『NANA』 大谷健太郎 2005/ 『ガキ帝国』 井筒和幸 1981

格好良さ、美しさ、豊かさ、その差歴然
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映画は毎日のように観ているんですけど、エネルギーを違う物事に向けているため、しばらくこのブログを滞らせていました。久々に気まぐれに何か書こうと思います。書いていない期間にも沢山観ているのでいずれ言及するかもしれませんが、今回は語りやすいものについて語ってみたいと思います。というわけでタイトルの二本。

『NANA』は酷かったです。松本人志が映画評で、何かの映画を酷評しつつ「逆R指定をつくれ」と言っていたのを思い出します。RとかPGとか、年齢制限がありますが、あれはあくまで下限制限であって、何歳以下は見てはいけませんというものです。それに対し松本は「何歳以上の人は楽しめませんよ」という上限制限、「逆R指定」をつくれと言っていたのですが、今回の映画はまさにその感じです。20歳を越えた人間は楽しめないと思うんです、あほらしくて。せいぜいが高校生かそれくらいで、これを褒める大人がいるというのがまるでわからない。役者の演技、台詞回し、どうしてこんなことになるのかと思わずにはいられない。下手な演技というのは台本が見えてきます。喋る役者、動く役者という表象の裏側に、台詞やト書きが透けてしまう。世界自体もぺらぺらなんです。『NANA2』が世間的に酷評されていた覚えがありますが、いやいや、一作目の時点であかんがなという話です。違う言い方をすると、結構笑えます、ものすごく馬鹿っぽいから。レストランのシーンなんて、再現ドラマの文法です。もはやドラマですらない。バラエティ番組の中に入る三分くらいの再現ドラマ、それでよく見たような光景。これを観ていったい何を感じろというのでしょうか。そう、だからやはり、未成年限定指定か何かにすればいいんです。

とて、僕がこれだけこの映画を好きになれないのは、演出的幼稚さもそうなんですが、原作の『NANA』の魅力がまったくわからないというのもあります。僕には『NANA』の何が面白いのかひとつもわからない。世界的に輸出されており、もう累計で何千万部みたいな規模らしいですが、一、二巻ほど読んで駄目でした。どうでもいいんです。大学生くらいのやつがほれたはれた、好きよ嫌いよ言うてるのはもう本当にどうでもいい。だから「あいのり」みたいな番組も何もわからない。憶測ですが、「あいのり」が好きな人は間違いなく『NANA』が好きなはずです。どうでもええようなやつらのどうでもええようなほれたはれたに現を抜かしているのが好きな人たちでしょうから。
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さて、後半は『ガキ帝国』です。
これはよいです。『パッチギ!』の原型というか、『パッチギ!』的完成を見る前の不完全さがあって、『NANA』的書割世界に比して非常に豊かですね。特別に好きだったのは、役者たちの滑舌がよくないところです。紳助も竜介も、何を言っているかわからないんですよ、早口だし。でもそれがいいんですね。映画にしろテレビにしろ、どうしてもはっきりと喋らせようとするし、特に最近はそうだと思うんです。何を言っているかわからないからもうワンテイク、みたいなね。でも、何を言っているかわからなくていいんですよ。あの『ガキ帝国』的な、汚い大阪の街で暴れる汚い若者たちの世界を表現するうえで、あの滑舌の悪さは非常に有意だった。台詞というのは何かを伝えるための装置ですが、大事なのはその言説内容に限らない。何かを喋っているその姿や振る舞いがメタ的な言説要素になるのであって、この映画の薄汚い感じは非常に美しかった。うん、これはこのブログでも何度も書いたことですけど、格好いいとか美しいっていうのは、格好悪いこととか不細工なことも含めてなんですよね。『ガキ帝国』に出てくる人たちはみんな格好悪いし、だからこそ格好いい。みんな臭そうで汚いけど、だからこそ美しい。で、映画の魅力はそういうところにあると思うんです。それは写真とかでは伝わらないことで、どろどろの汚さや生臭さを持った人々の生きて動くさまが描かれることが大事なんですね。『NANA』をぼろくそに言うのはいい加減にしておこうと思いますが、結局あれでは誰一人格好よくないし、美しくない。ええかっこしたいんか、と言いたくなるだけですもん。『ガキ帝国』は「ガキ」というだけあって、馬鹿だし、愚かだし、どうしようもないやつらばかりなんですけど、そこには確かな芯がある。繰り返される喧嘩は本当に無意味で馬鹿らしいけど、それでぼこぼこにされた後の表情には確かに人間的なものの宿りを感じる。

ぜんぜん時代も舞台もそこで描かれていることも違うけれど、今日あげた二つの映画に出てくる若者たちはあまりにも違います。映画的なよさもまったく違います。何の共通点もないような映画を比べるのはおかしいですが、仮に『NANA』と『ガキ帝国』を観て、万が一にでも『NANA』がよかったというやつがいれば、そんなやつと僕は何も喋りたくないし喋ることもできないでしょう、たぶん、話す言葉も何もかもが違うから。
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by karasmoker | 2008-03-15 00:25 | 邦画 | Comments(0)
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