『情婦』 ビリー・ワイルダー 1957

有名な傑作ですから、語ることがありません。未見の人は読まないように。
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bang_x3よりリクエストいただきました。どうもありがとうございました。


 原題『Witness for the Prosecution』
「アガサ・クリスティー原作、ビリー・ワイルダー監督の傑作法廷ミステリー」というその一文だけでもうこの映画は済ませてもいいような気もするのですが、そうもいかぬので書き散らしていきましょう、知る人ぞ知る名画、『情婦』です。
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 オチが有名な映画というと、たとえば「ここは地球だったのか!」であるとか、「実はあの人が幽霊だったのか!」とかが最も有名なところで、個人的に好きなのは「真ん中の死体が犯人だったなんて!」とか「すべては過去の映像だったのか!」あたりですが(さて、何の映画でしょう)、本作もそこはまったく引けを取らないですね。だから、難しいですね、これを語れというのはどうも、うーん、やっぱりまだ観ていない人には多少気を遣いたいんですけどねえ、いや、でも、リクエストいただいたbang_x3さんはご覧になっているのでしょうし、もうばらしていきますね。観ていない人は読まない方がいいです。本作に関してはそういう風に言っておきます。はい、もう、ぼくは知らない。すぐ下の行で結末を書きますよ。細かい流れとかもあまりちゃんと書かないから、観てからじゃないと何を話しているのかわからないですよ。



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 簡単に言うと、「おまえ、やってたんかい!」ですね。
これは実にいい線をついています。法廷ものではもうこれ以上簡潔なオチをつけることはできないでしょう。ミステリーのフーダニットものだと、よくあるのが「善意の案内人が実は犯人」とか「探偵の依頼人が実は犯人」とか「信じていた人物が犯人」とか「犯人はヤス」とかがあるわけですけど(あれ?)、本作はその王道をばちっと決めている一方で、観る者の意識をそこには向けない、という惚れ惚れするテクニックでかわしてくるわけです。
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 原作を未読なので映画の話になるわけですが、映画では弁護士のチャールズ・ロートンが主な視点を担うので、観客は無意識に彼を応援するわけです。なんとか依頼人の無実をはらしてやりたいと思う弁護士に移入し、どうやって裁判に勝つか、という目線になってしまう。アル中という設定で、真面目ばりばりでもない太っちょですから、自然と愛らしいキャラクターとして受け入れてしまい、それが自然と、タイロン・パワーを信じることにもなってしまう。持って行き方が大変に巧い。
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物語の常道の逆を行く、というのも大きいですね。やっているはずがない、と自然に思ってしまうし、またそう思いたいという観客の心理がある。タイロン・パワーはそこを二重で破ってくるわけですね。「本当はやってたのか」「そうなんだよ、この妻と組んで、一芝居打ったってわけさ」「愛する夫のためですもの」からの、「でもさ、俺、おまえのこともだましてるんだよね」「えっ!」です。勝つのが到底無理だろうというところからひっくり返して、それがさらにさらに、ですから、気持ちのいいこと請け合いです。
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 今の時代ではもう通用しないような話なのでしょうが、くどくどしいこともなく、観客の興味をずっと持続させ、裁判も二転三転する。これはもうぼくがこれ以上褒める必要がないです。あまり書くことがないと言ってもいいでしょう。どうしようかな。逆にこの映画の悪いところを考えてみても、なんかどうでもいいようなことしか思いつかないし。
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 みんながいいと言っている映画なので、もうぼくは言うことがないんですね。評価の分かれる作品ならやりようもあるし、メッセージのある作品ならそこを読み取ろうと思うのですがそこを突くタイプでもなさそうだし、法律うんぬんについてはまるきり門外漢だし。言うなれば、「評するまでもない。傑作だ」というところです。bang_x3さん、ぼくはいったい何を語ればいいのでしょうかっ(訊いちゃったよおい)。
 はい、普通にお薦めいたしまする。
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by karasmoker | 2012-05-19 22:00 | 洋画 | Comments(5)
Commented by bang_x3 at 2012-05-20 01:29 x
2本目のリクエストにもすかさずお応え頂きありがとうございます。

で、ですよね。いや、ちょっと前に観直して、あまりにも面白かったのでついリクエストしてしまいました。
チャールズ・ロートンと看護師の楽しい掛け合いだけでも面白いのにあのラストですもんね。
ワイルダーはハズレがないので大好きな監督です。
Commented by karasmoker at 2012-05-20 09:05
 コメントありがとうございます。
 ワイルダーはアメリカ映画史で最も偉大な監督の一人だと思いますね。
Commented by Sacky at 2012-05-20 16:00 x
懐かしいですね、大学二年次にメディア英語の授業で見せられました。確かに、非常に面白い映画だと思います。ただ、傑作ではありますが「情婦」は典型的な「どんでん返しで見せる映画」なので一回見ちゃうと二回目以降は面白みというかハラハラドキドキがなくなるんですよね。ヒッチコック位映像美に凝っているというわけでもないですし。
Commented by 井上Luwak at 2012-05-20 21:46 x
情婦はいい映画ですね。
あの爺さんのキャラがいいです。オチも申し分なし。
殺された情婦と男との出会い方も、師匠格ルビッチ伝来の独特の出会い方で中々いいじゃないですか。
個人的にはワイルダー作品の中で一番好きです。
Commented by karasmoker at 2012-05-21 09:24
お二方、コメントありがとうございます。
>Sackyさん
 ぼくはヒッチコックのすごさに鈍感な人間なのであります。オチがわかったうえで観ると、個々の振る舞いに別種の味わいをくみ取れたりもするのであります。
>井上Luwakさん
 古い映画は苦手、とかいう人にもお勧めしてよいものでありましょう。これでつまらなかったと言われることはまずないのではないかと思いますね。
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