『ジュラシック・パーク』 スティーブン・スピルバーグ 1993

さあ、恐竜を見せてやるぞ、という心意気が潔い。
d0151584_17051784.jpg
zekiさんよりリクエストいただきました。ありがとうございました。






言わずと知れた名作ですけれども、当時のぼくと言えばまるで映画の評判なんてものは知らず、田舎ゆえか本作を知ることもなく、同時期公開の『REX 恐竜物語』(監督・角川春樹、主演・安達祐実)のほうを劇場に観に行くなどしていたものだなあと、思い出しました。しかしまあ、角川春樹もえらいタイミングでぶつけてきたもんですね。公開2週間後にこちらの作品が日本公開なので、どうやっても比べられます。きっと、一瞬でも早く出しておかないといけなかったのでしょう。と、当時は言われたものでしょうね。

今観てみると、90年代の映画というのはまろやかな感じがしますね。これは90年代作品に感じる特有のものです。70年代は乾いていて、80年代はぎらついてる。ゼロ年代以降はソリッドな印象を受ける。そんな中で90年代の映画、特に洋画はまろやかさを帯びている気がします。
d0151584_21173409.jpg
あらためて観てみると、とても丁寧につくっている作品だなあと思いますね。恐竜がいっぱい出てきてインフレを起こしているわけでもなく、要所要所で出てきて驚かせる感じです。おもちゃ箱をひっくり返したような代物、調味料バリバリの刺激物にはしていないんですね。パニック映画の側面はもちろんあるんだけれど、「もしも本当に恐竜を復活させられたら……」という夢のほうに力を入れている感じがする。
d0151584_21171672.jpg
恐竜というモチーフはそれだけで魅力的です。考えてみるに、人類と恐竜の付き合いというのは、妖怪やなんやよりも短いんですよね。大昔の人は恐竜というものを知らないわけで、なんだか不思議な感じがします。それでいていざ発見されて、化石の模型とかがつくられると、こんな生き物が実際にいたのか……という気分にさせられる。実際はどんな感じなのだろうと観たくなるのは道理で、この映画もスピルバーグ作品中、最も売れた作品らしいです。

 余談ですが、ドラえもんの劇場長編第一作は『のび太の恐竜』です。ドラえもんという未来からの使者と、古代の生き物を結びつけることから始めたのは、とても素晴らしいと思いますね。ピクサーは『トイ・ストーリー』で西部時代と宇宙時代を結びつけているけれども、こちらのほうが時間尺的には大きいのです。さすがドラえもんです(なんじゃそら)。
d0151584_21171803.jpg
そろそろお気づきだと思うんですけれども、いまさら本作について深く語るのはなかなか難しいもんがあります。あえて注文をつけるなら、これは原作があるので仕方ないですが、登場人物配置がハリウッド的合理性をやや欠いている感はありますね。あの数学者のおっさんが担う物語的役割は弱いし、でぶちんの暗い野望みたいなもんも結局はあまり効果的には使われません。まあ作品自体が細かい脚本的な精密性よりも、恐竜を見せたい映画ですから、それはそれでいいです。
d0151584_21172255.jpg
 しかし、ハリウッド的配慮も利いています。原作を読んでいないのでどういう異同があるのか知れませんけれど、子供をメインに据えているのがそうですね。やっぱり子供を置いておかないと、この映画はいい意味でのまろやかさが出てきません。主人公のおっさんが最初「子供嫌い」という設定でありながらも、最終的には子供を守る男になっているというのも、物語的な変化として機能しています。
 一方で、ローラ・ダンの使い方がもうひとつやな、というのもないではないですね。彼女自身の成長や変化みたいなもんはないですからね。おそらく今のハリウッドだったら、下手な扱いとしてはねられるでしょう。黒人の所員のおっさんの末路も、あまりに投げやりな感じがあります。
d0151584_21172056.jpg
うん、今のハリウッドメソッドには反しているな、という部分が割とありました。別にいいとか悪いとかじゃないんですけど、ああ、そうやって処理するんだとは気になった。この手の映画において、「説明」というのはできるだけ省いたほうがいいはずなんです。いや、映画全般そうですけれど、やはり説明というのは作者の都合なんですね。ここで説明しておかないとわからなくなるし、という作り手側の事情があって、やむなく「説明」というものが挟まれる。

 そこをうまくかわしている映画というのは、観ていて気持ちのいいものです。
 ぱっと思いつくのがマイフェイバリット、『バトル・ロワイアル』です。あの映画は序盤で、宮村優子の説明ビデオが入るんですけど、決して説明がだらだら続かないように、合間合間にアクションを入れているんです。北野が「藤吉! 私語してんじゃねえ!」とナイフを投げるのがそのひとつですね。

こちらの映画では、わりとがっつり説明しています。アニメを用いて施設紹介をするシーンと、会議室みたいなところで話し合うシーンです。前者はまだしも、後者はアクションのないくだりが五分程度続く。こういうのって、勇気が要りますよ。しかも第一ターニングポイントを経過した後だから、本来ならアクションをもっと見せたい場面のはずなのに。
d0151584_21171142.jpg
 あの部分だけは少し疑問です。せっかくなら恐竜たちの姿を見せつつ(つまりアクションを失わない状態で)、会話させてもよかったはずです。ジ・エンターテイナーたるスピルバーグにしては、やや説明的な場面で気になった。後半のパニックの重しと言えばそうなんですけど、うん、どうでしょうか。

今まで映画の見方についていろいろ考えてきたんですけど、最近では脚本的な部分に注視するようになっています。とりわけ配置と機能についてですね。ここにこれを配置するか、ああ、このキャラクターの機能はこれこれで、という部分を観るようになっています。
ですので、「なんだかよくわからないことを言っているな」と思われたらすみません。
d0151584_21173658.jpg
 いろいろ書いてきましたけれど、当時としてはやはり画期的な作品ですね。今でこそCGには慣れきってしまったし、遺伝子や何やの設定は使い古されたものになりましたけれど、1993年の夏にこれを劇場で観ていたら、確かに興奮していただろうなと思わされる作品です。いつかタイムマシンができたら、『REX 恐竜物語』を観に行っていたぼくに、本作を教えてやりたいと思います(タイムマシン使ってまでやることか?)。
今日はこれまでに。


[PR]
by karasmoker | 2015-02-09 00:00 | 洋画 | Comments(2)
Commented by zeki at 2015-02-16 17:42 x
二本続けて語りづらい作品ですみませんでした!

恥ずかしながら『ジュラシック・パーク』は自分の一番好きな作品です。あのテーマ曲やあの咆哮を耳にするだけで軽くエクスタシーに達してしまう始末です。まー要するに恐竜好きなのです。

ところでこの作品、子供の頃から自分は吹き替え版で親しんでおりました。件のレストランで食事をする場面、確かにストーリー上は地味で急かしたくなるシーンかもしれませんが、数学者マルコム役で大好きな声優(というか、この作品で好きになった)大塚芳忠さんの弁舌が堪能できるので、あの場面さえも自分は好きなのです。

コメント遅くなってすみませんでした。
Commented by karasmoker at 2015-02-17 00:56
コメントありがとうございます。
『ジュラシック・パーク』に子供の頃出会えたのは、世代的幸福であるなあと思いますね。
←menu