『キャリー』 ブライアン・デ・パルマ 1976

主人公とその母親のキャスティングが、この映画の勝因です。 
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 タイトルのキャリーとは主人公の女子高生の名前です。彼女をめぐる悲劇が話の主軸になっています。感情が高ぶるとサイコキネシスの能力を発揮し、ものを投げたり飛ばしたりできるのですが、それは本人には制御できず、その能力が後々に大惨事をもたらすことになる、というつくりです。

 キャリーは冴えない女子高生で、狂信的なキリスト教徒の母親のせいもあり、うまく周囲と調和できずにいじめられていました。しかし、それを悪く思った同級生が、卒業パーティ(プロムナード)に彼女を誘い、彼女は相手の男子に恋をします。そのパーティでキャリーと相手の男子はベストカップルに選ばれるのですが…とここからは実際に観てもらいましょう。

途中は結構だるかったですが、終わって全体を振り返るとあのだるさも致し方なかったというか、後半の爆発を呼び込む上で必要なものであったかとも思います。キャリーがプロムに誘われ、参加するくだりがちょっと間延びするんですね。どうしてかなあと考えるに、ひとつには登場人物にあまり魅力がなかったというのがあります。どういう人間なのかというのがもうひとつ見えにくい。そのくせ男連中で買い物に行くようなどうでもいいシーンを入れたりしているので、もっと詰めるか、もしくは詰め込めたんじゃないかと感じてしまいます。キャリーに対して辛く当たったのを悪く思う女の子がいるのですが、その女の子の人間性がよく見えなかった。どうして悪く思ったのか、改心したのかの部分がほとんど描かれておらず、ぼくは観ながら、「もしかしたらこいつは悪者のほうじゃないか、だまして陥れようとしているのでは」と感じ、でも結局そうじゃなかったのでやや拍子抜けの感もあり、つまるところラストにそれほどの重みがない。要所にいるあの女子はもっと丁寧に描くべきだったんじゃないかとは思われます。

キャリーを憎む女子が一人いて、こいつの働きでクライマックスが生まれます。ラスト20分は圧巻です。パーティ会場がえらいことになるのですが、そのえらいことの描き方が好きですね。混乱ぶりを描くために照明を真っ赤にしてみたり、スプリットスクリーンを使ってみたり、あるいはちょっと古さを感じますが嘲笑する人々の顔を輪状に並べてみたりという視覚効果があり、なおかつ優しくしてくれた人も誰も彼も一緒くたに混乱のあおりを受けているのも正しく、そして何よりもいいのはなんといってもあのキャリーの顔です。キャリーの女優がとても怖いです。

 シシー・スペイセクという人で、これがまたちょっと気持ち悪いというか、不気味なんです。この人選は映画に説得力を帯びさせました。キャスティングでは母親役も絶品で、どうも顔立ちに不気味さがあります。ああ、こら気持ち悪い親子やなあというのがわかるんです。美人と言えば美人なんです。でも、存在感に気持ち悪さがあって、これはこの映画で特筆すべき点の一つです。あの親子のキャスティングは何よりも大事だった。それが最後の救われないシーンに宿りを与えました。顔というのは大事ですね。ただ気持ち悪い不細工な人間でも駄目だし、もちろん普通の美女では駄目で、あの線は非常に絶妙なライン。プロムのシーンなどでも、キャリーはそれまでと違いおめかしをしており、まあ簡単に言えば「綺麗だね、まあなんと、見違えるようだよ」みたいになるのですが、観ているほうとしてはこのときもどこか不気味な顔なんです。これはもう観て確認してもらうより仕方ない。こういうのはキャスティングの妙技です。日本では誰かいるかなあというと、今で言えば石原真理子ですね。この映画のリメイクを今日本でやったら、母親役は石原真理子をおいて他にないでしょう。娘役は誰にするか難しいですが、母親役は即決です。

あの親子とクライマックスが印象深いので、鑑賞後感としてはいいですね。途中の穏やかなくだりはもっと工夫を凝らしてもいいかと思われ、間延びの印象はやや拭えないのですが、終盤でかなりポイントを稼いでいる映画です。
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by karasmoker | 2009-03-02 04:47 | 洋画 | Comments(2)
Commented by のりちゃん at 2013-08-09 21:26 x
この映画『キャリー』は、私が初めてオールナイトで見に行った映画です。
あのプロムの所までは、なんかシンデレラストーリーですよね。
ちょっと不気味な感じはありますけど…。
憧れの男子とダンス、ベストカップルに選ばれ、周りのみんなも祝福ムード…。
あぁこのままで終わってくれたら、なんてハッピーだろうと、うかつにも思ってしまいました。
このあとは、目を覆わんばかりのシーンが続くわけですが、
まあここまではなんとか耐えられました。しかし、最後の最後、私「イヤーッ」て叫んじゃいました。
もう心臓バクバク、しばらく席を立てませんでした。
帰りの映画館から歩いて10分足らずの家までの距離が、とても長く感じた夜でした。
Commented by karasmoker at 2013-08-11 01:32
コメントありがとうございます。
あらすじと映画にまつわる思い出をお話し頂き、とてもありがたく思います。
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