『サボテンブラザーズ』 ジョン・ランディス 1986

バカ映画でこんなに楽しめるとは思わなんだ。
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原題『THREE AMIGOS!』
宇多丸が三谷幸喜の『ザ・マジックアワー』について語っていたときに触れられた映画で、気になっていたので観てみました。

 メキシコの村が盗賊に襲われ困窮しており、助けを求めて女性と子供が街に出てくるのですが、街では誰も助けてくれません。女性と子供はふらりと入った映画館で「スリー・アミーゴス」の出てくる映画を観ます。「スリー・アミーゴス」は役者なのですが、女性は本当のカウボーイだと思い込み、彼らに電報を出します。ところがお金がないために電報は言葉足らずの文章になってしまいます。一方、「スリー・アミーゴス」は映画会社に楯突いて、契約を打ち切られてしまいます。どうしようか途方に暮れているときに女性からの電報を受け取り、役者の仕事が舞い込んだと思い込んでいざメキシコへと向かうのです。

 本気で助けを求めている人と、危機的な状況を映画だと思い込んでいる役者という点で、確かに『ザ・マジックアワー』によく似ています。三谷は喜劇作家だし、この喜劇映画を観ているはずです。そして、ああ、『サボテンブラザーズ』に負けていたんですねえ。

 ウィキによると、みうらじゅんが「キングオブバカ映画」と評したそうですが、異論はありません。最高のバカ映画と言えましょう。面白かった。何をやっとんねん、何やねんの連続です。アメリカ人によるハイテンションバカコメディというのはちょっと忌避してしまいがちなのですが、いやあお見それしましたね。最初のほうから結構バカっぷりが炸裂しているのですが、非常に好ましかった。笑わせてもらいました。

 主人公の三人や村の人々や盗賊たちが最高にキュートです。このキュートさを放った時点で勝ちです。バカな表現というのは、そこにキュートさがあるかどうかが大事なのですね。可愛いと許せるわけです。ヒロインのメキシカンの女性もキュートでした。

 質素な村とメキシコの荒野を使ったところがうまく作用しています。バカな表現ではあるけれど、舞台自体は古き時代のシリアスな西部劇に出てくるような場所で、ここにあの三人を浮かせたのがよかったのかなあと思います。これ、イギリス的な空間表現にすると入っていけなかったかもわからない。そうなるとテリー・ギリアム的なふざけ方で空間演出をしていたかもしれず、そうなると多分ぼくには合わなかった。でも、うまく開けた舞台を使ったことで、たとえばバカ映画とも思えぬ壮大な夕暮れの風景や、騎馬の疾走シーンが描かれており、これが映画のバカさを引き立てる真面目部分として機能しているなあと思うわけです。簡単に言うと、これは映画としてちゃんとしている映画だな、と信頼が置けるわけです。また、特に序盤、なりすましコメディとしての設計もきちんとできているので、単に勢いだけでつくってないな、というのがわかり、この点もまた信用が高まるわけです。

そうかと思うとこの映画はふざけ出して、もう書き割り丸出しの場面を置いたりするわけです。「何やねん映画」です。悪者に捕まったヒロインを救うべく戦いに出たのに、あの木に遭遇したりするのです。

 あの木はいい! あの木のシーンはいい!

 あまり「これは面白いボケですよ~」なんて書くもんじゃないから詳しくは書きませんが、あの木がぼくは大好きです。物語とはもう呆れるほどまったく何の関係もない場面ですが、もうずっとあの木のシーンでもいいくらいです。

ああいうシーンが一個でもあれば、もうぼくはその映画を全面的に擁護する!
 アジトに乗り込むくだりもめちゃくちゃですよ。これ、普通の作劇で言えばハラハラドキドキの真剣な潜入シーン、決闘シーンになるわけです。いざ窮地に陥ったとき、さてどうする! どうやって切り抜ける! というところが活劇の醍醐味です。でも、この映画はそんなの知ったこっちゃない様子で、ありえない切り抜け方をします。こういう表現は難しいです。何でもありの果てまで行って、どうやって観客に微笑みかけるか。そこは大変難しい演出なのです。この映画の場合は全編に漲るキュートさによって、そしてぼくの場合で言うとあの木を出してくれた有り難みによって、何でも許せてしまうのです。結末は、もうあれでいいなら最初からあの三人はいなくてもよかったんじゃねえか、と冷静になれば思いますけれど、最後もこれまたキュートな締め方をしているし、幸福な結末だし、これでよし! 縫え老婆よ! 風のように縫うのだ!

時を忘れて愉しむことができました。まあ、乗れないならもう乗れないと思いますが、乗れちまえばこんなに愉しい映画はそうそう無いです。映画における笑いとしても、大変参考になる映画だと思います。お薦めです。
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by karasmoker | 2009-05-18 03:20 | 洋画 | Comments(0)
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