『ジュブナイル』 山崎貴 2000

コドモムケニツキ、ギャクあーるシテイ。

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しんぺーさんよりリクエストいただきました。ありがとうございました。






いまや邦画ナンバーワンヒットメーカー、あるいはセルアウトビデオメーカー、山崎貴監督の作品です。ぼくは『三丁目の夕日』の一作目しか観ていませんが、二作目を観ようと思う映画ではなかったです。逆に言うと、近頃のものなどもさっぱり観ていませんので、嫌いな監督だという意識もないです。セルアウトな人なのだな、というイメージだけがあります。

 そんな山崎監督の初長編作品です。タイトル通りの子供向け作品ですね。「あの夏の思い出」的な風合いを持ちつつも、VFXをふんだんに取り入れています。おそらく元ネタにあるのは『E.T.』『スタンド・バイ・ミー』『バック・トゥ・ザ・フューチャー』『ドラえもん』『ターミネーター2』あるいは『ボディ・スナッチャー』あたりでしょう。好きなものをどんどん盛り込んでやれ、という感じを受けます。
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 テトラという小さなロボットが出てきて、それをめぐるあれやこれやが展開されていくのですが、このロボットをすぐに出してきたのは美点ですね。序盤の序盤から奇異な仕掛けとして取り出す構成です。嫌な見方をすれば、あのロボット無しでは数分たりとも「ジュブナイル」を描けなかったんだろうな、とも言えるのですが、まあそれは言いっこなしです。
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投げやりな言い方になりますが、子供が喜んで観たのならそれでいいんじゃないでしょうか。少なくとも大人が観て、自分のジュブナイルを顧みてしまうような作品ではありません。実際にジュブナイルを迎えている子供たちが喜べばそれでいいのです。だからちょっと難しいところですね。これについて四の五の言うのはよくないのかな、という気分にさせられます。「子供向けなのだから」の衣ですべて守っている感があります。それを言われちゃあこちらには言葉もありませんで、この手の作品は「逆R指定」にしてもよいのだと思います。「大人の文句はすべて無効」とする逆R指定です。

 あえてそれを取っ払って言うならば、要所要所に脚本的不備がありますね。話が加速する前半から中盤はそれでも楽しく観ていられたのですが、いろいろなことが明らかになるにつけおかしいなと思う部分が出始め、「でもほらそれはさあ、子供向けだし」の鎧がくっきりとしてきます。後半で大きく点を落としている感じが強いです。
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 本作における脚本的不備は、わりと簡単な話です。脚本やお話というのはひとつの作り方として、「ポイント」があるわけですね。主人公が新たな出会いを果たすポイント、窮地に陥るポイント、勝利のヒントを見つけ出すポイント、逆転して勝利に向かうポイント。書く側はそれを念頭に置きながら、そのポイントの間に肉付けを行っていき、ひとつのお話しが出来上がるわけです。そしてこの作品は、そのポイントの間の持って行き方がものすごく雑なんです。

 たとえば、エイリアンが迫ってくる場面。主人公の味方である香取慎吾に化けて襲撃してくるのですが、主人公たちは液体窒素によってエイリアンを凍らせます。ほっと一息ですが、この後が酷いのです。後のシーンで香取慎吾は、あろうことか自分たちを襲ったエイリアンと酒を酌み交わしているのです。「話してみればいいやつだ」みたいなことを言って解放しているのです。それで、直後に案の定、友達の女の子が攫われてしまうのです。
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 おわかりでしょうか。主人公が窮地を逃れる→主人公が大きな窮地に陥るという二つのポイントの間が、ものすごく雑なんです。

他にもあります。謎のロボット、テトラがあるとき突然消えてしまいます。その後、みんなが探し回るのですが、なかなか見つからない。テトラは何をしていたかというと、工場みたいなところに出掛けていって資材を持ち出していたのです。そして、すぐさま大きな戦闘ロボットをつくりだして、主人公を救いに来るのです。この辺の雑さはかなりえげつないです。いろいろなことの整合性が皆無です。あの工場にいる松尾貴史はなんで寝ぼけながらテトラに従ったのか、それに第一、あんなに小さなテトラがごくわずかな日数の間にあんな大きなロボットを作り出すなんて一体どうやって……。
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さあ、みんないっしょに!

「まあまあ! 子供向けだし!」

…………。
…………。
 エイリアンはね、地球の水を奪い去ってしまおうみたいな遠大な計画と、巨大な要塞で攻めてきたんです。でも、なんかプールの水一杯分くらいのことで、最終的には大要塞が一瞬で壊滅するんです。だってそれおかしいじゃん。あんな巨大な宇宙戦艦みたいなやつで、しかも水を吸い上げるってんだから耐水性だってそれなりにあるはずで……。
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さあ、みんないっしょに!

「だって子供向けだし!」

…………。
…………。
 大人になったくだりもね、もっと見せ方があったんじゃないかなって。映画の随所に数秒程度でいいからサブリミナル的に織り込んだりとか、吉岡秀隆の出方は映像じゃなく声のほうがよかったんじゃないかとか、あのくだりにあんなに時間をかけて再現ドラマみたいなもんを見せるくらいならいっそのこと。
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さあ! さあ! みんないっしょに!

 子供向けですからね。そういう細かいことは全部どうでもいいのですね。
 最終的にそこで逃げられる感がありますね。強いこだわりとかはなくて、それでも形になっているなってものをつくりだす。監督の原形がここにあります。
思い出したのは『エンタの神様』の五味プロデューサーのやり口です。あの番組はコスプレとあるあるの組み合わせで芸人を消費したり、無駄なテロップを使ったりして玄人筋には悪評判の番組でしたが、プロデューサーは強気でしたね。数字を取っているし、玄人よりも女子高生や小学生の人気者をつくりだせばいいのだってな具合で。それに近しい感じがびんびんします。スポンサー企業の宣伝を辞さない当たり、山崎監督はやはり、「セルアウトビデオメーカー」として一級であるなあとつくづく思います。

後の記事になりますが、『クレヨンしんちゃん』とも違うんです。やっぱり実写とアニメでは端から違うわけですね。アニメの実写化がことごとく駄目になるのは、そこがどうしても大きいわけです。

だから、ほら、ね、唇が寒いのです。逆R指定とはこういうことなのです。
 子供が楽しんだのであれば、こんな腐れた大人がどうこう言っても仕方ないのです。
 ただ、作品のタイトルは『ジュブナイル』ではなく『フォー・ジュブナイル』がよかったんじゃないでしょうか。この「フォー」は子供たち四人の映画という意味でfourであり、「どこまでも子供のための作品」という意味で、forなのです。

 山崎貴監督には今後も、日本映画界の経済成長のため、セルアウト路線を突っ走ってもらいたいと思います。


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by karasmoker | 2015-01-20 00:00 | 邦画 | Comments(4)
Commented by pon at 2015-01-20 20:09 x
こんにちわ。 再会おめでとうございます 懐かしい映画ですね 山崎貴はこの映画と次作のリターナーのインパクトが衝撃的でよく憶えてる監督です この映画(リターナーも最近見直したらなんてことなかったです)は当時映画館で見てぶったまげないと評価しようがない映画だとおもいます 2000年に国産でこれを作ったパイオニアとして僕は評価してます ジュブナイル(タイトルではありません)だと思って舐めて見たら国産VFXでここまでやってくれた しかも子供向け映画で(笑)という驚きがありました パクリばっかですが 次作のリーターナーで食う物も食えない未来から来たヒロインがペペロンチーノを食って涙目になる鈴木杏にぐっさりやられました やはりこういう映画は当時新しい手法を駆使して驚かせて貰った思い出無しには見れないですね 管理人さんがいまさらじゃんっていうのもよーくわかります 今となっては評価しにくい監督さんですがいかにも二流な「BALLAD 名もなき恋のうた」なども実は結構味があって好きな映画なのです
Commented by karasmoker at 2015-01-21 01:03
コメントありがとうございます。
『リターナー』はもうすぐ取り上げることになっています。
そちらについても本作についても、手法以前の部分で引っかかるところが多いです。舶来の食材を調理するのはいいけれど、まずは米をしっかり研げよ、まずは野菜をしっかり切れよと言いたくなる部分が多いのでございました。
Commented by しんぺー at 2015-01-22 22:49 x
記事を書いてくださってありがとうございます^ ^
ジュブナイルはほとんどレンタルされてない作品なので、きっと取り上げていただけないと覚悟してただけにとても嬉しかったです。

この映画は私が今でも邦画で一番好きな作品です。
それは、私が小学生のころに見れたからだと思います。
だって、子供向きだから(笑)
多感な時期にこの作品に出会えてよかった( ̄▽ ̄)
今でも大切な作品です。
やはり、子供の頃の衝撃を超えることはなかなかありませんよね^ ^
私のナンバーワンは邦画ではこの作品、洋画ではバックトゥーザフューチャー、アニメではビューティフルドリーマーです(笑)
この3作品を超える作品を探すために、未だに映画を毎日見続けています。
機会があれば、管理人さんの『今の自分が思う』ナンバーワン映画、邦画、洋画、アニメ部門を教えていただけたらと思います^ ^
のーんびり、待ってます(笑)
Commented by karasmoker at 2015-01-23 00:15
コメントありがとうございます。
本作はレンタルできなかったので、某動画サイトで観ました。
子供の頃に観たものは原風景として焼き付くので、出来うんぬんよりも体験として残るのですね。そのとき、評論や他人の感想というのは無意味なものであろうと思います。
 ぼくのナンバーワンは『バトルロワイアル』ですが、人になんと言われようと全部弁護できますからね。『ジュブナイル』の感想を書くべきは、ぼくではなくきっと、しんぺーさんだったのでありましょう。
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