り立っています。

 この二年前、1996にコーエン兄弟の『ファーゴ』が公開されていますが、正直、あちらのほうが上です。なので、その辺で比較されると辛いものもあります。「『ファーゴ』のほうが面白かったな」という感想は当時、方々で漏れたでしょう。でも、比べる相手が強すぎるという気もします。『シンプル・プラン』だって、ちゃんとしているんです。

 ただ、それでも『ファーゴ』の美点が思い起こされてしまうのは、たとえば冬の田舎の寂寥感、荒涼感をもっと出せなかったのかな、という点です。カラスを出したりまがまがしげな演出はしようとしていますけど、これはきついで、極寒だで、というのがないんですね。『ファーゴ』なんかだと、空はすごく晴れている分、周囲の何もなさが際だって、ああ、なんかすごく寂しい場所だ、という感じが伝わってきたし、最近の映画の『フローズン・リバー』でも、うわ、これはえらい暗い、これは寒い、という風景がありました。ところがこの『シンプル・プラン』については、舞台的な趣深さがないです。登場人物の寄り画ばかりで、雪景色の寂しさがない。なんで風景の良さを出さない? 
d0151584_192488.jpg

d0151584_193512.jpg

d0151584_194996.jpg

 その点がもったいないとは思いましたけれども、物語自体は大変スリリングでした。ビリー・ボブ・ソーントン演ずる兄、主人公の兄がいいんです。頭が悪そうなんだけど、ちょっと切れ者っぽい顔も見せたりする。でもやっぱり愚鈍さが際だってくる。この存在感、危なっかしさは映画を支えました。主人公、兄、兄の友達の三人が金を猫ばばしようとする共犯三人組なのですが、この関係がちょっとずつぼろぼろになっていく、その緩やかさが素敵です。で、映画的に思い切った流れをつくっているのもいいんですね。それまでの映画のトーンからすると、ああ、思い切ったな、という展開があります。そしてそれが結構、説得力を帯びている。つまり、これぞ物語、これぞ「展開」だなという動きがあって、映画の面白さが加速しました。
d0151584_184711.jpg

d0151584_185791.jpg

 ただ、この映画の場合、原作小説が面白かったということなのかな、というのが大きいです。おそらくは原作の物語が面白いのであって、この映画に特有の映画的風合いはというと、あまりない。先ほど指摘したような印象的な風景とか、『ファーゴ』におけるピーター・ストーメア的怖さとか、そういうのがあまりないんです。この映画における監督の仕事は、この舞台の風合いをいかに引き出すか、なんでしょうけどね。

 脚本がよくできていて面白い。けれど、『ファーゴ』のような、脚本に留まらない面白さは、実はあまりなかったんじゃないかという気もします。コーエン兄弟版『シンプル・プラン』が観てみたいと思いますね。でも、サム・ライミ版『ファーゴ』は別に観たいと思わない。きっと演出の違い、登場人物の所作をどう映すか、どう印象づけるかの違いで、この映画におけるライミはその点について、あまり優れた仕事をしていない(なにさまっ!)。細かいところでいいんですけどね。たとえば序盤、死肉を食らっていたカラスを刺激してしまい、主人公がくちばしでつつかれて怪我を負ってしまう。この怪我も別に後で何も活かされない。いや、何も活かされなくていい。活かされなくていいけど、せっかく死肉を食ったカラスで怪我をさせたんだから、ちょっと膿んじゃって変色しているとかね。そこに触れなくてかまわないから、そういうアイディアがあれば、登場人物の実在感ももっと高まった。兄貴にしても、昔の恋の思い出なんかを語らせるんじゃなくて、今の彼の慕情をうまくどこかで表せればよかった。そのほうがきっと哀しくなった。共犯の友達にしてもそう。あいつの人間性がもうひとつわからない。結構がちゃがちゃして突っ込めば面白そうなのに、もったいない。主人公の妻、ブリジット・フォンダにしてもそう。
d0151584_1104679.jpg

d0151584_1105892.jpg

 脚本自体は『ファーゴ』に匹敵するくらい面白いと思うんです。起伏に富んでいるし、結末の切なさもある。だからやっぱり、『シンプル・プラン』を面白い映画として認めるにやぶさかではない。でも、映画としての魅力、パワーを感じるかというと、そこはあまり感じない。うん、本当に、悪くないんですけどね。『ファーゴ』が強すぎました。あれを知っていると、『シンプル・プラン』を推せなくなってしまうんですね。単純に、変な個性とか要らないからわかりやすい話が観たい、というなら、『シンプル・プラン』を推せますけれどもね。

次回、ひとまず最終回。
[PR]
by karasmoker | 2010-11-30 01:12 | 洋画 | Comments(0)
←menu