『天国にいちばん近い島』 大林宣彦 1984

原田知世が出ている。もうそれだけの映画。
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有名作品を逆に観ていないようなぼくですから、大林宣彦監督で言うとたとえば「尾道三部作」なんてのも観ていないんです。『時をかける少女』を観ようかと思っていたら、ビデオ屋からいつの間にか無くなっていて、じゃあもういいやみたいな感じになりました。その代わりと言ってはなんですが、同じ原田知世主演の『天国にいちばん近い島』を観てみました。この頃の大林宣彦は今の三池崇史みたいにとにかく撮りまくっていますね。玉石混淆と言ったところでしょうか。ちなみに本作はぼくの生まれた日の五日前に公開されたようなのですが、いやあ、哀しいかなこれは玉石でいえば「石」ですね。いや、「石」は悪くないんだ。個人的に「石」が悪いと言われるのは心外だ(意味不明な怒りだと思ってくれてよし)。

 率直に言って、苦痛でした。これは観ていて苦痛でした。何度途中で観るのをやめようと思ったことか。眠いし歯も痛くなってたし(それはおまえの問題)。原田知世のアイドル映画なわけですが、もうはっきり言って原田知世以外何も観るものがない。しかも原田知世が大きなメガネをかけていて、まあこれはメガネを外したときの素敵さが光りはしますけれども、それでもメガネはもう途中からまったくかけてなくていいよ! とは思いますが、これはたまたま原田知世を見かけたぼくが言っているだけであって、当時の原田知世ファンはきっと、「知世ちゃんのメガネ姿もいかすジャン!」と思ったでしょうからまあそれはいいです(結局何を言いたいのだ)。原田知世は可愛いです。怜悧さと清潔さと純粋さとあどけなさとか弱さと可愛さと、「この先こらええ女なりよるで」感が漲っているため、原田知世は素晴らしいです。歌手として活動しているだけあって、声質もよいですね。ちょっと山口百恵っぽいニュアンスもあってよいですね。原田知世はよいのです。ただ、それだけです。もうそれ以外の要素がきっついことになっています。

「天国にいちばん近い島」、ニューカレドニアが舞台ですが、まあ風景の綺麗さがこの映画のよさだとして、今では既に対応年数、賞味年数をとうに過ぎています。今さらニューカレドニアが綺麗だねなんて話をされても散々テレビ等々で観ていますので、これについては今ではこの映画の魅力とはなりません。

 問題は役者と脚本です。これはひどいことになっています。ぜんぜん面白くありません。役者について言うと、峰岸徹が出てくるのですが、こいつが単にいいやつになっていてちっともスリルがないんです。峰岸徹の役はまあ要するに体のいいナンパ師みたいな役ですが、それならそれでもっと下心を出して16歳の知世ちゃんを押し倒し、わあ! きゃあ! やめて! 離して! 観ている側としては、おい! 知世ちゃんになんてことをするんだ! 彼女を離せこの野郎! わあ、知世ちゃん、知世ちゃあん! となってくれりゃあ面白みも出るんですが、単にロマンチックなキザ野郎なので、何もどきどきしません。いやしかし、ここはですね、この峰岸徹が出てくるくだりでは、実は正しい見方というのがあって、それはつまりあの峰岸徹に感情移入して知世ちゃんと戯れるという見方がいいのです。そうするとなんと愉しい気持ちになるでしょう。「天国にいちばん近い島」を探しているのかい、ふふふ、何を言っているんだ、ここが既にそうなのさ、何故かって? だって目の前にいる君は天使そのものじゃないか! とでも言いたくなるのです(あほ)。

 だからまあ峰岸徹のくだりは、前半でまだ興味も保てていたし、まだいいのです。ただ、あの高柳良一という役者が最悪です。もう、棒読みとか台詞っぽいとかを通り越して、朗読みたいになっています。単に文章を朗読しているようなしゃべり方です。でもこれは彼が悪いとも限りません。演出が糞なのかも知れません。さすがにいくらなんでももっと演技ができるはずです。彼の役はニューカレドニアで生まれ育った日系三世という役どころで、監督としては日本語を使うのに難儀している青年みたいに描こうと思い、だからこそああやって丁寧すぎる朗読的台詞を吐かせたのかも知れませんが、それならもっと、現実的な「拙さ」に行けよ! あるいは親以外に日本語話者がいない環境なんだから、親の言葉をそのまま模写しちゃったみたいな変なしゃべり方でもいいじゃないか! なんか、新興宗教の勧誘みたいなしゃべり方なんです。「ありがとう、素敵な言葉です」みたいな。いや、わかるよ、この映画はニューカレドニアが舞台の、ファンタジックな描写が必要なアイドル映画だってことくらい! だとしてもあの青年の住環境と彼の言葉遣いが合ってなさ過ぎだろう! 妹の子役はすごくいいんですよ、『となりのトトロ』のメイみたいで、歩き方とかもすごく可愛らしいんですよ。なのに肝心のあの男は何をやってるんだよ! もう会話じゃないんですよ。一人で朗読しているだけだから、ぜんぜん知世ちゃんとの繋がりができていないんだよ! それならもういっそのこと、峰岸徹に暴れさせろ!

 で、この映画がどうしようもないのは、後半でそれまで一切出てこなかった訳のわからないババアとおばさんが出てきて、海に繰り出して涙ほろりみたいなシーンがあって、あれ何なんだよ! 戦争の何たらを描きたいならもっと別の映画でやってくれ! それだけならまだしも、おばさんと峰岸徹のくだり。あの眠たいくだり。もうこの映画は知世ちゃんが出ていないシーンにはひとかけらの意味もない! 快楽もない! あのおばさんのおかげで日本に帰れてよかったね、みたいになって、一応物語上の意味はあるんですが、それならいっそのこと峰岸ともう一回カジノでも行かせろ! 何も面白くない!

知世ちゃんを愛でる以外に、もう何の快楽もない映画です。
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by karasmoker | 2009-05-22 02:46 | 邦画 | Comments(6)
Commented by at 2011-10-15 03:25 x
感受性が低い。
Commented by karasmoker at 2011-10-15 06:04
と、だけ書いて去る人の感受性やいかに。
Commented by ぽこ at 2012-05-19 17:59 x
あえての棒読みらしいですね。
時をかける少女にもあやつは出てますが、お話的には天国~より面白いので、そのうちご覧になってください。
Commented by karasmoker at 2012-05-20 09:04
 コメントありがとうございます。
 『時かけ』は既に観ておりまして、しかしなかなかよい味わい方がわからぬ、というところもあるのでした。
Commented by こうちゃん888 at 2013-08-31 06:04 x
今まで観た映画の中で一番感動しました。最初から最後まで感動し続けたという経験は、本当に初めてです。旅行映画の金字塔です。海外旅行に携わる人全てに観て欲しいです。印象深かったのは、往路の機内の雰囲気。エコノミークラスで皆盛り上がるというのは、新鮮でした。あの盛り上がりがラストの絶景に繋がるわけです。天国にいる祖父に見せたい映画です。
Commented by 今見てるけど… at 2014-01-10 14:01 x
海外旅行にてマナー最低の日本人ツアー客をアピールし過ぎキモすぎる
原田友世が今見たらブス
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