『アビス』 ジェームス・キャメロン 1989

完全版でなければもっと楽しめたと思います。
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ぼくの借りたDVDは劇場公開版とは別の完全版で、公開版より30分長い170分のものでした。ファンには嬉しい仕様かもわかりませんが、ぼくには長かった。公開版の長さの方がいいです。

 海底の石油採掘チームが沈没した原子力潜水艦の調査に乗り出し、その過程で未知の存在に遭遇するというようなお話です。調査に同行した特殊部隊の人間との諍いや採掘基地に降りかかる危機的状況が長尺の物語を支えます。

場面としては採掘基地内と海底の水中シーンが交互に織りなされるつくりで、これはそれぞれのシーンの持ち味が活かされています。採掘基地内の逼迫した素早い動きと、水中シーンの大がかりな、それでいて必然的にスローな動きが対比されています。ただ、物語のテンポがやはり生きてこない。完全版というのはカットシーンがない分、情報も詰め込めるし撮ったシーンもたくさん入るので好きな人には嬉しいでしょうが、初めて観るぼくとしてはテンポのほうが気になった。編集によってテンポを高める、ということができなくなるので、そこが難点でした。

 魅せるシーンは魅せてくれます。主人公の夫婦の二人はよくて、夫のバッドが妻リンジーを蘇生させる場面はほろりときました。その前のキャブ内における危機感もいいですし、その前のキャブ同士の格闘シーンもよかったです。

 ただ願わくば、整合性を取って欲しかった。特殊部隊の隊長の乗るキャブが海底に沈み、キャブは水圧に負けて崩壊してしまうのですが、その後主人公バッドが潜水服でさらに深く進むシーンでは水圧に耐えている。それでも身体が異常を来し、意識が朦朧としてくるのですが、なぜかさらに深いところで大丈夫な状態に戻っている。よくわかりません。あの場面でリンジーが思い出話みたいなのをするのもちょっとくさいです。そんな場合ちゃうやろ、と言いたくなります。

 海底深く進んだバッドは未知の生物に出会うのですが、この面白みは微妙なところであります。前半でリンジーが出会うのですが、これは面白い。小さいのが来て、その後とてつもなくでかいのが来たときのカットは非常に愉快でした。ただ終盤、バッドがそれに出会うくだりはちょっとファンタジー臭が強すぎた気がします。手を繋いで進んでいくところなんかで特にそう感じました。それまで採掘基地の浸水シーンがあったり、特殊部隊隊長との対立、格闘があったりした後であれを観るとなんだか醒めます。津波のシーンなんかもちょっとバカ映画っぽいんです。米ソ対立や原子力潜水艦、核爆弾などを出しつつ、「人類が自滅の道を進もうとしているからそれをやめさせようとした」みたいな話になるのですが、どうにもそのメッセージ性が率直すぎます。劇中におけるあの生物は暗い深海に比して輝いていますが、存在としてもっと輝きが欲しかった。観終えて残る印象として、この生物があまり面白くないんですね。

 もっとも、これは劇場公開版を観ていれば違う印象だったかも知れません。完全版にした分、丁寧ではあるがテンポの妙味が減じたという点では、少し残念でした。テンポの大切さを学ぶ機会となりました。
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by karasmoker | 2009-03-24 20:03 | 洋画 | Comments(0)
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