『死霊のはらわた』 サム・ライミ 1981

B級スプラッターものの中では出色ではないでしょうか。

 原題 THE EVIL DEAD
ぼくが観たDVDはどうやらカットされたシーンがあるらしく、アマゾンレビウでは評判がもう一つのようです。画質もVHSみたいで文句があるようですが、ぼくは画質に関しては特別気にはならなかったですね。というよりも、このタイプの映画であればある意味画質の悪さに味があります。やはりDVDだのブルーレイだのというこのご時世にして、VHS的な画質の悪さに味を感じることもあるんですな。そういえばちょっと前に行った黄金街のバーで、クソ映画とされるもののVHSを好んで観る、シネフィルっぽいおじさんに出会いました。中にはそういう人もいるようです。画質の向上がすべてではない、というのは確かにあります。考えてみるに、カラーよりも白黒のほうが味のある場合もあるわけで、それは懐古趣味とは別種のおもむきなのです。

この映画、あるいは80年代のスプラッタームービーの多くは、画質をある程度落としてある方が、安っぽさが浮き出ないんですね。鮮明に過ぎるとどうしてもアラが見えるから、これはこれでいいような気もします。『死霊のはらわた』は、五人の若者が山奥に遊びに出かけたら夜な夜な怨霊に出くわして云々という、古典的な設定です。友人や恋人が怨霊に取り憑かれてしまって、というタイプのものですね。そのくせ主人公だけは絶対に取り憑かれないのですが、まあそれはお約束です。

 ゾンビ系スプラッター映画、というと、実は一番好きなのが『28日後…』(2002)『28週後…』(2007)です(あれは正確にはゾンビ映画ではないですね)。それほど数を観ているわけではないのですが、シリーズ化された『サンゲリア』(1979)『バタリアン』(1985)などはあまり好きじゃない。現代ゾンビ映画像の嚆矢とされるジョージ・A・ロメロの『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』(1968)も、どうしても今更感が強いです。映画秘宝が一昨年だったかに、オールタイムベスト100の1位にあげていた『ゾンビ』(1978)はまだ観ていません。近所のビデオ屋にないのです。ある程度お金がかかり、なおかつ洗練されているよさというのはやはりあるのでして、『28日後…』などはその点とてもよかった。一方、3までできている『バイオハザード』は駄目ですね。ハリウッド的な駄目さが炸裂しています。

『死霊のはらわた』はよかったです。設定は目新しくないのですが、ちょいちょい面白い表現がありますね。たとえば一番最初に取り憑かれるシェリルですが、変貌後ずっと床下にいるときが面白いです。ガオーッとなりながら、床下から出られずに部屋の様子を覗いているのが面白いんです。恋人のリンダがへらへらしているときの、主人公との間合いもいいです。なんやねん、という感じが笑えます。ぼくが傾倒的に私淑している松本人志によれば、お笑いとホラーは紙一重。怖さと面白さのあやうい均衡が、この映画には散見されました。

 一方で、気合いを入れてスプラッターシーンをつくっているところはサム・ライミの才気が溢れています。血の感じもいいんです。この時代のものって、特に日本映画がそうなんですけれど、血糊がペンキっぽくなりがち。でもこの映画はちょっと違って、茶色っぽいんです。その色合いはいい感じでした。単純に赤くしていないところに小気味が利いています。特にラスト近く、取り憑かれた連中がぼろぼろに溶けていくときのクレイアニメみたいな表現も気持ち悪くていいですね。CGにはない、クレイアニメ的などろどろ感というのは、ぼくには新鮮でした。蟻のような虫が這い回るちょっとしたカットもいい味を醸しています。この辺はゾンビ映画隆盛の80年代において、競合の最中に生み出された表現という感じがしますね。

 今は何かにつけて配慮配慮ですからあれですけれど、この時代のものを観ると、とにかく無邪気に技術を追及していた感じがするんです。どうすればより怖くなるか、不気味に見えるか、気持ち悪く見えるか、というのを、多くの同業者たちがこぞって研究していたんだと思います。それはすごくいいことだと思うんです。CGでちょいとやれば(などというのは失礼ですが)どぎつい表現つくり放題で、一方観客への配慮を意識しつつつくりましょう、なんてやり方では絶対ないですもんね。作り手の頑張り方に惹かれるというのは、以前に紹介した『タワーリング・インフェルノ』と同じことです。だから、『スパイダーマン』シリーズは少し残念な感じもする。そっちに行ってくれるな、という気持ちですね。

『死霊のはらわた』は、ひとつのスプラッター系エンターテイメントとして良質だと思います。ストーリー的にはもう何の工夫もないのですが、古めのスプラッターものの中ではかなり好きな部類ですね。
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by karasmoker | 2009-02-14 02:48 | 洋画 | Comments(0)
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