『座頭市と用心棒』 岡本喜八 1970

言うてもこれは伝説の共演なり。
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勝新太郎×三船敏郎という、俳優界の王・長嶋みたいな企画です。考えるにこの時代というのは生ける伝説のオンパレードですわね。王、長嶋も現役だし、猪木・馬場もいるし、他にも挙げていけばいろんなジャンルですごい人が群雄割拠なのでしょう。あと手塚治虫も現役ばりばりですしね。大阪万博があったのもこの年ですし、なんか、すげえなあ、と思います。もちろん当時と比べものにならぬほど技術は進んでいるのだから、当時の人々から観れば現代のネットとかはとんでもないものなんでしょうけどね。技術は進んだけど、アイコンは小さくなっている時代です。カリスマなんちゃらというワードが氾濫していますけども、昔本当にカリスマ的な人物が溢れていた頃を思うと、ちゃんちゃらおかしいのですわね。

 さて、勝新と三船の共演、それも大人気シリーズ『座頭市』に黒澤印の用心棒がやってきたわけですから、話題を呼ばないわけがありません。大ヒットだったようです。やっぱりどちらにしても、出てくるだけでこちらをときめかせます。勝新がそこにいるだけで画がずっと保つわけです。それにしても勝新にせよ三船にせよ、やっぱり怖いです。こんなに怖い役者というのはもはやほとんどいないです。共演した俳優は大変だったでしょうね。監督は岡本喜八と来てこれまた超一流ですから、もう絶対NGを出せなかったでしょう。老練な俳優ならまだしものこと、若手でやっと台詞をもらったような役者であれば、がくがく震えたに違いありません。
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 格好いいとか華があるとか以上に、こちらを畏怖させる俳優というのはすんごい境地でしょう。今も存命、現役の映画人で言えば、たとえば高倉健なり、海外ならイーストウッドなりがいますけども、どこかこう、ジェントルというか、実直で真面目で、ちょっとしたユーモア心もあって、みたいなイメージがあります。しかし勝新、三船はなんか、そんな感じがしないです。あくまでも根拠に乏しいイメージ語りですけど、この二人は怒号だけでひとつの街を制圧できそうな、圧倒的な存在感があるのです。怖いのです。

 で、これは座頭市シリーズの大きな演出的利点だと思うんですけど、市がめくらであるという設定が、緊張感を持続させるのですね。勝新が歩くだけで緊張させるんですよ。目が見えない男が歩いている、それを見るだけでも危うさに緊張するし、そのうえ彼はいつ襲われるかもわからない。そうやって観客をずっとどきどきさせ続けるわけです。

 そういうところに三船が絡み、そして若尾文子まで出てくるから、おなかいっぱいになります。この三人がいるシーンでNGなんか出そうものならもう土下座土下座でしょう。
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 で、映画の内容ですけども、まあ要するに座頭市が黒澤明の『用心棒』の中に入り込んでいるようなもんです。宿場で対立する二大勢力があって、うまく焚きつけて消耗させ漁夫の利を得ようって話になっていき、主人公たちは街の争いとはまた違う場所で、火花を散らすというわけで。かなりがっつりと勝新、三船の共謀、対立を描いていますね。本当にこの二人ありきの企画です。

 でも、だからこそ、ストーリー的にはそこまで面白くなかったです。誰と誰の対立がどうの、という部分がなんだかぼやぼやしているというか、鮮やかじゃなかった。斬ったはったの場面ももうひとつ盛り上がりに欠けたなあという印象です。岸田森の立ち位置もなんだか活かされきっていないというか、盛り込みすぎなのです。だから、映画全体を通して言うと、「勝新と三船の共演! 岡本喜八が監督! 若尾文子もいるよっ!」という豪華さがいちばんなんですね。それ以上のものが映画の中にはないのです。料理で言うと、名産の旬の食材が揃っているんですけど、それぞれが食材のうまさを出しているんですけど、いざ料理としてどうやねんというたときに、別のこの食材はこの調理法じゃなくてもいい、と思えてしまう。このソースでも確かに美味しいのだけど、違うソースでも行けそう、というか別のソースのほうがいいかも、みたいな。

 前半は豪華さでわくわくして、中盤はちょっとたるいです。あちらこちらに種がまかれるんですけど、動いてはいるんですけど、見せ場に乏しいんです。三船が火事を起こそうと殴り込む場面なんかも、もっとなんかないんかい、盛り上がるようなことは、と思ってしまう。ただ、クライマックスはちょっと面白い。いろいろごちゃごちゃになっていくんですが、そのときのBGMで、お経みたいなのが流れます。あの揺らぎの怖さはありますね。あのBGMは効果を上げました。それまでのくだりが実際それほどに感興をもたらすものではない、どうでもええやんけな部分もあったんですが(細川俊之と滝沢修に岸田森が絡んでいくあたりとか)、あの読経でぐっと、「人の業」みたいなものを色濃く魅せました。あの演出はいいですね。ホラー映画とかでも取り入れればいいと思います。これをぱくる分にはかまわないと思います。

 最後に三船と勝新が決闘じゃい! みたいになるんですけどね、そこは無理矢理感がありました。観ながら、「なるほど二人は宿命の戦いを果たすのだな」とは見えなかった。若尾文子の使い方ももうひとつでした。

 とはいえ、伝説的名優の共演ですから、観る価値は大ありです。ジャニタレや女優気取りのモデルがへらへらきゃぴつくドラマには、到底真似ができないものです。
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by karasmoker | 2011-03-06 00:48 | 邦画 | Comments(0)
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