恵比寿マスカッツ、解散の報を受けて

 恵比寿マスカッツの来年四月解散が発表されるにいたりまして、ここに思うところを述べる次第でございます。

 解散発表と、衆議院議員選挙ならびに東京都知事選挙が同日であったことは、ある意味でとてもありがたかったのであります。どちらも好ましからぬ結果ゆえに、日を隔てていれば二度落ち込むことになっていたかもしれぬわけでして、このように両方の出来事が重なり、なんだかもうどうでもよくなるような気分になれたのは、不幸中の幸いでございます。

 十六日に行われたコンサートでは、事前に既に「重大発表がある」と告知されており、よもやよもやと幾分の覚悟はあったものの、それが現実化するとは思わず、ただ驚いたのであります。心にぽっかりと穴が空いた気分であります。

 以前より、マスカッツには両義的な思いを抱えておりました。
 ひとつには、もどかしさでございます。
「おねだりマスカットSP」を観ると、なぜこんな企画で、なぜこんな編集で、なぜあのメンバーを差し置いてこのメンバーでと時折いぶかしくなったり、あるいは憤りたくなる面もございました。自分を作り手に加えてくれたならもっと面白くできるのに、もっと映すべきものを映せるのにと思いながら、その週の放送を観終えること多々でありました。
 
 そしてそう思わずにいられぬのは、グループ自体がさらに大きな可能性を秘めていたゆえであります。メンバーの過半を占めるAV女優、その存在。彼女たちには芸人にもその辺のアイドルにも立ち入れぬ領域へと踏み込める、特異な身体性が宿っていた。前の記事で述べましたように、他のアイドルがすべて「聖女」であるのに対して、「売女」という側面を宿していた(逆走!)。
 それは人々の価値観を揺るがせるに十分なものなのであります。アイドルがたたき売りする処女幻想、それを堂々とぶち壊す存在。人々がひた隠しにする欲望、押し込めている欲望を、体現しながら生きる肉体。とかく賤業に観られがちなAV女優を、表の世界へと放つ依りしろ。彼女たちは保守的な秩序に立ち向かいうる存在だったのであります。

 しかし、まるで世間が思い切り反動に傾いたのとリンクするかのように、このたびの知らせが届いた。たまたまの偶然に過ぎぬことでありましょうが、選挙の結果とも重なるような出来事なのであります。

 大変に残念なことであります。自分事以外で、こんなにも残念に思うのは、そうそうあることではございません。

 ことによっては、拡大路線を目指せるのではと夢想しておりました。
 単体AV界には続々と有望なアイドルが生まれている。彼女たちを取り込み、代謝を繰り返すことによって、AV界そのものがアイドル界に殴り込めるような勢力になってくれるのではないかと、夢を見ておりました。そしてマスカッツはその中核を担う恒久機関たりうるのではないかと、夢を見ておりました。闇が光を喰う。その瞬間を希うものでありました。それが、なんたるかな。夢半ばの凶報。

 総合演出を番組開始当初より務め続けたマッコイ斉藤氏は「絶頂期に解散させたかった」と表向きの理由を語ってはおりますが、それはおかしな話でございます。僭越ながら申し上げるに、絶頂期など何も迎えてはおらぬのです。スポーツチームで花形選手が全盛期を終えようと、そのチーム自体は続けられるはずなのです。かつての四番やエースがその勢いを無くすことがあったとて、希志あいの様、瑠川リナ様のような大型ルーキーを今後も取り入れることによって、チームは上昇の可能性を多分に孕んでおるのです。そりゃあ一期メンバーも年をとるし、今後の身の振り方を考えることもありましょう。しかし、だからといって、せっかくつくりあげた尊い中核を、放棄する必要がありましょうか。AKBの可能性はしょせんAKBの発展で終わり。ももクロの可能性はしょせんももクロの発展で終わり。しかし、マスカッツはそうではなかった! その向こうには、もっと大きな可能性があった! 既存の秩序と価値観と勢力構図を一変させる種子がそこにはあった! 肥沃なる大地に芽吹いた瑞々しいみのり、あるいはその中心となる大樹。それを捨てるとはいかなる暴挙でありましょう!

 とはいえ、むろん、そこにはやむを得ぬ事情もあったことでありましょう。ぼくの知るべくもない業界的事情があるのでありましょう。もしも仮に、解散までの期間で、これが覆ることがないというのであれば、ぼくたちは次の種子を探す必要がございましょう。マスカッツの開拓した大地を継ぐ者、その訪れを待ちましょう。日本の政治が党派の枠組みを超え、よりよき未来を実現する日を待つかのごとく、DMM、SOD、アリスJapan、h.m.p、桃太郎映像、KMPなどが結集してユニットをつくり、既存のアイドルを打ち破るような一大勢力となる日を待ちましょう。

 ともかくも、まだすぐの解散というわけではございません。四月以降に新たな枠組みがあり得るし、マスカッツを範とする野心的な仕掛け手が出現するとも限りませんし、あるいはすべてが杞憂に終わり、活動は継続され、「あの頃ぼくらはひどく若かったよね」と今日の日を振り返ることができるかもしれません。

本当に答えが出るその日まで、ぼくたちはともにある日々を愛でようではありませんか。
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by karasmoker | 2012-12-17 00:15 | 恵比寿マスカッツ | Comments(4)
Commented by みけーれ at 2012-12-17 01:10 x
前にもコメントさせて頂いた者です。きっとここに来れば、 今のなんとも言えない空虚な気持ちを埋めてくれるようなことが書いてある。そう思って、サンプラザから帰ってまずここを見に来ました。やっぱり書いてありました。ありがとうございます。

番組自体は前から見てたんですが、本格的にファンになったのはホントに最近、ライブも今回が初めて! というまさにお恥ずかしいくらい昨日今日のファンなので、昔からのファンの皆さんに比べれば大したショックではないのかもしれませんが・・・2学期の半ばに好きになったコとようやく初デートにこぎつけたら、帰りに「3月で転校するの」って言われたような心境です。

その性格上、そもそも「絶頂期」なるものは迎えようがないユニットだったよなあ、と思いつつ。
Commented by karasmoker at 2012-12-18 00:16
コメントありがとうございます。
マスカッツの最大の功績は、光に満ちたアイドル界と、闇の中にあるAV界との間に、大きな風穴を開けたことであります。
 この風穴が封じられぬよう、次なる可能性を見定めていきたく思うのであります。
Commented by いち at 2012-12-29 05:16 x
初めてこちらのサイトを拝見致しました。
読んでいて実に同感させて頂きました。

AV女優達がテレビの前で体を張り一生懸命笑いを取る姿は、
今テレビで脚光を浴びている超人気アイドル達の何倍も楽しく、
その姿に勇気付けられたような気がします。

彼女達がその内、表舞台に出て活躍してくれることを願っていたので
今回の解散はとても残念です。

>>闇が光を喰う

この言葉、良いですね。
今のAV界にはそれだけのパワーを持ってると思います。

4月からまた新たな形で、彼女達が活躍出来る場が生まれることを私も願います。
Commented by karasmoker at 2012-12-29 23:42
 コメントありがとうございます。
 DMMの英断を期待するところであります。
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