『復活の日』 深作欣二 1980

壮大ではあるけれど、設定や演出が追いついていないのです。
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『戦国自衛隊』が面白かったので、同じ大作角川映画ということで観てみました。キャストも千葉真一、夏八木勲、渡瀬恒彦など、あの映画の主役たちがこぞって出演しています。本作の主役は草刈正雄です。 
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 小松左京原作で、『日本沈没』などがそうであったように、これまた極端で壮大なスケールのお話です。世界的にウイルスが流行し、ほとんどの人類が死滅してしまうのです。残されたのは極寒地域、南極の人たちだけで、彼ら南極部隊の運命やいかに、ということなのです。
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 世界が破滅する話というのは、たとえば巨大隕石が衝突したり、大規模地殻変動が起こったりなどという設定で語られたりしますが、ウイルスが最もリアリティのある題材じゃないかと思います。本作では生物兵器が漏洩したことで感染が始まるんですが、これなどもその種のテロが危惧される昨今において、現実味のある話と言えるのではないでしょうか。テロやウイルス、感染とは違うけれど、放射能の問題とも通じている部分があります。
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 世界の破滅、というテーマは冷戦時代、核競争の時代においてやはりある程度にリアルなものであったのでしょう。本作でも米ソのミサイルが大きな脅威として位置づけられており、それがウイルスと相まって世界を終局へ追い込んでいってしまうのです。

本作はそうした点で、王道を行っている作品と言えます。病原体と戦争は、大量死を招く二大要因として歴史上不動の位置を占めているわけですから、誰が観てもわかりやすい内容なのです。

 映画としては当時高く評価されたのでしょうかね。今観ると、うーむ、これはいろいろと詰めなくちゃいけないところがあったんじゃなかろうか、ああ、さすがに資金の及ばぬところがあったのだな、というのが散見されて、入り込めぬところも多かったです。
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大変な感染状況だというのに、医者がマスクをしていないのはなぜなのでしょう、というのもあります。大統領も戒厳令下の自衛隊もしていない。その辺が緩いんです。必死で防備しまくっている。けれど防げない、という感じがしないのです。
 街の人たちや行政側があまりにもあまりにも無策なのもいただけません。なんでもいいと思うんです。たとえば、どれくらい効果があるのかもわからないままに消毒薬が街中に散布されている、とかね。街中が消毒薬で不気味な色になっている、みたいなね。そういう様子を描き出せば、より混乱が説得力を持てたはずなのです。南極ロケに多額がかかったそうですが、そこよりも他の部分にお金を費やすべきだったのではないかと思います。
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あと、これは予算制約上やむを得なかったのでしょうけれど、世界中の都市で人が大量死している、というのを、街の遠景と字幕で済ませる、というのはちょっとしょうもないです。あそこはもっとニュース映像っぽくしてかまびすしく見せたりとか(そういうシーンはありましたがあくまで序盤だけでした)、もしくはせっかくアメリカ大統領執務室を用意したんだから、そこが飛び交う情報と鳴り止まない電話でしっちゃかめっちゃかになっているとか、なんでもいいからもっと「どえらい感」が必要だった。そのうえで、何万人死亡なんて字幕を乗っけずに、ただ街の死んだ風景を映したほうが、混乱と寂寥の落差が出てきたはずです。うん、何万人死亡、みたいなのをあの字幕で表すよりもっと方法があったんじゃないかと思ってしまいます。
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 もちろんこれは三十年以上前の日本映画。ですので、その後洗練を経てきたハリウッド映画などを基準に物語るのはあれですけれど、やはり今観るとそういう穴がぼこぼこ見つかってくるわけなのですね。

 そうした演出の部分はおくとしても、地震のくだりがありえないタイミングの良さで、興ざめします。いちいち説明するのはおっくうなのですが、ある重要な場面で、もうご都合主義的としか言いようのないタイミングで地震が起きるのです。草刈正雄を一人にするためにいちばん手っ取り早いんですけど、もう少し脚本を詰めるなりなんなりは絶対必要だったでしょう。なんであんなことを。
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 日本や南極やアメリカやといろんな場面に話を向けて、海外ロケもふんだんにやって、世界規模の話だというところでまあ観られるのですけれど、基本的なところの穴が多すぎるのでちょっと辛いです。うん、重点が分散していたんですね。草刈正雄とオリビア・ハッセーの物語を作る段取りなら、最初の多岐川裕美のくだりはばっさり切って、日本の混乱は別の切り口で見せることができたし、渡瀬恒彦も結局よくわからないことになりました。原作があっての話でしょうけど、そこは思い切れなかったのでしょうか、うーむ。夏八木勲と千葉真一に至ってはせっかく出てきたのにほぼ何もせずにフェード・アウトです。
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 テーマの壮大さはすごいんです。戦争と病原体によるカタストロフ、というのはいい。でも、それを支えるだけの強度が物語自体になかった、設定も演出も随所ゆるゆるだった。だからかなりの竜頭蛇尾映画という風に見えてしまうんですね。今これを観る意義、というのは、ぼくにはあまり感じられなかったのでありました。もったいなさを強く感じる映画でございました。
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by karasmoker | 2012-10-23 00:00 | 邦画 | Comments(9)
Commented by pon at 2012-10-25 12:19 x
こんにちわ。お久しぶりです。「復活の日」「戦国自衛隊」共に若い時に映画館で見ました、でも全然憶えて無いんですよね。ということはピンとこなかったということでしょうか?いい機会なので見直して見ます。ところで原作の「復活の日」は超が付くくらい傑作です。過去に何度も読み返しました。「戦国自衛隊」の方は、原作より映画の方が面白かった気がします。リメイク版は、はぁ〜?という出来だったと思います。福井の原作(戦国自衛隊1549)はさすがに面白かったです。福井はガンダムもそうですが、オリジナルをアレンジするのが本当にうまい。ああ、話がそれてしまいました、ごめんなさい。なにせ、30年も前で映画をあまり憶えてないもので。(じゃぁ、コメントするなよ。(もっともだww))
Commented by karasmoker at 2012-10-26 00:08
 コメントありがとうございます。
 読むべき小説を読まぬままに日々を過ごしてしまっているので、原作評価にまつわる話はありがたいのであります。原作も読んだうえで論評できるともっと冴えたことが言えるに違いないのですが、他に読まねばという本が常時十冊、二十冊とあるものでして、なかなか手が伸びぬのであります。
 映画と直接に関係のないことも歓迎でございます。
 またのコメントをお待ちしております。
Commented by うぼで at 2013-02-03 22:39 x
中学時代課外学習で一学期に本作を、三学期に「二百三高地」観ました。本作しか画面が美しく迫力ありました。
Commented by karasmoker at 2013-02-04 08:35
 コメントありがとうございます。
Commented by 管理人 at 2013-11-16 01:45 x
作品のスクショを堂々とネットにアップし、拙い駄評を書けるところを察するに、よほど世間知らずのおバカちゃんか小学生かといったところかな?著作権法に無知な乳幼児はオシャブリでもしていなさい。通報しときますネ♪
Commented by karasmoker at 2013-11-16 17:09
ばぶう
Commented by karasmoker at 2015-05-21 00:01
コメントありがとうございます。
Commented by 前進不能 at 2016-09-12 05:54 x
作中で吉住が「たつの~!」て叫ぶ場面がありますが、兵庫県の龍野市に所縁のある方々が観たらドキッとする(した)のではないでしょっか(笑)。
Commented by 獺祭書屋 at 2017-01-29 10:12 x
本作で南極の提督を演じたジョージケネディさん亡くなられてたそうですね。もうかなり高齢だと思ってたのですが…。邦画みたく湿気た市場にも幾つかの作品で艶気のあるお芝居披露してくれてありがとうございました。慎んでご冥福をお祈り申し上げます。
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