『世界中がアイ・ラブ・ユー』 ウディ・アレン 1996

ミュージカルも効果的な、上品なラブコメディ。
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 ウディ・アレン、ジュリア・ロバーツ、エドワード・ノートン、ゴールディ・ホーン、ナタリー・ポートマン、ドリュー・バリモア、ティム・ロスといった、錚々たる布陣によるアンサンブル型ラブコメディです。ミュージカル・ラブコメディですね。大家族ものでひとりひとりの物語を要点のみ押さえ、ぽんぽん回していく。テンポのよい快作でありました。

大きな筋となるのは、①ウディ・アレンとジュリア・ロバーツの不倫恋愛、②エドワード・ノートンとドリュー・バリモアによる婚約恋愛、そこにナタリー・ポートマンらによるちょっとした恋物語の顛末や、いかれた元服役囚、ティム・ロスのドタバタ劇などが織り交ぜられます。物語にはほぼ絡まないけれど、家で独りだけ共和党支持で、政治的なことばかり喋っている長男ルーカス・ハースが面白かったですね。脇役の支えもしっかり効いている。

 映画には、話を動かすきっかけのポイント、第一幕と第二幕の転換ポイントなどがありますが、そうした要所にミュージカルシーンをきっちり配置している。この要点を押さえているのは非常に大きい。スムーズな進行のための大きな効果を上げています。ミュージカルというのは、「感情の頂点」を凝縮して表現するときにも有用で、この映画で言えば②にまつわる「恋の実り」の様子を描く際、その効果が顕著です。静かな高級宝石店、病院などの場面で用いることで、感情の高ぶりが劇的に演出されています。

一方、恋愛ものにおいては障害の存在がとても重要です。障害があるからこそ物語に緊張感が生まれるわけで、前半では①がそれを担う。ウディ・アレンはジュリア・ロバーツを口説き落としたい、ここでの苦闘がひとつめ。そしてジュリアには旦那がいる。これがふたつのめの苦難。障害を配置することで、恋の危うさが演出されます。もちろん、ウディ・アレンのコミカルな演技や台詞回しが、面白みを引き立てます。

 いろいろなことがうまく行くのが中間点まで。そこで「凶兆」として出現するのが、犯罪者のティム・ロス。②の恋愛を、坂道へと転がしていく。最終的にはドリューを銀行強盗にまで巻き込んでしまい、一度どん底をつくる。また、ナタリー・ポートマンの失恋、じいちゃんの死など、よからぬ気配が映画に立ちこめていく。

 最終的に、②は関係を取り戻すが、①は破綻してしまう。破綻の救済として、ゴールディ・ホーンとウディ・アレンの関係修復がある。クライマックスで二人のミュージカルが出てくるので、できれば前の段階で、この二人の関係をもっと濃く描くべきであったとは思いました。ゴールディ・ホーンは劇中、冒頭部以外はほとんどウディ・アレンと絡まないため、クライマックスで二人が踊っても、物語的カタルシスは決して大きくない。また、②の恋愛にしても、エドワード・ノートンの努力無しに関係が修復してしまうため、カタルシスが弱い。テンポの良いコメディとしてとても面白かったのですが、①と②の筋に関しては、お話としてのふしぶしを、もう少し固めておくとさらに楽しかっただろうなという感じはします。①のほうは、ジュリア・ロバーツがどうして旦那のもとに戻るのか、言葉で語ってしまうだけなので、その点の説得力が減じてしまっています。

 とはいえ、大家族の賑やかさと、タイプの違う二つの恋愛を、愉快なトーンで描いており、とても楽しい作品でありました。お薦めです。

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by karasmoker | 2016-05-23 00:00 | 洋画 | Comments(0)
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