『プラトーン』 オリヴァー・ストーン 1986

アメリカのつくる戦争映画には複雑な気分にさせられます。 
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 タイトルのプラトーンとはいわば「小隊」というような意味だそうです。
 ベトナム戦争に志願兵として参加した主人公とその部隊をめぐるお話です。監督のオリヴァー・ストーンの実体験なども織り交ぜられているらしく、アカデミー賞を受賞しています。

『プレデター』を観た後だったので、密林での戦闘という点でイメージが被りました。もっとも、こちらはただのアクションものではないので、無敵の主人公がいたりせず、むしろ主人公は等身大の若者だったので、感情移入しやすいです。

 この主人公の目線や考え方は、現代の日本の若者にも通じるものではないでしょうか。主人公は実家が金持ちで普通に暮らしていた大学生なのですが、自ら一兵卒として志願し、野卑な連中とともに戦場に繰り出します。この育ちの良さそうな主人公と周囲のギャップが丁度いい感じなんです。主人公のチャーリー・シーン(父であるマーティン・シーンは同じベトナム戦争もの『地獄の黙示録』で主演)の、気後れしている感じが好ましい。ぜんぜんレベルは違いますが、ろくにバイトもしたことのなかった大学生のぼくがかつて、工事現場でバイトをしたときのことを思い出しました。周囲の労働者の猥雑さ、野卑さというのは、ぼくちゃん大学生であったぼくにとっては別世界でありました。そういう覚えがあるので、主人公の必死な感じがいいんです。なんかものすごいアウェー感あるなあ、というのが伝わってくるんですね。大学生が観るといい映画かもわかりません。

 物語自体は彼に特化したものではなく、ベトナムの地上戦の様子もちゃんと描かれていました。その中で村を襲うシーンがあるのですが、ここでの主人公の具合がいいんです。片眼、片足がなく知的に障害があると思われるベトナム人の若者に対し、主人公が威嚇するところがあります。このときのチャーリー・シーンの混乱ぶりというか、もうどうしたらいいのかわからなくなっている様子というのがよく伝わってきて、その後別の男がこの若者を殺してしまうのですが、そのときもチャーリー・シーンはやはり、「ああ、そこまでするつもりはないんだよ、あの、その」という佇まいです。部隊はベトナム人の村を襲い家も何もかも破壊し尽くすのですが、この場面の流れには微妙なものを感じます。アメリカ軍の行為の非道さを描きつつ、でも別に全員が全員非道だったわけじゃないんだ、という感じにしようともしていて、ちょっと置きに行っている感じがしなくもなく、それを補う意味でのあの障害者への暴行だったのかなあと。そう感じていたらなんと、オリヴァー・ストーンは今年『ピンクヴィル』という映画で、ベトナム戦争の村人虐殺事件を扱う模様です。やはりあのときはちょっと抑えめに描いてしまったから、今度は本気でこの辺のことを扱うぞ、という意気込みなのではないでしょうか。
 
 ただ、ですねえ。
 
 オリヴァー・ストーンに限らず、ベトナム戦争についての映画は大変に多いようですが、ぼくとしては複雑な気持ちがないでもありません。この『プラトーン』にしても、アカデミー賞を取った名作として語り継がれているわけで、この映画は確かによく撮れているのですけれども、アメリカが他国の戦争にてめえで首を突っ込んでどろどろにして、あげくにそれを題材にして映画つくって金儲けするって、どういう神経なの? というのはありますね。無論、映画によってその出来事を学べるという側面もあり、否定はしないのですけれど、どうにも釈然としないものがあります。その中でアメリカ兵が格好良く描かれていたりすると余計に複雑な気分が絡まっていくんです。ああ、結局この国は反省してないなあという気がしてしまいまして、イラク戦争のことなんかもすぐに映画化します。変な話、アメリカの映画業界がネタに困ったら、戦争を起こせばいいみたいなサイクルになっていないでしょうか。どうもこの辺は、いろいろ考えなくちゃいけないところのように思います。
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by karasmoker | 2009-03-03 23:01 | 洋画 | Comments(3)
Commented by そうなんですけどね at 2010-09-23 14:47 x
日本も作ってますがな 戦争映画。
そう考えると火垂るの墓なんかも日本人が観たら悲しくて居た堪れない気持ちになりますけど
外国の方が観たら「被害者ぶってるんじゃねーよ」になるのかも知れませんね。
Commented by karasmoker at 2010-09-23 23:03
コメントありがとうございます。

 戦争映画に関して各国の観客の受け止め方が違うのはどうしようもないことでありましょうね。
Commented at 2015-02-25 01:09 x
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