かつての名作連ドラ2本

埋もれたる名作です。 
 さて、今日は映画ではなく、隠れた名作テレビドラマについてご紹介。ぼくは2004年放送の大河ドラマ『新選組!』以降、新しいテレビドラマというものをほとんど観ていないのですが、かつては故・田中好子さんが母親役を務めた『家なき子』に目頭を熱くし、三谷幸喜に惚れ、『踊る大捜査線』に胸躍り、その他数々のテレビドラマを観て育ったテレビっ子ちゃんだったのです。

そんなぼくが、世間ではとうに忘却されたドラマを二本、ご紹介しましょう。
『今夜、宇宙の片隅で』
脚本:三谷幸喜 演出:河野圭太、佐藤祐市  フジテレビ 
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 98年の夏に全12話で放送されました。
 あらすじを話すと長いのですが、舞台はニューヨークで、西村雅彦、飯島直子、石橋貴明がメインキャストです。毎回出てくるレギュラーは彼らに加えて梅野康靖、たった四人だけ。あとはちょっとだけ外人が出てきたりするくらいで、今思ってもなんともこじんまりしたドラマでした。舞台設定もこじんまりとしていて、ニューヨークのロケ場面もそれなりに出てはきますが基本的にはアパートの中。メインの三人がひとつ屋根の下で暮らす恋愛劇です。西村が飯島に恋をするのですが、そこに石橋が絡んできて悶着。奥手で不器用な西村と、女の扱いがうまい石橋。飯島直子をめぐって恋の火花が散るわけです。
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 DVD化されておらず、ネットでVHSを購入しましたが、やっぱりいいのです。これがDVD化されずに糞どうでもいいドラマがばかばかリリースされているのは哀しい限りです。これは海外に輸出しても十分受け入れられる出来なのに。何がいいって全部いいわけですが、西村雅彦の名優ぶりが最もいかんなく発揮されているドラマであろうことは疑いようありません。彼の愚かさ、不器用さ、情けなさ、実直さに胸打たれること請け合いで、ぼくのような人間は特に思い入れるのです。いろいろと映画、ドラマ、本などに触れて思うのですけれども、つくづくぼくは駄目な男、愚かな男、その無様さに惹かれるのです。そしてその無様な人間が、なんとかして自分を実現しようとする様に、撃ち抜かれるのです。だから逆に何もかもうまく行っている人には観ないでもらいたい。
 飯島直子の最近の活動はまったく知らないので今どんな感じかわかりませんが、日テレで深夜にやっていた『DAISUKI!』も好んで観ていたぼくとしては、好ましいキャスティングでした。このドラマに見合ったいい具合の安さがあったんです。絶世の美女、いかにもヒロインという類の清楚系、そういうスター性とはまったく違う等身大な魅力で、コメディエンヌとしての飯島直子を観るにはこれより他にないと言っていいでしょう。少女らしさを帯びながら大人の女性の部分も見せる。このキャラクター造形は三谷幸喜の描いた女性像の中でも最高です。ああ、なるほど女性とはこのようなものであるなあ、と思わされます。石橋貴明の存在感も最高です。イケメンというのとは違うんですね。これでイケメンが出てきちゃ駄目なんです。悪さと強さとひょうきんさを兼ね備えた大人の男、しかし大人になりきれぬ部分も抱えている。
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 男二人と女一人という構図は昔からたくさんたくさんつくられていますが、観てきた中でこれがいちばん。VHSが物流の表舞台から消えて久しく、観るのは困難となっていますが、どこかで見かけることがあったら必ずチェックしてほしい作品です。

『愛なんていらねえよ、夏』 
脚本:龍井由佳里 演出:堤幸彦、今井夏木、松原浩 TBS 
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 02年夏に放送されました。金曜夜10時枠と言えばTBSの花形で『金曜日の妻たちへ』『ふぞろいの林檎たち』『ずっとあなたが好きだった』『高校教師』『人間・失格』『聖者の行進』『ケイゾク』『木更津キャッツアイ』『タイガー&ドラゴン』など新旧に渡り名作、話題作を生み出していますが、本作は視聴率的には芳しくなく、平均が7.8%、最低時には4.2%を記録するなど数字に恵まれないドラマでした。
 演出はと言うと、『恋空』を監督した今井夏木、そして映画好きの中で悪名高い堤幸彦がメインです。こうなるとあまりよさげに思えないかも知れませんが、ぼくはこのドラマ、(そして『池袋ウエストゲートパーク』など)があればこそ、堤幸彦を心底では嫌いになれないのです。彼はドラマ監督としては間違いなく一流と言っていいのです。もしも周りで宇多丸さんや町山さんなどの評価に乗じ、「堤幸彦は駄目だよねえ」という会話になったら、「いや! ドラマはすごいんだよ!」と擁護してほしいと思います。
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 さて、内容ですが、渡部篤郎と広末涼子が主演です。連ドラにはあまり出ない藤原竜也も出ています(彼の出る作品はあとは映画『バトルロワイアル』、と大河の『新選組!』が大好きです。結構いい作品に出ていますね)。渡部は歌舞伎町ナンバーワンホストなのですが、ふとしたことから逮捕され、刑務所に入れられます。出てきたときには既に新しい勢力に街を奪われ、あげくにそれまでの悪行から恨みを買い、他人の借金を十億ほど背負わされます。それを返さないと森本レオとゴルゴ松本に殺されることになっているのです。さてどうしたものか、彼を慕うホストの藤原竜也にも助けを借り、一計を講じます。広末涼子扮する良家の娘がいるのですが、彼女の生き別れの兄と偽ってその家に潜り込み、財産を総取りしてやろうと目論んだのです。幼い頃に生き別れたため、周囲の人間も嘘だとは気づくまい。好都合なことに本当の兄は死んでいる。ふふふ、歌舞伎町で鳴らした俺だ、世間知らずのお嬢様なんていちころさ。そう思って乗り込んだのは大きな屋敷、そして広末涼子。しかし、想定外の事実が彼の前に立ちはだかります。「感動の再会」を演ずるつもりでしたが、広末は盲目で、まったく他人に心を開こうとしない人間なのでした。
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 これはDVD化もされていますし、『今夜~』よりは入手しやすいでしょう。
 大変にダイナミックな作品です。設定自体が古典的というか、むしろ古い時代のほうが成立しやすいような話ですね。ちなみに韓国では映画化されているようですし(観る気にはなりませんが)、物語としての起伏に富んでいます。というか、細かいところはさておくとしても、連続テレビドラマという形で、これほどに鮮やかな「反転」を行っている例を他に知りません。なんでこのドラマがぜんぜん評価されなかったのだ、されないのだと腹立たしいくらいです。渡部の喋り方は真似したくなります。森本レオのイーブルとしての立ち位置も格好いいです。脇を固める俳優陣は坂口良子、半海一晃、不二子(当時芸名:松尾玲央)、西山繭子、石田えりなどですが、誰一人欠けることなく全員いいです。
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 撮り方にしても、フジテレビ的トレンディさ、NHK的端正さ、テレビ朝日的古くささ、日テレ的子供っぽさと違って、TBS金曜十時枠の放つ湿っぽさがあります。夏のロケシーンが多く、ああ、まさに夏の作品であるなあ、と趣深い場面もたくさんあります。広末が「お兄ちゃん」を連呼するので、そういう呼びかけが好きな人にもお勧めです。

 ゴールデンウィークにどこも出かける予定がない、という人は、せっかくですから連続ドラマをまとめて観てみるのもいいでしょう。上記二作品はその中で断然のお薦め。昔は面白いドラマがたくさんあったことよなあ。
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by karasmoker | 2011-04-30 02:25 | 邦画 | Comments(3)
Commented by at 2011-04-30 16:17 x
三谷ドラマでこれに近いシチュエーションと言うと「やっぱり猫が好き」ですね。
Commented by at 2011-04-30 16:25 x
ああ・・・それと三人の共同生活というと、ビリーワイルダーの師匠であるエルンストルビッチが撮った「生活の設計」ですね。
ちなみにこの脚本を書いた人はホモです
Commented by karasmoker at 2011-05-01 08:22
コメントありがとうございます。『やっぱり猫が好き』は最初から最後まで通して観ていないのですが、あらためて観てみようと思いました。
 古典映画については『今夜、宇宙の片隅で』内でいくつか語られます。『アパートの鍵、貸します』『三年目の浮気』『お熱いのがお好き』『ボギー、俺も男だ』『アニーホール』『街の灯』、そして『生活の設計』など。三谷はワイルダーフォロワーを自認しているだけあり、とても大きな影響を受けているのがわかります。
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