『完全なる飼育』 和田勉 1999 /『ヴァージン・スーサイズ』 ソフィア・コッポラ 1999


 両作とも期待値が高かったのですが、最も肝心なところをきちんと描いていませんでした。

 女子高生がジョギング中に誘拐され、犯人の男に監禁される話なんですが、その心の変化がよくわからなかった。初めの描き方自体は面白いんです。女子高生役の小島聖の演技はかなり演劇的というかオーバーアクションというか、いわゆるリアルな女子高生の演技ではないんですね。これはこれで面白いと思った。何かにつけリアルな、そしてリアルを求めるが故に退屈な演技が多い中で、あくまでも演劇的で大袈裟な振る舞いに委ねようという方法は、この監禁劇においては大きな効果を発揮しています。ぼくはこの演技を「あえて」やっていると信じたんです。監督はあえて、このような形をとったのだろう、と思ったんです。その意味で好感を持ったのですが、後半になるにつれ怪しくなっていきました。ああ、監督はマジでこの演技をさせてんのかな、だとしたらただ古いだけやんか、と印象が変わっていきました。

 決定的だったのは旅館の場面ですね。小島聖が竹中直人のもとに帰った瞬間に、この映画は終わったと思います。あそこからはもう、濡れ場しか見る場所がないというか、何の緊張感もないんです。この手の映画には緊張感がとても大切だと思うんです。誘拐犯と被害者という、心のつながりを得られそうもないところにどういう力学を働かせるのか、が腕の見せ所であり、なおかつその過程では絶えず緊張感をはらませねばならない。当初はそれができていたのに、あそこで小島を竹中のもとに帰した後、結局最後まで愛し合っているだけなんです。何のどんでん返しもないし。この手の映画をうまくまとめるには二つの道があると思うんです。ひとつは心を開いたように見せかけて最後に殺すなり何なりというオチを用意する。いかにも物語的なそうした構造を嫌うのであれば、是が非でも誘拐犯と被害者の心の動きを丁寧に描かなくてはいけない。この映画はどちらもしていません。そのくせ、ほかの住民達の結局はどうでもいい日常を随所に挟み込んでしまう。何か伏線になるのかなと思いきや、何にもなりませんでした。

 まあ、小島聖がとても綺麗なので、その点は見る価値ありですが、ネット上の断片的レビューを拝借すれば、「この映画の一番の見所は小島聖の濡れ場であり、そのことはこの映画の駄作ぶりを示している」というところですね。小島聖はテレビドラマ「ナースのお仕事」で初めて目にして、度肝を抜かれた記憶があります。完全に観月ありさよりも可愛らしかったです。でも、それは小島聖の魅力であって、この映画の魅力ではないんですね。濡れ場はよく撮れていました。精神的EDのぼくですが、なかなか見応えのある場面です。でも、それだけですね。


 さて、二本目の『ヴァージン・スーサイズ』。
 この映画も似た欠点を持っているんですね。肝心なところで、逃げている感じがする。

 撮り方とか話の進め方、BGMなどはとてもよかったと思います。その点はなかなか達者なので、描写はよくできていると思う。初めに自殺してしまう末っ子の演技も実に的確でしたし、あの姉妹の立ち振る舞いと、男子連中のがきっぽさというのもいいんです。映画としての完成度はかなり高いと思います。ただやっぱり、「なぜ自殺したのか」の部分ですね。ここはもうちょっとなんとかしてほしかった。「理由はわからないままだ」みたいになっているんですけど、それにしたってもうちょっとわからせてくれよ、とも思います。最初の子の自殺は理由がわからなくてもいいんです。それにガス自殺をしたラックスもまあわかる。でも、他の三人は全然わかりません。どんな性格のやつなのか、というのもわからず、簡単に言うとただの風景になってしまっている。風景の自殺では困ります。その他大勢、みたいな感じですからね。そうなると面白みの装置になってしまうんですよ。一人より二人、二人より三人死んだほうが衝撃度は大きい。でも、その分、作り手はその三人をきちんと描かないといけない。そこを逃げてしまうのは、どうも詰めが甘い気がします。いや、だから、理由はわからなくてもいいんです。理由はわからなくてもいいから、どんな人間なのかをちゃんとわからせてほしい。そうでなければ、人物も出来事も皆作り手の中で勝手に操られてしまうだけですから。

あの親父も、娘が朝帰りしただけであんな風になるのがわからない。娘が男と交流するのを、母親は嫌そうにしているのですが、父親はそうでもないんです。日本人の感覚で行くと逆だよな、と思いつつ観ていくと、結局娘の朝帰りに父親はショックを受けて、それどころか自失状態で現実逃避してしまう。あの父親がよくわからん。そういう、心の機微的な部分が、なんだか適当すぎますね。

二つとも、一番肝心なところで逃げている感じがします。だからこそ観た後で、「ああ、いい映画を観たな」という印象が持てない。部分部分とったらいいところはたくさんあるんですけど、総体としてよくないんですね。ごまかしたなー、という印象が強いです。
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by karasmoker | 2008-12-20 02:22 | 邦画 | Comments(0)
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