『アカルイミライ』 黒沢清 2003

これが好きだという人がいるのはわかるけど、僕にはぴんときませんでした

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黒沢清作品で言うと、初めて観たのが『ドッペルゲンガー』で、あとは『CURE』『叫』しか観ていなくて、今回が四作目です。今のところ一番好きなのは『ドッペルゲンガー』ですね、永作博美が大好きであるということもあって。

黒沢清の映画というのは、ちょっとコメディというか、笑いが入っているなあと感じることがちょいちょいあります。『ドッペルゲンガー』でいうと、あの過度に実体的なドッペルゲンガーの言動はちょっと面白いですもん。『叫』にしたって、葉月里緒菜が出てくるところって、松本人志のコント的文法に近いものがある。笑いを狙ってはいないんでしょうけど、僕にはそういう風に見えるんですね。今回の『アカルイミライ』にしてもそうなんですよ。笑いは狙ってないんだろうけど面白い、というところがいくつかある。間やカットという要因もあると思います。

そのひとつが、名優笹野高史の工場長の言動ですね。あのおっさんはちょっと面白いんです。マモルの部屋に来て寿司を食い、自分の昔話を始めたり、帰るのかと思いきや卓球の試合を見始めたり。それを「早く帰れよ」臭ぷんぷんで眺めているマモルとユウジ。すごく面白いんです。笑いになっている。笑いを狙っているのかもしれません。卓球の試合というのがひとつポイントで、あれがサッカーとか野球ならそうじゃないんですけど、卓球ですからね。テレビ中継のスポーツとしてはとてもマイナーです。「なんで卓球やねん」と言いたくなります。だから、あの工場長が殺されたときはちょっとショックもありました。

浅野忠信演じるマモルが、工場長夫妻を殺します。ユウジが殺そうと出かけたときに既に夫妻が殺されており、それがマモルの犯行だとわかるわけですが、どうも僕は最近、こういうのに飽き始めているのかもしれないです。

どうも、死とか殺人とかいうのが、映画界に多すぎる気がしてね。それをすると観客の引きはいいんですよ。わかりやすく衝撃的だし。殺人事件ありきの探偵ものとかならいいんですが、それ以外で死を絡ませすぎるきらいがあるような気がして。あのー、もっともっと、特別なものとして描いてほしいなあと思うんです。それはまあ死にオチに対する嫌悪感でもあるんですけど、こうした、純文学的な映画作品にしても人が死にすぎている。これまでに僕が観た黒沢清の作品ではどれも例外なく人が死んでいるし、現代日本映画界のほかの牽引者、青山真治や園子温などでも、どうにも人の死ぬものが多い印象があって。へんな言い方ですが、殺してしまうと楽なんですよ。そのあとその被害者が出てくることはなくなるし、加害者のほうも逃げるか、捕まるか、その事実を隠すかすればいいし、話もしやすくなる。できれば殺さないでほしいですね。今の僕はそういう感じでいます。

話を戻すと、笑いということで言えばあのクラゲはもうそれだけで面白いです。あれが大繁殖して藤達也演じる父親がはしゃいでいるところなどは、コントですね。クラゲがユウジの家の板の隙間に落ちていくところも面白い。ただ、こういう映画についてこういうことを言っても仕方ないんでしょうけど、どうして一匹で逃げたあのクラゲがあんなにも繁殖できたのかがよくわかりません。いや、もちろん重要なのはあの映像自体のほうであって、そういう部分についていうのは違うと思うんですけど、そういうところの整合性はほしいんです。そうしないと何でもありになってしまうと思って。

うん、笑いで目に付いたところが多いかな。僕みたいな見方をする人は、黒沢清作品については少ないかもしれません。ほかにもあるのは、男子高校生たちがインカムをしているところ。インカムをしていると仲間同士だけで話ができるんだ、みたいなことを言うのですが、彼らは同じテーブルにいるから、そんなものをする必要がないんです。「おまえら、目の前に相手おるから、そのインカムは何の意味もないがな」とつっこみたくなります。あと、これはもう、映画とは無関係になってしまうかもしれないんですけど、僕はああいう連中がほとんど無条件に嫌いなので、ちょいと不快でしたね。金を盗み出してはしゃいでいるところなど、「おいおい、会社の人たちが一生懸命働いて稼いだお金なんやぞ」と思って腹が立ちました。まあ結局捕まってくれたからいいんですけど、反省の色がないラストシーンがやはり嫌いです。僕はそういうメンタリティがありますね、これは伊集院光の影響もあるかもしれません。伊集院光は不良文化を嫌っていて、「不良が格好いいみたいになっているけど、その被害を受ける形の善良な人たちの身にもなってくれよ」ということをたまに言います。尾崎豊の「盗んだバイクで走り出す~」「夜の校舎窓ガラス壊して回った」を格好良く歌いたがる連中に対する、「おいおい、盗まれたほうの身にもなってくれよ」「ガラス割られたのを片付けるほうの身にもなってくれよ」という目線ね。僕はそちらが強くあるので、あまり好きじゃないんです。マモルが夫妻を殺したのでも、できれば子供の女の子にはいてほしくなかった。そっちのほうがよっぽどショックのはずです。オダギリのユウジが何をうだうだやっているか知らんけど、あの女の子の方がずっと大変なんですよ。そういう感覚を持たないでマモルとユウジの物語に移入するのは、倫理的に僕にはできないんです。

、男子高校生とユウジが窃盗を働いた会社、そこに勤める会社員役のはなわがいい味を出していました。最初出てきたときは驚いたのですが、はなわの演技、目線がすごくいいんです。「ああ、おるおる、わかるわかる」という感じがものすごくしました。はなわの目線に注目です。

なんかあまりいいことを書いていないような気がしますが、うん、なんでしょう、今の僕には「ああ、これはいいものを見たな」という印象は特にないんです。オダギリジョーの役に若者が自己投影するのかもしれませんけど、僕はその段階はもう終わりました。だからぴんと来ないのかもしれません。岩井俊二『リリイ・シュシュのすべて』(2001)がいいという人が多いみたいですが、あの映画もぴんときません。これに反応する人たちがいるのはわかるけどね、という立ち位置ですかね。

今の僕なんかはやはりカウリスマキの人たちが好きなんですね。カウリスマキは人を死なせないし、その意味でも好きなんです。今回はこの辺で。
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by karasmoker | 2008-02-04 09:15 | 邦画 | Comments(5)
Commented by at 2010-10-21 16:03 x
いや、笑いは狙ってないやろうww
当方5人コレ見て全員 批判っすwww
評論やめたほうがいいんじゃねw
Commented by karasmoker at 2010-10-21 22:19
wwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwwww。
Commented by at 2015-09-28 01:42 x
もう1回映画ちゃんと見たほうがいいよ。
映画評になってないしさ。
Commented by ピアノ買取 at 2015-11-22 03:27 x
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Commented by yuki78890 at 2016-01-31 16:43
私もすごい同感です
この映画のどこが良いのかよく分かりません
ナルシストと思います。
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