『ハードキャンディ』 デヴィット・スレイド 2006

饒舌な劇ですが、語ってほしい部分にはいかんせん寡黙で。
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パトリック・ウィルソン演ずる男がエレン・ペイジ演ずる少女と出会い系サイトで知り合い、あれなことをしてやろうと思ったら逆にどえらい目に遭わされるという、そんなお話です。日本のオヤジ狩りにヒントを得たそうで、パッケージからも明らかなとおりに「赤ずきん」が元ネタでしょう。

 本作は一言で言うに、エレン・ペイジを観る映画なのかなと思いますね。短髪で生娘っぽい外見の彼女がその実サイコパス的な言動に走るその様が本作の見所でして、後に彼女が『スーパー!』に起用されたのもむべなるかなと思います。
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 なぜ彼女がパトリック・ウィルソンをひどい目に遭わせるか、その本音の本音の部分はどうも語られずじまいのようなのですが、要するに彼が出会い系で若い少女を捕まえるようなロリコンであり、過去にもそんなことをしているのであり、であるならば制裁をくらわせてしかるべきであるからやってしまえと、まあそんな感じなのです。
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 ほぼ全編二人の会話劇です。二人のスリリングな駆け引きがこの映画の肝なのです。饒舌な劇でありまして、エレン・ペイジに虐められたいという諸兄にはもはやこれ以上の映画はないのであります。一方で、彼がロリコンであるという部分は台詞でちろちろ語られるのがもっぱらであり、こいつがどんな人間かもうひとつよくわからないなあというのもあって、そこまで入り込めはしませんでした。
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 二人が男の家で織りなす会話劇、なおかつ男は身体の自由を奪われて大変な状況、であるにもかかわらず、どうにも二人の本音が見えてこない印象がありました。そこがねえ、うん、この映画のひとつ弱いところではあります。
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 ロリコン野郎をぶちのめせ映画であるのだとして、こいつのロリコンぶりがあまり見えてこないんです。そこが弱いのです。いや、別に、そういう写真だの映像だのを出してこいというんではないんです。むしろ必要だったのは、彼が己のそういう無様な一面、口にするのも憚られるような欲望をぶちまけるシーンがなかったことです。
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 なぜこの映画はそこをかわすのか、あるいは用いないのか。それがないからどうにも芯が弱くなる。男は少女に睾丸除去を迫られて、「なんでもするから助けてくれ!」と懇願する。いわば極限状態です。にもかかわらず、こいつの醜い面が最後まで出てこない。
 
 なんかね、一人、失踪中の少女がいるらしいんです。で、この男がやったんじゃないかと言って少女は攻撃を加えるわけです。その辺は真相が藪の中というか、最後まで男は否認するんです。そういうやりとりがあるのは構わない。だったらなぜそのくだりで、この男の他の罪、ロリコン的趣味の告白をさせない? それをさせたほうが像がくっきりとしてくるのに。
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 いや、それをすると男が悪者っぽくなり、少女が正義の執行者のように見えて、映画のバランスが崩れるのだ、というかもしれない。でも、そうやって本音を交わし続けているから、この二人の劇の熱が高まっていかないんです。なんかよくわからない二人がずーっと戦っている感じになります。

 この映画では男の睾丸除去というのがひとつの山場になります。そこら辺の直接的な描写はふせられています。それは全く構わないというか、この映画ではグロ描写は別に必要ない。それでいい。しかし、その分だけ二人の会話から生まれる熱にもっと傾注しなくちゃいけないし、そのためには二人の正体なり本音なりにもっと迫らなくちゃいけない。顔のアップが多いのに、二人の深い部分が見えない。せめて、男のほうはそれをすべきだったと思うんです。エレン・ペイジの謎さはキープしてもいいけれど、男のほうはもっと明かしてほしいわけです。

 二人の駆け引き、どっちが攻めるか守るかの揺れというのは確かによくできていて、その部分のサスペンス感はあります。そこはいいのです。そこがいいのでこの映画はそれでよし、ということもできる。一方で、もったいなさも感じます。
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あるいはこれは観る者の年齢、性別等々によって、ずいぶんと見方が異なる映画なのだろうなあとも思います。たとえばこのエレン・ペイジと同世代の少女が観たら、パトリック・ウィルソンは単に悪い他者でしょうから、ある種の痛快さを得て終わるかもしれません。反面、ロリコン男には胸くその悪い結末でありましょう。十代のアイドルを信奉している人たちに見せるとどよーんとするかもしれません。どちらでもない人間からすると、もっと踏み込んでくれればいいのに、と感じるのであります。
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 ちょっと、「観客のご想像に任せるよ」の部分が多すぎるかなというのが大きいです。こっちは想像したいんだけど、それにしたってもうちょい鮮明にするところがないと想像できないよ、と言いたくなるんですね。

 この映画が自分にはよくわかったぞ、この映画は深い部分でこういうことを言うているのだぞ、というのがあったら教えてほしい一本でございました。
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by karasmoker | 2012-10-31 00:00 | 洋画 | Comments(2)
Commented by ジムニー パーツ at 2014-01-17 09:26 x
Very interesting info !Perfect just what I was looking for! "The only limit to our realization of tomorrow will be our doubts about reality." by Franklin Delano Roosevelt.
ジムニー パーツ http://www.kleotur.info/jb23jb33jb43-japan-29.html
Commented by 人気USED MOPED at 2014-01-17 09:26 x
Absolutely pent subject matter, thanks for information .
人気USED MOPED http://goo.gl/TWzXr4
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