『ドランクモンキー 酔拳』 ユエン・ウーピン 1978 

公平に観ればダメダメな映画ですが、 この手の映画に突っ込むのも無粋です。
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 原題『蛇型刀手 第二集 醉拳』 
ジャッキー・チェンの代表作と言えば『プロジェクトA』(1983)とか『ラッシュアワー』(1998)とかがあげられて、その先駆となったのがこの『酔拳』だったり『蛇拳』だったりするわけですが、こちらのほうのB級映画っぽさも味わいがあります。『プロジェクトA』なんかだとかなり大がかりなスタントがあったり、いかにもお金をかけた感じがあるのですけれども、『酔拳』なんかはあからさまに安っぽくて、でもその分、「この映画は殺陣で魅せるのだ!」という素朴な意気込みが伝わってくるものです。

 ただ、ぼくが観たDVDにはひとつ難点があって、時々吹き替えの英語が差し挟まれるんです。収録された音声に欠損があるらしく、代わりにそういう処置を取ったらしいのですが、どうしてそれが英語ではなくてはならないのかさっぱりわからない。広東語でいいじゃないですか。欠損があるのはまだ仕方ないにしても、いきなり英語になられると違和感がすごいです。声も違うし。英語を母語とする人にしたって違和感があるはずです。洋画を観ながらいきなり日本語吹き替えが入ったらやっぱり絶対おかしく感じるし、どうして広東語で吹き替えなかったのか。それが全然わかりません。香港映画は基本的に吹き替えが多いようですが、だとしてもこの映画に関しては広東語で統一すべきでしょう。

 映画の筋自体は伏線を回収し切れていませんでした。悪ガキのジャッキー・チェンが父に更正を命じられ、老師であるユエン・シャオティエンに弟子入りします。ジャッキーは老師のもとで修行を積むのですが、その先のエピソードがしっかりしていません。ジャッキーの家と敵対する道場の連中が出てきて、なにやら悪行を働いているらしいという話になりますが、これをほっぽり出したまま話が終わってしまい、クライマックスは結局、行きずりに出会った賞金稼ぎとの決闘シーンです。賞金稼ぎに勝利して話が終わるのですが、敵対する道場の話はなんら未解決なのです。気持ちいいくらいに思い切りほったらかしています。

話の構成はすごく行き当たりばったりな感じがしますね。どうでもいいシーンに時間を割いていまして、これもやはり、いかに殺陣を魅せるかということに執心しているためでしょう。だから話の展開としては全然駄目なんです。この辺はいかにも雑なつくりであるのがわかります。『蛇拳』はもうちょっとしっかりしていたのに、どうしたのでしょう。時間的にはちょっと長い。この話なら100分以内に収めてほしかったというのはあります。

 ただ、まあそれはそれでいいです。あまりその辺をきちきちつついてもこの手の映画は仕方ない。やはりジャッキー・チェンとユエン・シャオティエンのやりとりをおおらかに愛でるのが正しい見方です。『蛇拳』にも出ていたユエン・シャオティエンはどうやら、この映画の公開翌年に亡くなったらしいです。茶目っ気があり、すごく味のある人です。この映画の成立の上で、この人の存在はきわめて重要で、ある意味ではジャッキー・チェンの映画というより、このユエン・シャオティエンの映画と言ってもいいでしょう。仮面ライダーにおける小林昭二よろしく、日陰にありながらもメインをしっかり支えているのです。

 映画全体を通じて言うと、観るべき点は殺陣のシーンと二人のやりとりくらいのものです。後は何もないと言ってもいいくらいです。笑いを取るシーンはやっぱり時代柄、お国柄もあって、現代日本人のぼくには見るに耐えぬ点も多いですね。ただ、その中で一人、「おまえに喰わせるタンメンはねぇ」みたいな人がいるのでそれは面白かった。やたら歯が出ているのですが、あれは何なのでしょうか、本当の歯なんでしょうか。だとすると余計に「おまえに喰わせるタンメンはねぇ」っぽいです。

 これを観ようが観まいが人生には何の影響もありませんが、気楽に何も考えずにあほみたいなカンフーアクションを観たいな、というときに観るにはお勧めです。ただ、もうちょっと短いほうがいいですね。
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by karasmoker | 2009-03-06 20:27 | アジア | Comments(0)
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