『テルマ&ルイーズ』 リドリー・スコット 1991

この世界は敵だらけ。でも、太陽が味方している。
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 ここ最近観た映画の中で、明確にびびびっと来た作品でした。観終えてから良さがわかるってのが結構多かったんですけど、これは観ながらずっとよかったです。観る前にその映画を好きになれるかどうかのセンサーが働くんですが、今回はばっちり当たりました。

 女性二人の映画、女性二人のバディ・ムービーでここまで「くーっ」となったのは覚えがないですね。主演はスーザン・サランドンとジーナ・デイヴィスなのですが、この二人のバランス感がすごくいい。結構序盤から惚れてしまいました。
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 スーザン・サランドン演ずるルイーズは独身のウエイトレスで、ジーナ・デイヴィス演ずるテルマは夫の圧制を受けている専業主婦。彼女たちは数日間の小旅行のつもりで車を走らせます。ドライブに出るのが序盤十分あたりですが、もうドライブに出る前の時点で、彼女たちの性格がよく描写されている。オープンカーのトランクに荷物を詰め込むくだりで、しばらくこの映画は大丈夫だろうな、と信頼できました。別に何をしているわけでもないんですけどね。この二人の感じがわかるんです。
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 で、出かけた先でいろいろと起こるわけですが、この映画のいいところは、徹底して男どもを信頼していないところです。男性嫌悪映画と言っていいでしょう。男性嫌悪映画を愛でるなんてことは今まで一度もなかったように思うのですが、この映画は爽快です。男どものくだらなさとか小ずるさとか権威的な振る舞いがわかりやすく描かれ、二人はそれに媚びることなく「けっ」と言ってのける。銃をぶっ放す。これは爽快です。
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 アメリカ映画最大の武器と言える荒野がぜいたくに映されているのもポイント大でした。宇多丸さん風に言えば、「俺たちが自慢されたいアメリカ」がありました。アメリカの荒野を観たい、っていう場合にも大変お薦めです。ロードムービーなんですが、この二人の旅をずっと観ていたいと思えた。時間は2時間10分弱で、中盤ちょっと長いんじゃないかとも思ったんですが、いや、途中からね、この二人の旅を終わらせないでくれと思えたんですね。そういう映画って、なかなかないです。その時点で、結末がどうなろうがひとまずどうでもいい。そして、あの結末。
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 いろいろと褒めどころがあるわけですが、何しろこの二人がいい。特にジーナ・デイヴィス(テルマ)が素敵です。キャラクター的には、スーザン・サランドン(ルイーズ)が引っ張り手なんです。しっかりしなさいよ、というのはルイーズ。テルマは暴君的な夫から解放された晴れ晴れしさもあって、とても楽しそうにはしゃぎます。子犬の真似をする場面があるんですが、なんて可愛らしいのでしょう。これね、この二人が若い娘だったら正直、こんなに好きになれないと思うんです。でも、二人はもう三十過ぎで田舎暮らしで、この先どれほどのことが人生にあるねん、という部分もちょっとあるわけです。その辺の、実存的バランス感も大きいです。で、時としてテルマが引っ張るっていうね。ルイーズがちょっとびびったりするっていうね。うん、もう文句のつけようがないですね。
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 テルマのはしゃぎっぷりを観るだけでもこの映画は満足させてくれましょう。ブラッド・ピット演ずる若い男と出会った次の朝のシーンはなんと可愛らしいのでしょう。で、このブラッド・ピットがまたいいんです。あのー、なんていうか、ああ、ナンパがうまいやつだな、とわかる。細かいやりとりがね、いいんです。「俺は強盗をしたんだぜ」と言ったうえで、ああいうことをするあたり。
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 彼女たちはとある出来事から警察に追い回されるんですけど、刑事役はハーヴェイ・カイテルです。彼のいい意味での存在感のなさ、彼が出てくる捜査シーンの90年代っぽさが、テルマたちの70年代的光景と対比されて、映画に起伏が生まれている。

 言ってしまえば全編がアメリカンニューシネマ的ですが、テルマとルイーズのやりとりはニューシネマになかったとびきりの明るさに満ちていました。太陽が味方していました(なんじゃその言い方)。でね、彼女たちはもともと、ぜんぜん犯罪者でもなんでもないんです。むしろそういうものとは無縁の世界で生きてきたわけです。その彼女たちが、日頃のストレスなり何なりをあの旅で存分に発散し、男どもの馬鹿さに振り回され逆襲していく。振り回されるだけでも駄目。逆襲するだけでも駄目。何度も言いますが、最高のバランスに満ちている。そして、あのラストはちょっと、鳥肌が立ちましたね。
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 観ていない方がいるとしたらあまりハードルを上げたくないんです。映画ってハードルを上げて観ても何もいいことないですから。でも、この映画は褒めてしまいますねえ。
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 あの終盤のくだりが放つ映画的な快楽の前にあっては、何も言うなです。でねえ、あの落とし前の付け方ですけど、あれこそ正解って感じがしますね。うん、この映画にとってあれ以上の正解はないです。大げさに言えば、「絶対的正解」と言ってもいい。今までの旅で経験してきたいろんなもんがわーっと巡ってきて、今後の人生がわーっと巡ってきて、わーっ、です。アメリカンニューシネマは数あれど、あんなに素敵なラストは観たことがないかも知れません。『バニシングポイント』、確かによかった。『イージーライダー』、うむ、あれはあれでわかる。あるいは『マーダーライドショー2 デビルズ・リジェクト』、あのラストは本当に最高。でも、ぼくは今後、本作のラストをいちばんに推そうと思います。実にあっぱれな快作でございました。
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by karasmoker | 2011-07-05 22:16 | 洋画 | Comments(0)
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