『スティング』 ジョージ・ロイ・ヒル 1973

 ちょっとレビウしにくい映画でした。
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もちのんさんよりリクエストいただきました。どうもありがとうございました。

 いまさらぼくがお薦めするまでもない名作シリーズ、というところなのでしょうか、これを悪く言うレビウは観ないし、あってもつまらない片言程度です。ぼくとしてはそこまで惚れ惚れすることはなかったのですが、白状すると、ちょっと集中力が欠けていたというのもあるのでね。後で人のレビウを読んで、ああ、そういうことなのかと思う部分もありました。かなり密度の高い映画というか、ちょっとぼーっとしていると、あれ、これはどういうことなのだっけ、と思うこともあると思います。ぼくはわりとそういうことがあるのです。映画は人よりも観ているくせに、こと外国人については、あれ、このおっさんは誰だっけと思うことも結構あるのです。

 ポール・ニューマンとロバート・レッドフォード主演で、1969年の『明日に向って撃て!』と同じコンビです。話の筋立てとしては、レッドフォード演ずる若い詐欺師がギャングに恩師を殺され、畜生復讐したいんだと言ってベテラン詐欺師のニューマンに助けを求め、ギャングを追い詰めていくというような内容です。
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 うーん、ひとつあるのはね、ぼくはまじめっこちゃんになるときが多分にあるんですけど、最初に手を出したのはどっちやねん、というのもあるんですけどね。復讐譚は好きなんですけど、そのきっかけをつくったのはいわばレッドフォード側でもあるじゃないですか。真面目に働いていたのに殺された、とかじゃなくて、金を盗んだのがそもそもの発端で、その相手がギャングだったってのは迂闊ですわねえ。で、こいつらはおそらく今後も詐欺師としてやっていくんじゃないかと思うと、そこまで深く思い入れることもできないのですねえ。まあ、敵もいかさま師のギャングだから、そこをいろいろ言っても仕方ないのでしょうけれど、70年代アメリカ映画が持つ「熱さ」を考えると、少し割り引いてしまうところもあります。
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 敵のギャングのボスを殺すのではなく、いわば破産させるのが目的です。この辺の紳士感、品のよさというのはぼくがあまり観てこなかった部分です。殺すと泥沼になっていくし、それなら金を巻き上げたほうが賢いじゃないか、という方向性ですね。だからぼくの場合、映画の見方にいくぶんかの調整が必要なんです。師匠が殺された、くそ! ぶち殺してやる! という熱さをこの映画に求めても仕方なくて、ニューマンの導きによるスマートな復讐劇を楽しもうという体勢が必要です。そこをしくじるとぼくのように、あら、なんか解決しちゃってハッピー。これでいいのかな、と思うことにもなります。
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 でもまあ、誰一人傷つけずにすべてを解決して、自分たちにも利益があるというのは、考えてみるに理想的な方法ですね。相手が騙されたことに気づかないで騙しきれば、それはそれでいいというわけです。ある意味では詐欺師の最大のお手本、詐欺師とはかくあるべしというような映画でもあります。何しろ刑事まで騙しきるわけですからね。こういう解決をさせる映画ってのは、他にもあるんでしょうか。ぼくがこの映画に名前をつけるとしたら、「うまくやってやった映画」です。でも、何だろうこの、詐欺を肯定している感じ。いや、映画の舞台は1936年だし、映画は1973年だし、体制への反抗ってのはあってもいいわけですが、それにしても全部が全部うまく運んじゃったもんだね、何かを失ってもいないしね、というのがあってね。
 
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 観客に対しても騙しがありますよね。ギャングや刑事だけでなく、観客も「うわあ、騙された!」というのが大きな醍醐味のひとつです。この映画を絶賛する人の多くが、あのラストでくぅぅとなったのでしょうが、ぼくはあまりすかっとした感じもなかった。よくできているのに、なぜなのかなあと今考えているんですけれど、うーん…、「この場はうまく収まったけど感」かなあ。ここにあるのかもしれません。あのギャングもあの大金をあのままにして置くのか、あのままずらかるにしても果たしてうまくいくのか。なんか、すべて丸く収まった感があるんですね、映画の中だと。あれで高飛びをするようなラストカットがあるとこっちもすっと収められるんだけれど、あれで閉じちゃっていいのかなあというのがどうしても残る。

 ぼくには語るのが難しい映画でした。というより、旨味をうまく感知できなかった部分もありますね。ポーカーのシーンなんかはいいなあと思うし、あのニューマンの店でうまく敵をはめていくくだりも面白くは観たのですが、没入して観ることができなかったために、「ニューマンさんもレッドフォードさんも、大変うまくやったのですね」と引いて眺めてしまいました。騙すこと(=スティング)がこの映画の旨味とすると、だ、騙されたぁ! というのはぼく個人はなかった。ワイルダーの『情婦』のような痛快感はね。でも、よくできていると思うし、そうでないところをつつくのは無粋なのだろうし、楽しめる人には存分に楽しめることでありましょう。章立てきっちりでこれまたオシャレなつくり。ところで、あの音楽はこの映画のものなのですね。誰しも一度は聴いたことのあるこの曲です。 
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by karasmoker | 2011-09-21 21:00 | 洋画 | Comments(4)
Commented by もちのん at 2011-09-21 22:45 x
レビューありがとうございます。
twitterでの前フリが無かったのでまだまだ先かなぁと思っておりましたが、こんなに早く書いていただけるとは光栄です。

なにさまさんの言うとおり、映画の背景を冷静に考察してしまうと入り込めないかもしれませんね。私がこの映画を初めて見たのは高校生くらいの時だったので、あまり深く考えることなく、ポール・ニューマンのスマートさにやられました。三十路を過ぎた今も、たまに見て楽しんでます。

それにしても、自分の思い入れのある映画を人に批評してもらうのは、ちょっとドキドキしますね。
そう言いながら、再びリクエストが2本ほど…「さんかく」と「羊たちの沈黙」です。
お時間があるときにレビューしていただければ幸いです。

余談ですが、私も最近まで豊島区民でした。「shanti」にもたまに行ってましたよ。ナンもカレーも美味しいのに、なんであんなにもガラガラなんですかね…立地なんでしょうか。潰れないか心配です。

これからもレビュー楽しみにしています。
取り急ぎ、御礼まで。
Commented by karasmoker at 2011-09-22 00:14
 コメントありがとうございます。 
 読者の方でshantiに行っていた人がいるとは驚きです。あの店は傍の福しんに客を持って行かれちゃっているんですねえ。ぼくが行くときの客数平均はぼくを含めて2を切っている。心配になります。

『スティング』のレビウはさして内容のあることが書けなかったので、少し申し訳ない思いです。この辺の時代には他に個人的な傑作がわんさかとあるもので。『さんかく』は近年のものとしてはわりと評判の高い日本映画ですね。そのうち観たいと思います。『羊たちの沈黙』はかなり前に観たので、今観るとまた違うかも知れません。手元に未消化DVDがたくさんあるので先になりそうですが、気長にお待ちいただければと思います。
Commented by ブニュ・エル at 2012-10-17 15:49 x
 はじめまして! 素直に楽しめなかったというのは、単に映画の捉え方の問題ではないでしょうか。この手の映画は大円団じゃなければ、映画として成立しないと思いますし、強盗ものの映画では、むしろ失敗して終わるパターンの映画の方が多いので、この終わり方がベストかと。その後の事は観客の想像に任せた方が、むしろ潔いと思いますし、余計なラストカットがあれば、それだけこの映画を窮屈にすると思います。この映画の醍醐味は、組織的な詐欺集団の活躍(悪人が悪人から金を巻き上げる妙味)を見る所にあるのですから、単純に軽妙洒脱な会話を楽しんだり、登場人物の心理を楽しんだりする事で良いと思います。それほど深いテーマはないでしょうし。ですから「情婦」のどんでん返しとは本質的に違うと思います。
 この映画は、古き良きイギリスのユーモアセンスの伝統を感じます。それは(ポール・ニューマンも良いですが)きっとロバート・ショウのお陰なのでしょう。
Commented by karasmoker at 2012-10-18 01:26
 コメントありがとうございます。
 映画は観るタイミングや、観るときのこちらの成熟度にも左右されるものですね。わりと長いことこのブログをやっていますが、過去の自分の見方が今とはぜんぜん違うな、というのも結構あるのです(だから過去の記事を読まれるのはありがたい反面で気恥ずかしさもあります)。あらためて観たらまた違う見方ができるかもしれません。というか、そんな気がします。
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