『デス・レース2000』 ポール・バーテル 1975

この熱さと馬鹿さと荒々しさこそがアメリカン!
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短い時間でぱしっと決める、というのがひとつの映画の理想型だと思います。ものすんごい雑な言い方をしますが、短い時間で決める映画って、格好いいです。だらだら長くして、「早く終われ」と思われる映画も数多い中で、短く決めるのは美しい。良い濃さがあります。中には「長く撮りたいけどそんなバジェットがない」「もっと長くしたいけど長くしてまで描きたい内容は特にない」というケースもあるのでしょうが、それが吉と出ることもあり、本作は84分、1時間半に満たぬ中でぱしっと決めた傑作です。

予備知識なしで観たので、スタローンが出てきたのには驚きました。内容にも度肝を抜かれて、84分間、とても楽しめました。アメリカ横断レースなるものが開催され、エントリーしたのがデヴィット・キャラダイン、スタローンなどが乗る計5台の車。助手席にはナビが乗り、合計10人のデッドヒートが始まります。
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 車の造形がアホアホなので素晴らしいです。近頃の日本では「痛車」なんたるものが走っているようですが、この映画に出てくるアホな車たちに比べればなんともつまらないですね。このアホな車たちがいいのは、めっちゃ速いところです。見かけだけイキって安全運転なんてしていたらクソですけど、この車五台はめっちゃ飛ばします。それが面白いです。ドライバーも魅力的です。ナチスの印をヘルメットにつけた女がいますが、彼女は映画に華を添えました。この作り手が非常にわかっているなあという点として、ちゃんと美女を登場させまくっていることがあげられます。これが男のレースみたいになったら面白さ半減もいいところ。頭のおかしい美女が出てくることで、この種の作品はぐんと魅力を増すのです。

 さて、ただのアメリカ横断レースものかな、と思っているとびっくりさせられます。なんと、このレースは「得点制」になっていて、その得点はなんとなんと、「人を轢く」ことによって得られるのです。参加車が人を轢くたびにポイントが加算されるシステムで、実況のアナウンサーなどがきゃあきゃあ言っているのです。
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 なんでそんなことに、というと、この映画の舞台となった2000年ではアメリカがおかしな国になってしまっているのであって、まあつまりそういうことなのです。でも、そんな世の中はおかしいやい、というレジスタンスもおりました。最終的にはレース×レジスタンスの政府転覆計画、という方向に話が転がり、大変見応えがありました。

 映画に関してここでよく言うことですけど、勢いというのは大変に大事です。アホな設定であっても、勢いをつけるとぜんぜん問題なく観られる、いやむしろそのアホさこそが大いなる魅力と化してきて、最終的には傑作映画となるのです。この映画には勢いがありました。その勢いとはすなわち、あのアホアホカーによるターボ、ラリーであって、アメリカの荒野をひた走るその爽快感であって、ライバルを轢き殺しながら「奇襲成功!」と叫ぶナチ女であって、ランボーやロッキーのときよりも激しくわななくイタリアの種馬スタローンであって、繰り返される爆音なのであります。
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 この映画が偉いのはとにかく火薬を惜しまないところです。具だくさんなのです。幼少時代のぼくは「仮面ノリダー」が大好きだったのですが、バイクに乗るノリダーを襲った発破、発破、発破の連続が、幼心にびきびき響いていたのです。この映画はそうした「映像に興奮した原体験」を思い出させてくれました。なんというか、ちゃんと火薬を仕込んだ爆発というのは、やっぱりいいんですよ。今ではCGが当たり前ですけど、そんなんじゃないんだよ。規模自体は大きくなくていいんだ。車ひとつが吹き飛ぶくらいでいいんだ。本物の爆発には、ドキドキが宿っているんだ。
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70年代中盤、やさぐれニューシネマ時代がやっと終わるかという頃に出た、アホな映画です。大味かつ低偏差値かつぶっちぎりの熱さがある、アメリカ映画の黄金パターンです。個人的「間違いなく熱い映画」選集に、またひとつ傑作が加わりました。
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by karasmoker | 2011-03-01 00:18 | 洋画 | Comments(0)
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