『神々の深き欲望』 今村昌平 1968

このタイプの映画について語るのは苦手です。
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「長らく観たいと思っていた」シリーズ。なんとも大仰かつキャッチーなタイトルですね。今村監督作ということ以外に予備知識ゼロでしたが、タイトルだけで惹かれました。
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 日本の南に浮かぶ架空の島「クラゲ島」を舞台に繰り広げられるお話で、尺は三時間弱もあります。三國連太郎が主人公格で島人。嵐寛寿郎を長とする彼の家族を軸に話が展開し、島の因習や宗教的営みもろもろが淡々と描かれます。東京から島の開発をしにくる技師なども加わり、長尺の映画を支えるわけです。
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 うーん、これはねえ、あのー、ちょっとやそっとじゃ論じられないものだと思うんです。少なくとも今のぼくがまともに論じようとすると、もうそれはそれはものすんごい面倒くさいです。いわゆるエンターテインメント映画ではぜんぜんないし、だからこそ物語的な部分を抽出して論じても、この映画について十分な伝え方ができないでしょう。
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 本ブログを眺めてもらえばわかるとおりに、ぼくはアメリカ映画がいちばん好きです。もちろん日本映画の傑作も数多く観てきましたけれども、そして日本人だからこそ感じ入るような作品も多く出会うことができましたけれども、アメリカ映画の魅力にはどうしたって抗えません。ではどうしてアメリカ映画が面白いのか。ということでいうと、そりゃあひとつの要素に絞れるもんじゃないですけど、やっぱりエンターテインメント、物語ってことにおいて最も鍛えられているからだと思います。

 人種も民族も背景も異なる国民を相手にして、なおかつ世界に対して盟主たりえようとするかの国は、そりゃあ文化的な多彩さ、とりわけ「面白さ」に関してめっちゃ鍛えられていると思うんです。それに見合う土壌を持ったのもかの国の幸福でありました。

 そういうのを観てきたぼくに、そういうのに慣れてきたぼくに、逆にこの種の日本映画というのは、なかなかに論じにくい。物語的な起伏には乏しく、登場人物にも移入しにくいつくりです。でも、その点においてこの映画を評するのは違う気がする。だから大変にやりにくい。
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 ただ、それでも、映画がその登場人物たちの言動によって形作られるものである以上、人物の有り様というものがその映画を大きく左右するのは事実であって、その意味でいうと人間の描かれ方は非常に弱いなあと思うのでありました。三時間もあるのに、ああ、あの人物はすごかった、というのがあまりない。主人公の三國連太郎にしても、彼がどういった人物なのかよくわかりません。あの配置に置かれた人物だ、というのはわかる。外付けの属性はわかるし、行動もわかる。でも、彼の存在に生々しさがない。ああ、こういう映画的機能を担わされているのね、とは思うけど、彼に寄り添うことができない。
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 知的障害と思しき神がかりの女というのが出てきて、彼女がこの島の放つ野蛮さを助けてはいるのですけれど、これまたさして印象には残らない。彼女がシャーマンとして、のたうち回りながら神の託宣を語る場面があるんですけど、そこでもなんか、ふっつーのことしか言わないんです。みんなで力を合わせろとか家族を大事にみたいな。あれはがっかりします。物語的見方に毒されているからかもしれないですけど、あそこでおかしなことの一つでも言えば、この島の持つ特異さみたいなもんも出てきたと思うんです。でも、仰々しくのたうっておみくじみたいなことしか言わないもんだから拍子抜ける。そんなことならいちいち尺を取らんでもええのに、と思わされました。
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 最近なぜか『楢山節考』で検索してやってくる人が多いようなんですが、あの映画はこの映画の描くべき部分をきちっと凝縮して描いていると思うんです。独特な因習だったり残酷さだったりそこで生きる人々の悲哀だったりね。この映画はそこがかなりのぺーっとしている印象です。
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 ぼくが娯楽映画的な見方に慣れすぎているのかもしれないですけど、映画の各シーンが持つ意味とかって、やっぱり面白くてなんぼなんじゃないかって思ってしまうんです。長い映画だったらそりゃいろんな意味が内包されていますよ。このシーンは物語的にどんな意味があるの? ない方が語りがスムーズじゃない? という意見に対し、「いやいや、このシーンは何々を象徴していて」うんぬんという言い方ができるでしょうけど、そんなの長くやれば何だって象徴できるし意味を持たせられるでしょう。今村昌平大先生が描いたシーンなのだ、この場面の意味を読み取れる私は偉いのだ、と言われれば、はあそうですか、と思うんですけど、でも、面白くないね、というのがぼくの応答だったりもするわけで。
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 うーん、この辺の話はしだすと長くなりそうなので、やめておきます。
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 うーん、なんか、今日のところは、これくらいの感じで。
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by karasmoker | 2011-06-02 23:19 | 邦画 | Comments(0)
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