『ゾンビ』 ジョージ・A・ロメロ 1978

すごく多くの映画を観ている人がこれを一位にする理由が、ぼくには何一つわからないのです。
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 雑誌『映画秘宝』2008年度版オールタイムベストテンにて第一位となっている作品です。『映画秘宝』はかなり特殊な(では何が特殊でないのか、と問われると答えに窮しますが)選定をしていると思うのですが、この作品を愛でる人が多いとなれば、なるほどぼくは『映画秘宝』にそこまでのめりこむことはできないかもしれません。

 というのも、ぼくには傑作とは思えなかったからです。どうしてこれが一位なのか、まるでわからない。キネマ旬報の『第三の男』でも感じたのですが、この得票システムがどうなっているのか知りたいですね。皆が皆これを一位に押したのか、そうだとすると、ぼくにはどうも解せません。

 一言で言うと、いまさら感が強いということです。何十年前、半世紀以上前の傑作であってもすごいものはすごいのですが、この映画は後代に陸続とつくられた作品に、超えられてしまっていると思うんです。

 CG技術の発展で特に90年代以降、大作パニック映画が大量につくられた後にあっても、『ポセイドンアドベンチャー』や『タワーリングインフェルノ』はなお輝きを失っていないんですが、ゾンビ映画の場合、やはり特殊メイクなどのレベルは絶対にあがっているし、この『ゾンビ』がすごいものとはどうしても思えないんです。低予算でこれだけのものができるのか! という驚きは率直に言って無かったです。

ゾンビがとろとろと動いている。ゾンビはとろとろ動くものだ、というこだわりはいいんです。ぼんやりとしているのもいいんです。ただ、それならそれできちんとしてほしいんですね。襲いかかられそうな場面で、ただ突っ立って見ていたりします。生きている人間を囲んでいるのに、何もしてこなかったり。そのくせ、一方ではやたらと凶暴になったりする。基準がよくわかりませんでした。ゾンビがゾンビであることを示すメイクで、顔が青白く塗られているのですが、それだけなんです。うわあ、このゾンビはくさそうだなあとか、このゾンビは怖いなあ、というのがほとんどなくて、「ひどくとろくさくて大変顔色の悪い人」みたいになっているんです。そのために致命的なのは、ゾンビの恐怖がないことです。ああ、どうしよう、やられてしまうぞ、絶体絶命! というのが伝わってこなくて、逃げようと思えばぜんぜん逃げられそうだな、と思われるんです。あえてゾンビの動きをたるませているのはわかるんですが、映画自体がたるんでいる気がしてならなかったです。締めるところを締める、という感じもなくて、ゾンビの凶暴さが唐突にさえ映る。子供のゾンビはただじゃれついてくる子供みたいだったし。

一人の人物が鞄を取りに行くと言ってゾンビが溢れる場所に戻り、そのために大けがを負って死んでしまうんですが、その鞄がどうして大事なのかもよくわからない。二時間以上を費やしてあれこれ遊んでいるのに、そういう説明が足りていないんです。なんであの四人がヘリに乗るのか、どこに行きたいのか、あのデパートにいつまでいるつもりなのか、これからどうしようとしているのか。実際行動に移さなくてもいいので、その辺のやりとりがもっと示されないと、ひどく内面を欠いた人物たちに見えてしまうんです。ラストにしても、ロメロであれば『ナイト・オブ・ザ・リビングデッド』の終わりのほうが切ないし、味わいがあります。

うん、どうしてこの映画が一位なのか、正直まるでわかりません。『映画秘宝』はある意味、映画好きがこじれてしまったようなところがあって、ダメだからいいとかクソだからいいみたいな愛で方をするときがないでしょうか。ぼくはそういうよさにちっとも痺れを感じず、映画的興奮も覚えないたちであって、この映画のいい観客にはなれませんでした。
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by karasmoker | 2009-03-13 22:28 | 洋画 | Comments(1)
Commented by S​c​a​r​f​a​c​e at 2014-08-17 06:34 x
どうもはじめまして。
私はこの映画が大好きなんですが、ペキンパーの傑作「ワイルドバンチ」みたいに賛否が別れるだろうなあなんて反対意見も知っておきたいと思いググッたら・・・ココに辿り着きました。

なるほど、確かにゾンビの動きとかは批判もあるでしょうね。
私のようにCGといったごまかしやすスローモーションでイライラしてしまうタイプの人間にとって、こういう「ガンシューティングゲーム」みたいな映画は好物と言える作品です。

確かにスリルという面は微妙なところですが、とろいゾンビを撃って撃って撃ちまくる。でもキリが無い、油断して調子にのると死んでしまう、数の暴力により恐怖、最終的には人間同士による殺し合いで減らしたゾンビがまた増えてしまう・・・私の見た「ダリオ・アルジェント監修版」は自分にはかなり面白い映画でした。あの遊んでいるような感覚が好きか嫌いかでも大分意見が別れるようですね。参考になる記事をありがとうございました。
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