『第三の男』 キャロル・リード 1949

映画、映像ならではの魅力はそこまで感じなかった。玄人好みの一品じゃないでしょうか。
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 キネマ旬報の1999年度版洋画オールタイムベスト100で、『2001年宇宙の旅』(1968)や『ローマの休日』(1953)、『風とともに去りぬ』(1939)といった超有名作品を抑え、堂々1位に輝いている作品です。淀川長治が「映画の教科書」とまで言ったそうで、いやがうえにも期待を高めて観ました。やはりオールタイムベスト100のトップともなれば、少々期待しすぎてもそれに応えてくれるのだろう、と思って観ました。

 結論から言うと、ううむ、です。
 サスペンスミステリーなのですが、それほどすごい作品かい? というのが本音です。よくできているなと思うし、よい作品だなと思うんですが、いわゆるひとつの「すごさ」は感じませんでした。考えてみるに、ぼくはこの手の作品に対してのアンテナが伸びきらないところがあります。

たとえばアルフレッド・ヒッチコックがそうです。ヒッチコックと言えば誰もが認める巨匠で、サスペンスの神様などと言われているのであり、そうかそうかとぼくは思って、いくつかの有名作品を観ては来たのですが、そこまですごいか? と感じてしまいます。蓮實重彦もそれに連なる阿部和重などもヒッチコックのすごさを謳っているのですが、どうしてもぼくは途中で退屈してしまいます。だから多分、ヒッチコックはすごい、という人たちからすると、この映画はとてもすごいんだと思うんです。

 やはり、映画に求めるものというのが人それぞれにあって、ぼくの場合、映画ならでは、映像ならではのすごさみたいなものを観たいなと思います。ストーリー的な面白さなら、小説なり舞台なりでも再現可能なんです。でも、中には「これは映像という表現媒体でしかなせない」というものがあるわけで、その意味で言うと『2001年宇宙の旅』はそういうものを描いていると思います。ちなみに、阿部和重は小説『ABC戦争』において、「キューブリックは『2001年』の全シーンを持ってしても、ハワード・ホークスの『ハタリ!』における猿捕獲シーンには勝てなかった」というようなことを述べていました。なるほど『ハタリ!』(1961)もすごい映画で、ぼくが強く感じ入ったのは猿捕獲シーンもさりながら、サイを追いかける場面でした。そういう映像的なスペクタクルは映画の醍醐味であって、『第三の男』はたとえばラストシーンなどの綺麗さ、格好よさがあるにしても、それほどすごいとはやはり思えませんでした。

思うに、古いサスペンス系、ミステリー系の映画にあまり食指が動かないというのがあるかもしれません。ホークスで言うと(プロ野球チームじゃないよ)、『ハタリ!』や『紳士は金髪がお好き』などは好きなのですが、名作と言われる『三つ数えろ』(1946)はぜんぜん好きになれなかった。ハードボイルドはハードボイルドでいいのですが、もっと茶目っ気がほしいなというのがあります。いや、茶目っ気があったとしても、ぼくの求める茶目っ気ではないのかも知れない。だからもうひとつ、はまりきれないんですね。

『第三の男』はそれでも、まさかの展開的な物語的工夫は利いているし、いい映画だとは思います。ただ、不朽の名作、20世紀映画のベストワンかと言われれば、それは大いに疑問です。玄人好み、と言われれば、そうなのかも知れませんが。

ちなみに、JR恵比寿駅における発車時のジングルは、この映画のBGMです。
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by karasmoker | 2009-02-19 02:54 | 洋画 | Comments(0)
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