『アポカリプト』 メル・ギブソン 2006

単純な娯楽作品として観れば、百点じゃないでしょうか。 
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 宇多丸が2007年ベストと言っていた作品です。メル・ギブソンといえば前作の『パッション』(2004)で物議を醸し、あれもまたすさまじい映画でしたが、今回の『アポカリプト』、めっちゃめちゃ面白い! 娯楽映画としては最近観たバートンの『シザーハンズ』もよかったですが、アクション映画というジャンルで言えば今までに観たすべての映画の中でベストクラスです。退屈を感じるシーンがひとつもないのがあっぱれでした。二時間半近くありますが、ずっと面白いです。サービス精神が映画全体に漲っています。

マヤ文明が栄えた頃の原住民の青年が主人公なのですが、ジャングルの中にある彼の村が襲撃を受け、そこから幾多の受難に巻き込まれていく話です。聞いた話によると、どうやら時代考証なんかはかなりおかしいところもあるようです。『パッション』ではキリスト教云々、ユダヤ人云々で物議を醸しましたが、今回はマヤ文明の人々の描き方等々でまたも問題視されたらしく、メル・ギブソンという人自体人格的にどうなのだという話も聞くわけですが、いろいろなことについて無知なるぼくは、その点の言明を回避しましょう。

 ただ、映画としては抜群に面白い! ひとつに、映像的な強みを活かしている点が好ましいです。原色のジャングル、村の様子、マヤ文明のピラミッドと儀式の様子など、とにかく画がいいんです。画のつくりがしっかりしているし、ジャングルの中の疾走感もちゃんと演出されているし、娯楽作品としては百点じゃないでしょうか。こうやって正しく勢いづいてくれると、細かいこともどうでもよくなるし、面白くなる。本当に、退屈させまいという姿勢が全面にうち出ているのがわかり、そこがものすごく好ましい。必ず何か出来事を起こします。何もないシーンみたいななのは二時間二十分を通してひとつもない!

 展開上、物語上画期的なものがあるかと言えば特にはないです。むしろ展開自体は、主人公が苦難と闘い最後に勝利を収める一番ポピュラーな話です。でも、このジャングルという場所が本当によく使われている。ジャングルが出てくる映画なんて別に珍しくないですけれど、ハリウッド的なガンアクションでもないし、甘えた野郎も出てこないし、敵の怖さも適度だし、ジャングルにおけるアイテムをちゃんと用いているし、原色の世界と肉体の対比で映像は鮮やかだし、全編時を忘れて観られる映画に、久々に出会いました。この映画の色彩への意識は大変好きです。裸の人ばかりなのですが、青い身体にしてみたり全身に泥を塗ったり白塗りの人を出したり、装飾品もきらびやかにして、映像という形式の中で積極的に攻撃している感じ、嬉しいですね。

 残虐描写やグロテスク描写もいいですね。容赦ない戦いには容赦ない描写が必要です。地味なところで、『夜と霧』的に死体が重なり合っている場面なんかも気持ち悪くて結構。
 
 主人公の妻が妊娠している設定もうまく効いています。緊張感を生じさせているし、ぼくはあの出産の場面は笑ってしまった。あれはすべてが解決したあとにでも出産させるのかな、と思いきや、「ぽろーん」でした。あれは笑う。高い緊張感の中で起こる笑いですね。

歴史認識、時代考証の点でおかしいよ! という人の考えもわかります。ぼくも日本映画で歴史認識が変になっていたら引っかかります。でも他国のことなので首を突っ込まないでおけば、この映画の娯楽性はもう諸手を挙げて賛美できます。賛美の記事は短めに収まる傾向があります。今日はこの辺で。
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by karasmoker | 2009-05-07 00:28 | 洋画 | Comments(2)
Commented by なや at 2013-01-16 00:10 x
アポカリプト、宇田丸終了。
キリスト教歴史感とアメリカ的視点で、先住民族を描くレイプ的作品、
故におちていない。
Commented by karasmoker at 2013-01-20 19:23
コメントありがとうございます。
誤字を正してから、出直してきてくださいね。
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