『E.T』 スティーブン・スピルバーグ 1982

映画の愉しみを子供に教えるには適当な一作だと思います。

 あまりにも有名すぎて逆に観ていない、という映画が数多くありまして、これもそのうちのひとつでした。もう少し短くしてもよかったように思います。100分くらいのほうがぼくにはよかった。

 まあ子供向けの映画ですね。子供心にはそりゃ楽しいと思います。大人ってものが背景化して子供が前面に出ているし。だから細かいところをごちょごちょ言っても仕方がないんですね。気楽に楽しむべきなんです。子供はアニメが好きなものですが、そういう子供にアニメ以外の映画の楽しみを教えるには、丁度よいと思います。大体の流れがわかってしまうと途中だるくなりますが、子供はそういうことはないでしょうしね。

『E.T』の形状は気持ちいいところではあります。『グレムリン』のギズモみたいに可愛くないんです。グロテスクな要素が入っているので、そこはえらいというか、媚びている感じがなくていいんですね。実際にいたら気持ち悪いです。それがわかっているスピルバーグは子役のドリュー・バリモアに絶叫させます。最初は拒絶してしまう、という正直な反応をちゃんと描いています。死にそうになるところも絵的にわかりやすい。綺麗じゃないんです。それはとてもいいことで、死にそうな生物を綺麗に描かないというところは、ああ、わかっているな、と安心できます。あれが妙に可愛らしかったら駄目なんです。もちろん単に気持ち悪くても駄目で、その辺のバランスはうまいところですね。どうして一度死んだのに生き返ったのかとか、どうして川辺で死んでいたのかとか、そういう部分は無視してよいのです。些末なことに過ぎないのです。そう思って観る映画なのです。

 ラスト近くの、自転車と車の対比、というのもうまい。あれは子供心をつかみます。やはり自転車というのは子供の象徴で、車は大人の象徴です。日頃自転車に乗って移動する子供という生き物は、あのシーンで心を鷲づかみにされるに違いないのです。思い切り主人公に感情移入するでしょう。自転車の疾走シーンは大変快楽のある場面であって、いよいよ追い詰められるぞ、となったときに飛翔する。メインテーマがバックにかかる。持って行き方がとてもうまいなあと思います。子供目線で観ると、飛翔と同時に完璧に心を持って行かれますね。空を飛ぶ、というのがわかりやすくていいじゃないですか。いいんです、細かいことはどうでも。

 こういうのは『グレムリン』と同じで、肩肘張って観てはいけないのです。素直に、ぼんやりと観ていればいいのです。そうすればそれなりに楽しくて、「子供にもわかる面白いものをつくろう」という、スピルバーグの率直な意志を感じることができるのです。
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by karasmoker | 2009-01-30 04:01 | 洋画 | Comments(0)
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