『伊集院光のでぃーぶいでぃー ~夢にときめけ仲間を疑え 草野球芸人対抗連係プレー選手権の巻』2009 

おもしろさは知名度や製作費で決まらない。バラエティにおけるその好例。
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 今回はちと趣向を変えましてお笑いのDVDです。
 伊集院光という人は、こと地上波テレビのお笑いにおいては目立たない存在です。あまたのお笑い芸人が割拠する中で、彼は爪を隠しています。これはもう明確に、爪を隠しているのです。ではどこでその鋭さを発揮するかと言えば深夜ラジオ、そして、こうした自己プロデュースの番組においてなのです。このDVDはBS11で放送されていた『伊集院光のしんばんぐみ』の一企画をソフト化したもので、他にも数枚がリリースされています。その中でも特に面白い企画がこれ。お薦めです。
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 出てくるのはほとんどテレビに出ることのない若手芸人です。現在も放送中のMXテレビ『IJP イジュウインパーク』、あるいはかつての『月刊イジューイン』、もしくは『深夜の馬鹿力』の2006年のポッドキャストを聴いていれば知っている芸人もおりましょうが、普段テレビのお笑いしか観ない、いやテレビのお笑いすら観ない人には、まったくなじみのない芸人が主役です。面白いのに、『アメトーーク』とかには呼ばれない芸人たちが主役です。
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 さて、企画内容ですが、タイトルにもあるとおりの野球ものです。ノッカーがボールを打ち、内野守備陣がダブルプレーを成功させればそれでオーケー、というシンプルな話です。チャンスは10球、芸人たちは普段から草野球に勤しんでおり、決して難しいプレーではありません。野球の企画としての明快さは、試合をしてうんぬんという類のものよりもはるかに上です(野球を知らない人に対しても、そこは丁寧な伊集院、ちゃんとルールの解説が入っています)。
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 しかし当然、条件的な縛りがあります。ゲームに参加する若手芸人の中にはスパイが二人紛れ込んでいて、彼らはダブルプレーを成功させないように仕掛けてきます。ダブルプレーを成功させれば守備チームの勝ち、うまくそれを阻めばスパイチームの勝ち、というわけです。スパイが誰なのかは当然、当人たち以外にはわかりません。プレイヤーたちは皆、互いがスパイではないかと疑いながらプレーを続けます。単にミスを犯しただけなのに、おまえは成功を阻むスパイではないかと、疑ったり疑われたり。疑心暗鬼が繰り返されてぎすぎすしていく、というわけです。
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 今、バラエティと言えば複数のコーナーに仕切られていたり、あるいは大きな企画ものでも「○○に何ヶ月密着!」とかやってみたり、どっきりを仕掛けてみたりなんてのが多いですが、この企画は違います。いたってシンプル。金もかかっていない。そこにいるのは踊らされる若手芸人たちと、言葉巧みに彼らを操る伊集院光だけです。伊集院という人は、実は若手をもてあそぶのが大変上手なのです(IJPを観ましょう)。
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 バラエティはごちゃごちゃしていて観る気がしない、うるさすぎる、という人も敬遠無用です。むしろこれは、ひとつのドキュメントあるいは物語としても、楽しめるのです。というか、「あたしお笑い好きだけど知っている芸人がぜんぜんいないじゃん! 面白くない!」なんてやつは観るな! 『アメトーーク』とか『リンカーン』とかを観て洟を垂らしていろ!

 勝つのは守備チームか、スパイチームか、もちろんここではばらしませんが、ひとつ言うとしたら、「あざやか」です。これはあざやかです。あのバラエティはすごかったよね、と言えるDVDであることを、保証しましょう。あるいはこの言い方だといろいろ連想させそうで嫌なのですが、「振り返ってみればすべてがうまく運んでいたね」ということも言えましょう。伊集院が仕掛けたゲームですが、当然グラウンド上で起こる偶然の連続までは彼も制御できません。若手たちの話す言葉までは押さえられません。そして最終的に、そのすべては、とてもうまく運んでいる。同じことをもう一度やれと言われてもできない、というくらいに。

 あまりハードルを挙げるのも禁物です。バラエティは気軽に気楽に観てなんぼですから、ぜひとも肩の力を抜いて観てほしいですが、お笑いのDVDを薦めるとしたら、ぼくはこれを挙げます。
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by karasmoker | 2011-03-07 23:30 | 邦画 | Comments(0)
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