『復讐少女』 ポール・ハイエット 2012

おもしろかった、以上の感想を出すのがしんどいです。
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ponさんよりオーダーいただきました。ありがとうございました。




 原題『The Seasoning House』
 売春宿に閉じ込められている少女が、追い詰められて牙を剥くお話です。
90分少々と短く、お話のサイズと時間尺が合っているのがいいですね。全体を通して言うと、このサイズのものをきちっとつくったという感じがします。

 と言いつつも、前半45分くらいはかなりだるいです。
 主人公は聾唖の少女で、売春はさせられずに世話仕事をやらされています。同じく閉じ込められている女性たちに覚醒剤を打つなどの汚れ仕事もやらされていて、不遇の状況が長々と描かれます。主人公の不幸な過去なども描かれますが、わりとだるいんですね。
 うん、この状況はよおくわかった、次に行ってくれと言いたくなる。
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 その辺はわりとスマートさに欠ける。いちいち述べるのは面倒ですが、こっちの感覚よりワンテンポ遅いというか、余計なやりとりを一個挟む感じがあります。それでちょっと水増ししている感が前半は拭えません。どうせ前半に時間を割くなら、あの囚われの売春婦たちをもっと描いてもよかったようにも思いますね。一人の女性と仲良くなるんですが、他の人も入れておいたら立体的になったのにな、とは思います。いや、別にしなくてもいいんですけど、とにかくだるいです。前半は。もっとなんかしてくれよというのが続きましたね。はい。
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 この映画の肝は後半ですね。
 聾唖の少女が軍人たちを相手に逃げ回る、という部分がメインディッシュ。
 むきむきの軍人が女性を犯しているときに、少女が最初の攻撃を仕掛けるのですが、待ちかねた展開であることもあって、このシーンは濃密に映りました。軍人の野獣っぽさ、巨人っぽさがいい感じで出ているシーンだし、なかなか死なないのもいい。やっぱり監督はこの後半を撮りたかったんですね。というか、監督自身、前半はどうでもいいんじゃないでしょうか。さあ、ここからやったるで感が漲ります。 
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 小ささを活かしてピンチを切り抜けていく、というのがひとつの醍醐味で、そこはおおむねよくできていたと思います。一方、聾唖の設定は途中からかなりどうでもよくなっている感じがしますね。前半ではその描写に気を遣っている感じもありましたが、後半では「小さくか弱い彼女がどう切り抜けていくのだ」というところに意識が行っていて、「聾唖ゆえに、観ているこちらがはらはらする」という部分はほぼなかったように見受けます。
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 あと、「軍人が適度に無能」というのも少し冷めるところではありました。この手の映画は、ガチでやってくる相手とどう渡り合うのかがはらはらポイントになるのですが、拳銃を落っことしてみたり、闇雲な発砲をしてみたり、軍人が適度に無能なんですね。館の主人が味方っぽく振る舞うというのはあるんですけども、何というかその辺の設定には深みがないです。

あまり多くを望まず、というか、深夜に何となく眺める映画としてはよい水準の作品であるなあと思いますね。クライマックスに館を出てからも、場面を二転三転させていくのには意気込みを感じるところでした。惜しむらくは最後の工場の場面。あそこは廃工場にしたほうがいいと思いますね。そのほうが追っ手の軍人の、絶望的な末路が予想できるわけですから。あと、最後に少女が駆け込むのが中盤で出てきた医者の家なんですけど、あれはどう終わらせたかったのかよくわかりません。あの医者がどういう人なのか、もうひとつよくわからないので、悪魔の家に飛び込んでしまったのかどうなのか、ちょっともやもやする。
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感じたのはそんなところですが、ここでひとつ、申しておきたいことがあります。
 オーダー制で、自分ではセレクトしない作品を薦めてもらって、というスタイルでやっているんですけど、作品によっては「それほど語り甲斐がない」と感じられるものもあるんですね。いや、今のは少し偉そうな言い方なので言い直すと、「ぼくに語らせてもらっても、それほど気の利いたことは言えない作品」というのがあります。今回のがそうで、我ながら本当にただの感想文やなあと恥ずかしくなってしまうんです。映画秘宝的な、B級ものに偏愛のあるような人ならもっと語れるのでしょうが、どうにも我ながら書いていて興奮がない、発見を得られないというのがあるんですね。

 ですからどうか皆々様に置かれましては、今後お薦め頂く際は、「この映画はこいつが食い付きそうだぞ」「こいつはこのタイプの映画なら喜んで語るだろう」というのを念頭に置いてもらうと大変嬉しいです。お互いに実りあるやりとりができるような気がします。逆に、「たまたま観てみたらちょっと面白かったし、観てみてよ」というタイプのものについては、すみません、たぶんあまり興味が湧かないんです。何でも構わないというのが建前ではあるのですが、その辺はちょっと、汲んでくれるとありがたいです。

それでは、こんなところで。


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by karasmoker | 2015-03-14 00:00 | 洋画 | Comments(2)
Commented by pon at 2015-03-15 02:31 x
こんにちわ。ははは ごめんなさいね 語りにくいですよね そりゃそうです 超B級ですからねー 以前に何か好きな物はみたいな問いかけをしたら「ドンと来い」みたいな事をおっしゃっていた気がしたのでつい甘えてしまいました 基本クソ映画マニアで新作好きなものでハードルがメチャ下がっちゃうんですよ(笑) この映画って「復讐少女」と言いながら全く復讐しないんですよね 最初のハゲのオッサンを刺したのは目の前で殺されそうになった友達を助けるためでした 後は勝手に仲間割れおこしたり相手が勝手に潰れてくれたようなものですよね んで、最後にあれだけメチャメチャにされた仇を前にして顔に落書きしてから「イーッ」みたいなので終わりにしてやるところがカワイイじゃないですか 嬲り殺しでも蒸し焼きでもなんでも出来たのに 普通なら最悪にぶっ殺して終わる所ですよね これって新しいって思ってしまったのですよ あそこが5億点です(笑) 僕らみたいなZ級マニアはそういうちょっとした所に反応してしまう変な映画マニアかもしれません この次はもうちょっと語りやすい物をおすすめしますのでお許しください
Commented by karasmoker at 2015-03-15 16:28
コメントありがとうございます。
ラストで敵を殺さないところは確かにいいですね。あれはカワイイというよりも、あの絶望的な状況で生殺しにしてやろうという彼女の残酷な企図として、ぼくは受け取りました。そしてそれは、動けない状況で殺されていった女性たちと同じ苦しみを、あの軍人に味わわせてやろうということでもあるのでしょう。だからこそ、廃工場にしなかったのが疑問です。
 
 オーダーは何でもいいのですが、できるなら「この作品について、こいつはどう反応するんだ?」と試してくれるようなものだとありがたいです。B級作品は基本的に好きですが、特にバイオレンス系の場合、おしなべて「娯楽以上の深み」を感知できないんです。知的刺激を与えてくれるようなものだと、いろいろお話しできそうでよろしいかなあと思います。
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