『ゾンビアス』 井口昇 2012

ばかばかしさの果てまでも。
d0151584_18105136.jpg


ロメロゾンビの終焉、ということについて前回触れましたけれど、正確には終焉というよりも、「完全なベタ化」というほうがいいのかもしれません。つまり、出てきて怖い存在ではもはやあり得ず、それをいかに遊ぶかのほうに時代は動いているわけですね。『ショーン・オブ・ザ・デッド』によってそれを感じましたし、『ゾンビランド』もそう。あとは『デッドライジング』なんかはぼこぼこにされる存在になり果てている感もある。各種ゲームでは銃器でばんばん撃ち殺すだけの存在という色合いが強くなってきて、おいしいところはモンスター的なボスキャラに持って行かれたりしている。こうなってくると、「完全なベタ」であるロメロゾンビはそれをいかに調理するかという素材になっていまして、本作ではもうとうとうウンコまみれになってしまいました。
d0151584_1811435.jpg

 副題が「TOILET OF THE DEAD」の本作では下ネタが前回です。ウンコだのオナラだのが大好きな小学生あたりがよろこびそうな話ですね。ただ、いざ児童に見せればトラウマ映画化する可能性が高いので、親御様は配慮が必要であります。
d0151584_18115825.jpg

 筋立てとしてはゾンビものの定番です。山奥に出かけた若者たちがゾンビに襲われるというのが骨格。でも、そのゾンビはくみ取り式の便所の中から出てきたりするため、糞まみれになっているのです。彼らは寄生虫にとりつかれているのですが、寄生虫はなぜか尻から姿を現すのであり、ゾンビたちは尻を向けて襲ってきたりするのです。AVはスカトロ畑の出身たる、井口昇監督ならではのゾンビものであります。
d0151584_18121443.jpg

こう書いていくとなんと下品なのかしらと眉をひそめられそうですが、一方ではアイドル映画という側面もあって、主演の中村有沙の好演が光ります。『片腕マシンガール』の八代みなせもそうでしたが、井口監督は実はアイドル映画の優れた作り手であるなあと思いますね。とても可愛く撮れています。AVというのはある意味アイドル映画みたいなものですから、彼の本業と言えるのかもしれません。で、本作では本当にこの中村有沙さんが頑張ったなあと思いますね。正直、十八かそこらの可愛い女の子であれば拒否したくなるであろう場面もあるんですが、ぜんぜん逃げていないのです。とても偉い。何の必然もなく胸を晒しているんです。ぼくはその心意気に胸を打たれます。
d0151584_18122721.jpg

 これはAV女優を愛でるのと通じているんです。やっぱり、世間的には日陰の存在になるんですよ。で、広告だの何だのできらきらしている女優やらモデルやらのほうが憧れの眼で見られるわけじゃないですか。でも、違うよねと。彼女たちのほうがもっと晒すもん晒してぶつかってるよねと。
d0151584_1813388.jpg

 本作の中村有沙もそうです。世間的にはね、決して本作は大衆の支持を得るようなもんじゃないというか、言ってみりゃきわもんの部類ですよ。そりゃあオシャレなドラマだの純愛映画だのに出ているほうがずっと綺麗でウケもいいでしょうよ。でも、それが何だと。こういう映画で裸体を晒し、必然もなく片方の乳首を晒しながら戦い、あまつさえオナラでぶっ飛ぶような被写体となっている。その姿に打たれますよ。現在二十歳かそこらの彼女が今後どういう芸能活動をしていくか知らないし、その先で本作があるいは黒歴史的な扱いを受けることがあるかもしれない。冗談じゃないよ。これは一級のアイドル映画ですぜ旦那。
d0151584_18124875.jpg

 アイドル×ゾンビ映画の本作ですが、クライマックスではゾンビはやはり役目を終えてしまい、エイリアン映画になります。これはゾンビの発想としては別段目新しくはないですね。ゾンビをゾンビたらしめているのは寄生虫で、その寄生虫には親玉がいてそいつがボスとして立ちはだかるというわけです。で、寄生虫は戦隊ヒーローものに出てくる敵みたいになります。フェアに言えば正直な話、CGがすごいというわけでもなく、ああ、今の日本のこの規模の映画だとこれくらいのクオリティだよな、ううむ、というもんだったりはするのですが、有沙ちゃんがすごく頑張っているのでそれはもういいです。それにハリウッド的なやりかたでやっても太刀打ちは難しいのだから、そこはわりきって「変な表現で攻めてやる」という心意気を感じます。
d0151584_18131644.jpg

最後に敵として立ちはだかるのは優希という人で、この子と有沙ちゃんのキャットファイトもまた見物です。アイドル映画の醍醐味のひとつに、このキャットファイトというのがありますね。ここがきっちりつくられていると観ていて面白い。『バトルロワイアル』の灯台もいわばそういうことです。イメージだのなんだのがあるし実現が難しいものではあるんですけど、そろそろネタ切れ感が出てきているAKBなどは、キャットファイトイベントを仕掛けてみると面白いかもしれません。
d0151584_18133135.jpg

d0151584_18134695.jpg

他の役者の人、特に女優の人たちはなんというか、ひとつたがを外したなと思いますね。そこがとてもいいと思う。映画の中ではそれこそオナラをしまくるんです、ぶーぶー。あとは和式便器にまたがってお尻を晒したりね。そんなのって、女性としてはやっぱり嫌な部分じゃないですか。ある意味、性的な場面を演ずるよりも嫌なところがあると思うんです。でもそこを受け入れて演じきっていますからね。中村有沙ちゃんにいたっては、最後オナラのロケット噴射で空を飛ぶんです。昔の少年ギャグマンガみたいなことになります。こういうね、馬鹿すぎて誰も実写ではやろうとしなかったようなことを真っ向からやっているところ、そしてそれに挑む女優の様というのはとても感動的なものがあります。『片腕マシンガール』が「なんでもありの果てまでも」ならばこちらは「ばかばかしさの果てまでも」。こういうものは応援しなくてはいけません。
d0151584_18135419.jpg

 ウンコだのオナラだのそんなの嫌だな、若い女性がそんなのをしている姿は観たくもないなと思われるかもしれませんが、誰もが避けてきた部分に挑む様は感動的なのです。園子温監督が持つ魔法とはまた違う、井口昇マジックを、またも見せて頂きました。
[PR]
by karasmoker | 2013-07-13 00:00 | 邦画 | Comments(5)
Commented by pon at 2013-07-13 12:46 x
こんにちわ。まだ見てないのですが寿司タイフーンものは皆あるので探して見てからコメします 暑いので体調にきおつけてご自愛ください
Commented by karasmoker at 2013-07-14 00:01
コメントありがとうございます。ご自愛くださいませ。
Commented by pon at 2013-07-19 15:20 x
こんにちわ。娘が明日から夏休みなので急いで見ました(笑)ヒロインがあそこまで体を張ってるとは正直おもいませんでした どうやったら普通のグラビアアイドルをあんな風に転がせるんでしょうか管理人さんの言う井口マジックですか聞いてみたいです あの博士の娘役の子の芝居は巧かったですね びっくりしました 「だから健常者はきらいなんだよ!」のセリフはシビレました 最近の井口物では評判がいい「電人ザボーガー」の倍ぐらいよかったです 正直、ザボーガーはちょっと退屈したんですよね 画面撮りのムカデ人間風のカットは僕が見たBDではカットされてたみたいです 輸入BDで見たんですけど日本版ではモザイクとか無かったんでしょうか?ああ、私事ですが来週から3週間ぐらいネット環境の無い所に行きますので帰ったら又寄らせてもらいます では。
Commented by karasmoker at 2013-07-20 21:19
コメントありがとうございます。
井口監督がスカトロAVというゲテモノ畑の極北みたいなところからやってきた人なので、キャストにも一種の心構えができるのでしょう。博士の娘の啖呵は作品に締まりを与えましたね。ああいう向こう見ずなまでの啖呵を切らせるというのは、ある意味古い日本映画に通じるところがあります。ザボーガーは観ておりませんで、そのうちヒーローものを観たい周期が来たら、という感じであります。
Commented by のりちゃん at 2013-08-04 00:33 x
ゾンビアス観ました。
井口監督の映画は面白いですね。
次はデッド寿司を観たいです。
←menu