『ゾンビランド』 ルーベン・フライシャー 2009

ゾンビ映画はまだまだ「遊びしろ」がありますね。
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 アメリカ国内でのゾンビ映画興収一位を塗り替えたという本作。タイトルはアホみたいにわかりやすいですから、キャッチーでもあるのでしょう。ゾンビ映画を観たのは久々ですが、やっぱりゾンビ映画というのはわかりやすくていいですね。

 モンスターもの、クリーチャーもの、幽霊ものなどありますけれど、ゾンビって説明が要らないんです。他の類はその映画その映画で説明が必要じゃないですか。どうしてそういう存在が生まれたかっていうね。ゾンビはそこは無視できますからね。アメリカ中がゾンビだらけになった、という時点から始めていいので、スタートダッシュがかませます。
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ぼくがゾンビ映画を観る際のポイントの一つは、「ダッシュゾンビ」か「のろのろゾンビ」かということです。「のろのろ」はロメロ印が押されているわけですが、ぼくには合わなくて、がうあーっと襲いかかってくる「ダッシュ」のほうが好きです。本作はその点が好印象でした。人間を見ると猛ダッシュしてくる。これがいい間合いを生みます。

 本作の特徴としては、これはエドガー・ライトっぽいところで、いろいろとパロディとかオタクネタみたいなのを入れてきたりしますね。『ショーン・オブ・ザ・デッド』で既になされていたように、ゾンビを既知の存在として捉え、過去のゾンビ映画の突っ込みどころをいろいろとばらしていく。『ゾンビランド』以前のゾンビ映画興収一位が『ドーン・オブ・ザ・デッド』だったことを鑑みても、時代は完全にポスト・ロメロになっています。かつて描かれていたゾンビ、既に飽和状態にあるゾンビ映画でどう新しい見せ方、切り口をするか。本作もその試みに満ちた作品だったと思います。
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 でも、裏を返せば、ロメロを筆頭とする過去のゾンビ映画を観ていないと、パロディを楽しめないのじゃないかとも思う。その意味でも、過去作を観ていくのはやはり大事なのです。『ゾンビ』を観ないで『ドーン・オブ・ザ・デッド』や『ショーン・オブ・ザ・デッド』を観るのは、なんだかもったいない気がします。
 
 さて、『ゾンビランド』ですが、お話にツイストがあって愉快でした。主人公は『ソーシャル・ネットワーク』のジェシー・アイゼンバーグ。伴走者は『ナチュラル・ボーン・キラーズ』などのウディ・ハレルソン、それと姉妹としてエマ・ストーンという人と『リトル・ミス・サンシャイン』のアビゲイル・ブレスリンが出てきます。ブレスリンはいい感じでむかつくガキを演じていましたね。あれははまり役だったと思います。こまっしゃくれた感じ、ちょっと腹立つクソガキ中学生っぽさがよく出ていました。
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 この四人がアメリカ中を走り回るのですが、パッケージの感じからもわかるように、あまりホラーテイストは強くないです。その意味でも、この映画に怖さを求めたりハラハラ感を求めたりすると裏切られる。銃をぶっ放しまくるしゾンビをぶち殺しまくるけれど、ゾンビは「殺され要員」なんですね。ゾンビ映画は少なからずそういうものだけれど、本作は特にそういう感じがしました。というか、ある人物に関するある出来事が、この映画のポイント・オブ・ノーリターンでした。あえてばらさずに置きますが、あの人物をあのように扱うってことは、もう殺し殺されの緊迫感勝負はしないよ、という表明でもあったわけです。それにしてもあれはびっくりしましたね。まあ、アイゼンバーグの動きとしてはそこだけはリアルなんですけど。
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 また一方で、ゾンビに殺される人も殺される人で、殺され要員感がものすごく強いというか、殺され要員ですらなくなっていますね。たとえば「生き残るためのルール」みたいなのを言うんですけど、そのときに「トイレにご用心」というのが出てきます。このときも、トイレで殺される人が出てきて、そのときのノリとしては「ね? 気をつけなくちゃダメなんだよ、あはは」な感じですから、人扱いすらされていないところがあります。土台真剣なドキドキ感はないわけです。

 それでも『ショーン・オブ・ザ・デッド』にはあったんですけどね、あれもゾンビ映画をパロディ的にして笑いを取るところがあったけど、その分の落とし前というか、実際ゾンビに登場人物が無残に殺されてえらいこっちゃになる場面はあった。白熱はあった。『ゾンビランド』にはその辺の旨味は乏しいです。
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 変な話ですが、ゾンビに花を持たせる局面があまりないのです。一カ所凄くいいところがあるんですけれどね、前半の、主人公の家の中の場面。あの間合いはとてもよかった。あれですとゾンビサイドとしても納得でしょう。「ゾンビ芸能事務所」があったとしたら、そこの社長は「うむ、うちのタレントに見せ場をつくってくれておる」と好評を与えるでしょう。でも、それ以外はね、あの姉妹が結構振り回すものだからそっちに持って行かれちゃった感がありますね。集団でぐわーっと襲いかかるエキストラ諸君になっているか、もしくはあの屈強なハレルソンの遊び道具化している節がある。ゾンビに対して一丸となって、というのは弱いと言えば弱い。でも、いろいろな試みはゾンビ映画にとって有益ですから、そこはいいのでしょう。
 
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だからいっそのこと、コメディとしてわりきったほうがいいわけですね。そうやって観る映画です。でも、それならそれで、たとえば『ショーン・オブ・ザ・デッド』のラストで、ニック・フロストがああなっちゃってそれでも笑えたみたいに、ゾンビがあんな風な結末をもって社会に迎えられていたみたいに、もうちょい面白みがあってもよかった。そうするとゾンビ芸能事務所の社長ももっと気分がよかったでしょう(だから誰やねんそれ)。いろいろやりようはあると思うんですけどね、遊園地とかスーパーとか出したんだから、そこであほみたいなことをやっていても面白いでしょう。メリーゴーランドに回されているゾンビとか、スーパーで買い物ごっこをしているゾンビとか、「遊びしろ」はありそうなんです。ハレルソンの好物のお菓子をもさもさ食っていて彼にどつかれてもいいでしょう。コメディにするならそこまでやってもよさそうですけれどね。2をつくるときはぼくを会議に入れてほしいものですね。誰かエージェントになってください。英語が喋れないので通訳も必要ですからお願いします(あほか)。

 あとはまあ、うん、あの姉妹について言えば、窮地に陥りますけど、「二度も勝手に車に乗っていったので殺されても別にそんなにショックはない」というのがあるので、あの遊園地のクライマックスがそこまで燃え上がらなかったですね。この映画の弱さとしては、あの姉妹が男二人を一切助けない、というのがあるんです。ああ、あいつらがいてくれてよかった、あの姉妹がいなければ死んでいたよ、という場面がないため、バディ感が強まらないというのはあります。

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 いろいろと自分なりに思う「改善の余地」が浮かんでしまう部分もあるのですが、試みもある楽しいコメディではありました。お薦め具合としては、レンタルビデオを借りに行ったときの数本の中には入れておくとよいよ、というところですね。
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by karasmoker | 2011-10-14 21:00 | 洋画 | Comments(6)
Commented by pon at 2011-10-15 21:10 x
こんにちわ。しょっぱなのタイトルバックよかったでしょう、あそこが一番好きです(笑)。たしかにゾンビが買い物をして、あのカーボーイにぶん殴られるシーンはみたかったなぁ。たしかにあの映画に足らない所は、それです!。ちょっととぼけたゾンビの演出、鋭いとこ突きますね。さすがです。中程で登場のあの人はよかったですね。ちょっと悲しくてあの映画がぴりっと引き締まった気がします。
ところでFIDO(ゾンビーノ)をBDで見ようかと思っているのですが、どうなんでしょうか?
Commented by karasmoker at 2011-10-15 23:38
 毎度コメントありがとうございます。
 やったことはないですけれど、ゲームの『デッドライジング』シリーズなども、ゾンビを遊び道具化しているようですね。『バイオハザード』も恐怖演出からアクション演出へと移行しているらしく、これが現代のゾンビの潮流なのかもしれません。ロメロ先生はどう思われるのかが気にかかるところです。FIDOについてですが、ぼくはコメントいただいて初めてその存在を知ったので、言えることはただひとつ、「それは何ですか」なのです。
Commented by pon at 2011-10-17 00:43 x
こんにちわ。『デッドライジング』は、知りませんでした。Xboxですね。カプコンのゾンビ物、プレイしてみたいなぁ。PS2しか無いのですが、バイオは「4」以外はクリアしました。毎回本編より最後のおまけパートのタイムトライアルにはまっています。たしかに4、5はアクションぽいですね。ゲームにはまっても、家の中でじゃまにされないのはいいのですが(僕以外はドラクエ派です)、バイオを始めると僕の回りから家族が居なくなるので、いささかプレイしにくいです(笑)。「ゾンビーノ」はよく「ショーン・オブ・ザ・デッド」と同列で批評されているので気になっています。
Commented by karasmoker at 2011-10-17 01:43
 ゾンビものゲームでは『SIREN』シリーズが出色だと思っています。と言いつつ自分でプレイしたことはなく、なぜならその勇気がないのであります。youtubeのプレイ動画を観てぶるぶる震えていたのであります。
 あれの映画版がつくられたとき期待したのですが、いかんせん監督があの人で、出来もがっくりだった覚えがあります。あれはなかったことにして誰か別の監督につくってほしいものです。
 『ゾンビーノ』はあらすじだけ読むと面白そうな感じですね。今からちょっくらツタヤに行ってこようと思います。 
Commented by pon at 2011-12-16 16:01 x
こんにちわ。FIDO(ゾンビーノ)をようやくBDで手にいれたので見ました。おもしろかったです。何故かどこにもDVDしかなくて、amazon.caで入手しました。管理人さんは、もう見てしまったでしょうか?ところで「いかんせん監督があの人」って、悪名高いゲームの世界観台無しのボルの事か思ってちょっと期待して調べたら違うみたいですね。僕はあのダメダメ振りがいさぎよくて結構好きです。僕のその駄作好きな所が、管理人さんに罵倒されるところでしょうか(笑)。ボルのRampage(ザ・テロリスト)はまあまあ普通の人にもいけますよ。それにしても邦題ってひどい。それと場所がちょっと違いますが、400回突破おめでとうございます。その何倍の映画をみたのでしょうか。凄いですね。これからもよろしくお願いします。
Commented by karasmoker at 2011-12-16 23:16
 コメントありがとうございます。
 『ゾンビーノ』は手元にありますが、特に理由もなく後回しにし続けています。駄作好き、というのはエイガミの中にある程度いるようですが、ぼくにはまだまだ辿り着けぬ境地であります。
 
 記事の回を重ねる中で映画の見方が変容していくのを感じていて、なかなか愉快なものであります。今後ともよろしくお願いいたします。
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