『奴らに深き眠りを』 ビル・デューク 1997

もっと長くていい。もっと掘り下げたところまで観てみたかった。
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  原題HOODLUM
 1930年代半ばのアメリカにおけるギャング抗争を描いたお話です。賭博のシマ争いで三つの勢力が拮抗し合っていて、それぞれのヘッドをローレンス・フィッシュバーン、ティム・ロス、アンディ・ガルシアが演じています。

 三国志よろしく、三つ巴の戦いというのは話を立体的に見せますね。これは恋愛ものでも同じで、恋愛のいざこざというのは要は三角関係ですからね。三者が睨み合っている状態となると、水面下でのやりとりが見物になります。誰かが誰かと組んで誰かを潰す、というスタイル。その中で裏切りが生じたり、組んでいると見せかけて実は違う組み合わせがあったりというところで面白みを醸しやすい。

 この映画の三者はそれぞれに良い対比がありました。主役はローレンス・フィッシュバーンなのですが、ティム・ロス、アンディ・ガルシアの存在感が大きいです。やんちゃなティム・ロス、冷静なアンディ・ガルシアの対比がよくて、いつ爆発するかという緊張感がずっと持続していました。

 話自体はもう少し膨らんだかなという印象があります。こういうのって、最終的に誰かが勝つか、それとも全員が相打ち的に死ぬかというのが気持ちよくて、一人が負けて二人が組んで勝ってしまうとあまりすっきりしない。話はなんだか「これで一件落着」みたいになっていたんですが、もっと長くてもいいので最後まで争ってほしかったです。クライマックスは実にあっけなかった。そんな終わり方でいいのか、というのがあります。アンディ・ガルシアは存在感こそあれ、最後まで結局何もしていない感じがします。水面下でうまく動いたのはわかるんですが、うまく動きすぎてあまり伝わってきませんでした。落ち着き払った彼が銃撃戦に巻き込まれるのを観たかったんです。そこで振り子が大きく振れたのに、あえて回避したのでしょうか、もったいない感じはしましたね。ティム・ロスは『スカーフェイス』(1983)のアル・パチーノのような凶暴さと退廃を帯びていました。彼の見せ場がもっとほしかった気がします。結局、銃撃戦や戦闘シーンで頑張っていたのはローレンス・フィッシュバーンばかりだった印象が強いです。この三者がやりとりするシーンは、一色触発の気配もあり、その点緊張感は良質だったんですけど、振り返って見るにほとんど爆発しておらず、爆発するのはいつも下っ端がらみなのです。やはりクライマックスでの白熱する拮抗を観たかったというのはどうしてもあります。

 この映画は1930年代の話なので、白人と黒人の上下関係というのが随所に織り込まれていました。この辺はアメリカの物語表現において、かなり使える社会的装置です(逆にそれに縛られることも多いですが)。ヨーロッパほど白人的じゃないし、白人と黒人がごちゃごちゃになっている世界は対立に緊迫感があります。日本映画では難しいですね。というか、日本の社会は差別についてそこまで成熟していないせいなのか、描かれにくいところがあるのではないでしょうか。部落差別に関するものなどは古い映画にたくさんありそうですが、今の日本映画における「差別」としてあるのは、『GO』(2001)などとりわけ朝鮮人もので、あれは恋愛を主軸にした内面的な超克物語にされており、差別というものをちゃんと考える作品ではありませんでした。これから先の日本映画は余計にそうなっていくでしょう。差別などの問題を個人の内面問題に置き換え、青春だの恋愛だので薄めまくって中和しすぎるようなものばかりしか、今の日本映画には作れないと思います(インディーズは別だと思いますが)。そうなってくると、時代劇における貧民はもう描かれない。貧しい武士や町人を描いても、その貧しさや汚さもたかが知れていて、この先穢多や非人など影すらも描かれることがないでしょう。

 話が大きくそれました。
『奴らに深き眠りを』のローレンス・フィッシュバーンの台詞で格好いいのがありました。
恋人とベッドにいるシーンで、「教会に行きましょう」と言われたとき、彼はこう返します。
「俺には神様と交わした取り決めがある。お互い無関係でいようと」
いい台詞でした。ただ、彼の生き様、その描かれ方は微妙でした。なんならティム・ロスやアンディ・ガルシアの役柄から見る目線に、もっと力を入れてほしい感じもありました。あまりこういう感じ方は普段しないのですが、もっと長くていい。2時間以上あるけれど、時間が足りない感じがした。もっと観たかったな、と思わせる映画で、違う言い方をすると消化不良の感もややあります。3時間くらいでも、全然オッケーだったのですが。
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by karasmoker | 2009-02-17 09:33 | 洋画 | Comments(0)
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