『Helpless』  青山真治 1996

ぼくの読解力は低いかもしれないよ。でもそれなら、青山真治監督の志だって、低くないですか?
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以前、黒沢清はぴんと来ないと書いたぼくですが、それ以上にぴんと来ないのがこの青山真治監督です。これまでに観たのは『EUREKA』『レイクサイドマーダーケース』『エリ・エリ・レマ・サバクタニ』『サッドヴァケイション』、それと『濱マイク』TVシリーズ第六話『名前のない森』。ぴんと来ないと言いながら有名作品は結構観ています。ただ、その上でぴんと来ないから、もうこの監督はぼくには合わないと決めてよさそうです。

 黒沢清同様、批評家には大変に受けがいい監督ですね。というか、蓮實重彦の下で学び、彼に褒められるような作品を撮っていれば、そりゃあ批評家は褒めるんですよ。ずっとずっと前から批評界では御大で、東大総長という「学問的権威の最たるもん」みたいな経歴もあるし、あの人が褒めていればもうそれだけで価値があるとされてしまいます。でも、一人の無邪気なる映画観(えいがみ)としては、そんなことはどうでもいいのです。快楽は意味に優越するという立場をとるぼくは、面白いかどうかが最も大事で、面白いと感じられなければどんな高尚なる表現にも興味が湧きません。

 今回観たのは初期の有名作品『Helpless』です。80分程度の短さながら、途中からもうどうでもよくなる。ああ、これもこんな感じやあ、でした。あらすじはウィキからもらいましょう。

 1989年、高校生の健次は仮出所してきた片腕のヤクザ・安男と再会する。安男は、かつての兄貴分が親分が死んで組は解散したと言っても信用せず、兄貴分を殺してしまう。安男は自分のバッグと妹を健次に預け、親分探しに出かけた。健次は安男と待ち合わせていたドライブインへ向かうが、精神病院に入院していた父親が自殺を図った事を知り、健次もトラブルを起こしてしまう。

 後の作品同様、今回も田舎町が舞台です。この景色は好きです。人の姿なんかも、ああ、96年っぽいなあと思わされる。あの田舎の感じはHelplessな、どうっしようもない感じがあっていいです。ただ、話自体はもう面白くないですねえ。あらすじだけ読めば、ほうほう、何か映画的興奮を与えてくれそうな筋立てだなと思えるのですが、これほどまで面白くなくできるのかと思わされます。ここは積極的に教えを請いたいです。この映画の何が面白いんですか?

 以前黒沢清について書いたことと重複するんですが、どうも批評家向けに撮っているように思えてならないんです。そんな感じが嫌いなんです。映画のことをものすごくよく考えているんでしょう、映画表現というものの充実を図っているんでしょう。だったら、その頭の良さを是非、観客を牽引する方向に向けて欲しいんです。テレビ局主導の駄目な映画が山ほどあり強引な手法でヒットさせている、こんな日本映画の現状を映画監督としてはよしとしないと思うんです。だから、もっと人を愉しませるような方向の作品をつくって、自分の世界に引き込もうとして欲しいんです。なのに結局、「わかる人にはわかるよね」みたいな映画で、批評家に受けているし自分の世界を追求するし俺はそれでいいや、みたいなにおいがもうぷんぷんします。よく、駄目な映画、まあ他の表現でもいいですけど、「志が低い」という言葉が使われます。テレビ局映画は確かに志が低い作品が多く、安易な人気取りに走る傾向がある。でも、批評家ばかりが評価するような、わかったような気になっている人ばかりが評価するような映画を撮って、それまで映画に興味のなかった人を引き込むような作品を撮る気がないなら、それはそれで志が低くないですか?

 知識はあるでしょう、教養もあるでしょう、テクニックもあるでしょう、頭がいいでしょう、でも、志が高いとは思えない。その点ぼくはやっぱり、園子温って人に惹かれるんです。あの監督の最近作『愛のむきだし』なんて、単純に映画として面白いし、観客を愉しませようというサービス精神に充ち満ちているんです。そういうサービス精神が、ひとかけらもない! 黒沢清は幽霊、ホラーというわかりやすいモチーフでまだ愉しませようとしているのがわかるけれど、この青山真治という監督はサービス精神がひとかけらもない! 物語的にショッキングにしたいのか毎度のごとく人が死ぬけど、ただ死んでいるだけだから何の映画的興奮もない! そこが端的に嫌いなんです。

結局、表現することの戦いはそこだと思うんです。ぼくも自分で表現を試みる身だから余計に思うけれど、何か重々しい、もしくは中身のあるテーマを描こうとしても、それを素朴に表すだけでは人は観てくれないから、うまく娯楽性をまぶして人を呼び込み、観た人になんとか訴えかけようとする。だから難しいんです。メッセージ性と娯楽性、意味と快楽の両立がものをつくる難しさだし、醍醐味だと思うんです。この監督は意味ばかりに行っていませんか?

 今日の内容は青山真治ファンを思いきり敵に回すような内容になってしまいました。ああ、そうですよ。自分の読解力の無さがいけないんですよ、きっとね。まあ、青山真治ファンの皆さんなら、すかした目線で素通りしてくれることでしょう。
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by karasmoker | 2009-05-05 01:33 | 邦画 | Comments(6)
Commented by at 2011-01-24 17:54 x
そうです。あんたの読解力が低いだけです(笑
Commented by karasmoker at 2011-01-25 03:40
えへへへへ。
Commented by かあ at 2013-05-03 20:57 x

観客ももっと能動的にならねばいけないのに、ね。「異変」に気づいてないだけの感想。
Commented by karasmoker at 2013-05-04 22:50
コメントありがとうございます。4年前のぼくにわざわざアドバイスをしてくれるなんて、なんて奇特な御方でしょう。
Commented by at 2013-11-13 21:17 x
失礼します。
ちょうど今、DVDで初めて『Helpless』を見た後でネット上の感想を検索した所、このブログ記事がヒットしたのでコメントさせていただきます。
「快楽は意味に優越するという立場」で本作を捉えたなら、ただ移動する乗り物をカメラが追っている映像だけで個人的には「快楽」でした。
特に、喫茶店の窓ガラスの奥側でバイクと自動車が一時的に同じ場所に駐車するという長回しのショットに、説明できない昂揚感を覚えましたね。
ブログ主さんは物語の有意性みたいなものを重視し過ぎて頭でっかちになっているのではないですか?
映像そのものを見た方がもっと楽しめますよ。
Commented by karasmoker at 2013-11-15 23:14
コメントありがとうございます。
今観れば違う感想を抱くかもしれません。
映画の見方についてはいろいろと考えていて今も模索中、というところであります。
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