『おねだり!! マスカット』

 今いちばん面白いテレビ番組の話。

 基本的にテレビはまったく観ず、もっぱらネット上にあがった動画をオンデマンドで観るような生活を送っているぼくですが、唯一リアルタイムで視聴しているのがこの『おねだり!! マスカット』です。テレビ東京で月曜深夜2:00から放送されている30分のバラエティ番組ですが、これは大変に面白く、生活の潤いになるものです。この番組が終わったら泣くと思います。

 大きな特徴としてはまず、AV女優がやたらと出ています。ぼくはかねてより、AV女優を主役に番組をつくったら面白かろうと思っており、実際にAVメーカーの面接に行ったときそれを主張したり、構成作家の高須光聖に会える機会があったときにもそのような提案をしたりしました。そんなぼくですから、こうした番組は実に好ましいのであります。

 これは別にぼくが大のAV好きであることを意味しません。というか、別にAVを好んで観ることはありません。自宅にあるAVも数えるほどですし、レンタルビデオ屋やツタヤディスカスでは映画しか借りません。ゆえにぼくはAV好きではないのです。では何故にぼくはAV女優を押すのでしょう。

少し話が逸れます。
 20世紀映画史、芸能史に残る美女と言えばマリリン・モンローがいます。アメリカにおける美女として彼女以上の知名度を誇る人はいません。では彼女の魅力とは何かと言えば、思うにそれはただ容姿の問題ではないのです。彼女の魅力の大きな割合は、そのコメディエンヌ的才覚にあるのです。ビリー・ワイルダーやハワード・ホークスといった名匠の作品における彼女は、その中でコメディエンヌ、喜劇人としての才能を発揮しています。単に美しい女性、女優なら他にも山ほどいる。その中で彼女が際だつ存在となったのは、その喜劇的才能ゆえと言ってよいでしょう。1948年の独占禁止法に伴いスタジオシステムが崩壊した50年代アメリカ映画は、日本より早くテレビ普及の影響を受け、なおかつ世界大戦後の冷戦やそれに伴う赤狩りによって、かつてのような映画を保てなくなりました。日本では1930、40年代と言えばそれこそ戦争へと進んでいく悲壮な時代のイメージがありますが、アメリカにおいては映画文化絢爛なる時代であって、むしろ戦勝国アメリカはその後の冷戦にこそ脅威を感じたわけです。そしてアメリカ映画は60年代、あのアメリカン・ニューシネマに代表されるように、それまでの夢と希望を謳うハリウッド的文化と大きく決別した作品群を輩出するようになります。アメリカ映画における50年代はコメディタッチの作品が数多くつくられた一方、上記の意味で決して幸福な時代と呼べぬ側面もあるわけです。その中においてこそ、マリリン・モンローは光りました。彼女が映画で活躍したのはもっぱら50年代。『紳士は金髪がお好き』『七年目の浮気』『アパートの鍵貸します』などのコメディ群の中で、マリリン・モンローは特段の輝きを見せたのであります。

 話がものすごく逸れました。『おねだり!! マスカット』の話でした。ぼくがAV女優を押すのは要するに、彼女たちのコメディエンヌ的側面に惹かれるからです。これは普通のアイドルとは大きく異なるのです。他にもアイドル番組は数多くあり、いまや女子アナさえもアイドル視される時代です(2005年頃まで女子アナ大好きだったぼくですが、もうついていけません。世間が彼女たちを本気でアイドル視するようになっては駄目なのです。『アヤパン』がよかったのは、「アイドルではないものがアイドル的たりうる」というネタ性があったゆえであり、そのネタ性を加速させたからです。今はベタになってしまいました。女子アナの番組が乱立したり、アイドル扱いされてはもうどうしようもありません)。しかし、一般のテレビ業界のアイドルたちには(むろん女子アナには)できない振る舞いがAV女優にはできます。

 彼女たちはやはり裸で勝負している、裸でファックする自分を見せているだけあって、思い切りがよいのです。凡百のアイドルは自分を可愛く見せることばかりに気が行くし、事務所もいかに可愛く見せるかという凡庸な努力ばかりをし続けるわけですが、この『おねだり!! マスカット』はいかに馬鹿馬鹿しく進めるかを考えている。そもそも彼女たちはファックで利益を上げられます。彼女たちの容姿的、肉体的魅力は既に保証されている。だからこそ、その辺のアイドルのように可愛さを必死で打ち出す必要がなく、むしろ堂々と馬鹿馬鹿しい方向に進めるわけです。そしてなおかつ、下ネタへも進むことができる。これは非常に画期的なのであります。また、注意しておくこととして、この番組は別に下ネタを押していません。というか、下ネタが出てくることのほうがずっと少ない。それでもさすがAV畑の人たちだけあって、それを活用できるときはちゃんと活用する。これはアイドルや女子アナ風情のお愛想とはまったく違う代物です。

 芸人には無理な方法です。お笑い芸人たちがどれだけ集まっても無理です。というのは、男の発する下ネタ、あるいはブスな女芸人の発する下ネタは、美人が発する下ネタを代替できないからです。美女だけが生むことのできる笑いを開拓している、という意味で、この番組は笑いにおける画期的事態を認めることができます。

 さらに言うなれば、アイドル番組としてのオールスター的な魅力があることです。アイドルユニットは個々の存在が魅力を持たねばなりません。五人でひとつ、というのでは駄目なのです。あの人もいる、この人もいる、ああ、なんと層が厚いのだ、というオールスター性が重要なのであり、一線で活躍するアイドルグループには皆これがあります。一時期のモーニング娘。にあって、今の彼女たちにないのがそれです。
 この番組の「恵比寿マスカッツ」は大変に層が厚いです。人数の多さは問題ではありません。蒼井そらをリーダーとし、みひろ、吉沢明歩、Rio、麻美ゆまなどの大変豪華なメンツが機能しており、小川あさ美や初音みのり、西野翔やかすみりさなどがさらにそれを支えます。巨人じゃないですが、四番がたくさんいるのです。そのうえ一番も二番も六番も七番も八番もすべて揃っていますし、エースもクローザーもいます。大変に豪華な顔ぶれなのです。
  
 おぎやはぎや大久佳代子を置いたのも頭がいいです。彼女たちを活かすには、あまり前に出る芸人を置くべきではない。前に出る芸人では、「恋のから騒ぎ」になってしまいますし、それではアイドル番組として機能しない。非常にものをわかっているキャスティングと言えましょう。小木が特定のメンバーを贔屓するなど、微妙な面白みもあってよいのです。小木のセクハラは何度観ても愉快です。

 しかし一方、人数が多くなりすぎている感は否めません。ここは難しいところです。
 この番組の濃度は30分に凝縮されているからよいとも言える。「ガキの使い」や「笑点」があれだけ長く続いている理由は、その時間内でぎゅっと凝縮しているのが大きいでしょう。30分では物足りない、からこそいい、というのがこの『おねだり!! マスカット』にはあります。ただ一方、どう考えても要らない人まで出てくることがあり、これは残念です。この大変にハイレベルなアイドル番組には似つかわしくないブスがいたりして、こうなるとアイドル番組としては残念なところです。ブスが馬鹿らしいことをやるのはもう他の番組でやっているから、要らないはずなのです。ブスが出てくると一気にテンションが下がります。もっとRioを出せ! アッキーを映せ! みひろを活かせ! 恵を映すな!ユリサを降ろせ! ゆまちんを映せ! パンツ見せろ!(あほやがな)。

 アイドル番組の醍醐味は、何度観ても快楽があることです。というのは、観るたび違うところに目が行き、このカットではこの娘がフィーチャーされているけど、後ろで映っているあの娘の笑顔がいい! という悦びがあるのであり、何度も観られるのです。正直な話、可愛ければ何でもいいです(あほ爆発)。

『おねだり!! マスカット』あるいは前身の『おねがい! マスカット』はテレビ史上初のAV女優のバラエティ、というわけではありません。この前にも、板尾創路が出ていた『淀川★キャデラック』などがあります。しかし、あの番組は少人数なうえにロケを行ったり、妙にエロを前面に押し出しすぎた演出をしたり、あるいは板尾がその存在感ゆえに邪魔になったりと、今の『おねだり!!』に比べると、アイドルを愛でる愉しみにかけるところが大きかったものと思われます。またSODの層は北都の層と比べても、やはり薄い。ここは業界トップ北都の強みです。

というわけで、まだまだ書き足りないことは多いですが、かつて大変にテレビっ子であったぼくから観ても、この『おねだり!! マスカット』は大変に優れた番組なのであります。どうか末永く続いて欲しいものであります。
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by karasmoker | 2009-05-24 19:52 | 恵比寿マスカッツ | Comments(0)
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