『スターシップ・トゥルーパーズ』 ポール・ヴァーホーベン 1997

監督のアホさが炸裂している作品は観ていて気持ちがよいのです。
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 SFというジャンルには興味がありますけれど、ぼくが関心を抱くのは現代の延長上に想像できるような未来もの、その中に出てくるガジェットの数々などのほうで、宇宙戦争的なものにはあまり惹かれず、その方面はガンダムなどアニメのほうがむしろ好きなのです。みんな大好き『スターウォーズ』にもちっとも興味が無く、エピソード4と1しか観ていないような人間であります。

 本作は原作がハインラインの『宇宙の戦士』ということなのですが、刊行されたのが1959年。世界大戦が終わった後の冷戦期、宇宙進出競争が東西陣営で行われていた時代です。 宇宙ものSFが華やいだのはやはりこの米ソ対立、宇宙競争のたまもので、今よりも宇宙に対する希望が大きかった時代と言えましょう。その流れは70年代、80年代まで続き、それが『スターウォーズ』、『ガンダム』の製作、ヒットの要因と言えましょう。両者ともが戦争というモチーフを中核に据えているのも道理なのです。

 そういった時代から離れて97年、がっつりとした宇宙戦争もの映画です。戦争、とは言っても、相手は人間ではなく虫のエイリアン。まったく言語も通じない怪獣みたいな存在です。怪獣ものとして楽しめるところが多分にあり、アメリカSFと東宝映画が出会った、みたいな作品です。
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冷戦も終わってソ連崩壊、ロシアは宇宙開発どころか経済がやばい、という時代でもあるので、その辺の緊張感はなく、とにかくエイリアンをやっつけるぞ、というまっすぐな映画です。ヴァーホーベンの悪趣味を炸裂させるにはちょうどよい内容と言えましょう。
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 ウィキによると、本作はナチスのプロパガンダ映画『意志の勝利』のパロディであるとのことで、劇中の世界は統一政府によって支配されているらしく、ニュース映像も兵隊さん万歳みたいな内容で、軍の人たちの一部はナチスそっくりのユニフォームを着ています(ちなみに上画像の鷲の紋章(ロゴ)はナチス特有のものではまったくなく、鷲マークはドイツの伝統ある国章ですから、ナチスと同一視するのは誤りです)。
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でもそんなことはお構いなしじゃい、政治的な細かいことは要らんのじゃい、という感じで映画は進み、主人公が地球防衛軍みたいなところに属し、敵との戦いに繰り出していくのです。
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 ところで、近頃はアメコミものが人気だし、SF映画も勢いがあるのかなという風に思うのですが(新作追っかけにまったく興味がないのでわかりません)、最近の映画でこんな思い切りのよいシーンはあるのかいな、というくらい、ヴァーホーベンがやりたい放題やっている感があります。
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 なんというか、むき出しなんですね。兵士が死ぬシーンなんかでも、人体が無様に散るんです。これがまあ本当に無様で、滑稽ですらあるのです。どちらかというと、SFとか戦争とかいうより、スプラッターものに近いんですね。感傷とかそんなのはぜんぜんなくて、ヴァーホーベンが「やっちまえ!」と吠えている様が浮かびます。『ロボコップ』とか『トータルリコール』とかでもそうですけど、ヴァーホーベン監督はリアリティうんぬんよりも、「この画おもろいやないけ! どかーんとやったらええねん!」という勢いを感じる監督で、ジョン・カーペンターに似ているなあとも思います。CG加工とか特殊メイクとか照明とか次第によって、もっとリアリティある画にはできるけれど、そんなのはいいんだ、この画がいいんだ、というのを確かに持っている感じがして大変よいのです。
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 活劇的面白さは十分で、主人公が巨大な甲虫の背に乗るシーンなどはPS2『ワンダと巨像』のような快楽もあるのであり、敵の虫が大群をなして襲ってくる様はあほみたいでこれまた面白い。
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 正直なところ、この映画はもうそっち押しがんがんの映画です。そもそもあの星に歩兵隊で攻め入るところが戦略としてどうなのやというのがあります。核ミサイルとかをがんがん打ち込んだほうがいいんじゃないかと言いたくなりますが、そんなのは知らないんだ、白兵戦のほうが盛り上がるんだからそれでいいんだ、現に面白いだろう、という力押しが圧巻です。原作だともっと説明があるのでしょうけれど。
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 反面、戦争パート以外はヴァーホーベン監督はそんなに力を入れてないんかな、と感じるところもあります。軍に入隊した若者たちの日常みたいなパートとか、恋愛パートみたいなのがありますが、そこはもう別にそんなにあれです(何なのだ)。しかしそんな中でも攻撃型演出健在で、たとえば戦争訓練のシーンで上官が新兵を締めるくだりはやっぱり少しやりすぎたりするんです。
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 あと面白いのは、新兵たちがシャワーを浴びるシーンですね。男女が普通に同じ場所でシャワーを浴びている。これはまあ、未来の世界では性差とかそんなのはないのだ、的なことなのかもしれませんが、どちらかというと単純にパイオツサービスなんじゃないかという気もします。
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 思いついたままにだらだら書くいつものスタイルで続けますが、ラストはラストでちょっとイってる感じの終わり方ですね。普通この手の、戦争で味方ががんがん死んで、艱難辛苦乗り越えて敵をやっつける映画の場合、主人公はラストには疲労困憊、心身ぼろぼろで任務を成し遂げたりするものですが、この映画では敵の巨大な虫を捕獲したら、みんなで取り囲んで勝ちどきを上げるんです。やったぞー、さいこーみたいな。死んだ人をほとんど顧みることもないままに笑顔なのです。しかもナウシカのオウムに似ているボス虫の口が、明らかに女性器に似ているし。最終的にそこに棒をぶち込むし。
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 そんなこんなで、ほとんどアホ丸出しで爆走しているところが魅力的な作品であります。監督がやりたい放題やっている映画、という感じがする作品は(本当はもっとやりたかったのでしょうけれど)、観ていて面白いものです。
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by karasmoker | 2012-10-27 00:00 | 洋画 | Comments(0)
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