『インディ・ジョーンズ クリスタルスカルの王国』 スティーブン・スピルバーグ 2008 

もたもたしたうえに、ぺらぺら。
d0151584_1842037.jpg

書いている途中にパソコンがバグり、また振り出しから書く羽目になりました。ですが二回も同じことを書くのは嫌なので、最初からかいつまんで書きます。

 えっと、シリーズ四作目の本作品。四作中、堂々の四位です。

 過去の作品に思い切り負けてしまっていると思います。それでも最初のほうは期待させます。ケイト・ブランシェットの外連味ある敵キャラは面白く、このちょっと子供っぽいバカ映画っぽい敵がインディの面白さだと思っているぼくは期待を高めました。何よりいいのは一作目のラストに出てくるでかい倉庫が再び登場する点で、これはシリーズものの特権、つまり過去の蓄積を活かして世界を重厚にできるという強さなのであります。歴史や考古学的な宝物を主軸とするこのインディ・ジョーンズにおいて、過去のアーカイブを重んじるというのはまさに正しい演出であって、この辺のアクション描写もよかった。いいんです、細かいことは。異常に強い磁力のくだりとかも、いいんです、別に、あれはあれで。冷蔵庫のくだりとかも、まあいいんです、あれはあれで。あの核爆発が一体何の物語的意味があるのかとか言い出したら長くなるから、いいんです、あれはあれで。

 最初こそいいのに、時間が経つごとに面白くなくなっていく。なぜかと考えるにこれは、妙に謎解き要素をいれやがったからです。そのせいでものすごくぐずぐずします。
 インディ・ジョーンズの四作で最もぼくが好きなのは二作目、『魔宮の伝説』(1984)。あれはのっけからドンパチがあって、退屈なシーンというのがまったくなく、いやそりゃ確かにトンデモ展開でいかにも子供向けかもしれませんが、いいんです、土台、冒険活劇なるものは子供向けの娯楽であり、そっち方面で爆走してくれていい。今日付ウィキによると、二作目はスピルバーグ自身は嫌っているようなのですが、あれがいちばんいいんです。政治的な云々とかそんなのもないし、よくわからない邪教のボスを敵としているところも簡明でよい。とにかく二作目は余計な説明がないんです。勢いで持っていくところが好ましいわけです。

 ところがこの四作目は、やたらと謎解きに時間を掛けます。クリスタルスカルにまつわる謎みたいなものを延々とやるんですが、あのー、そんなの、どうだっていいんですよ。観ている側には。もしも本当の、実際の史実の話で行くなら別かもわかりませんが、架空の世界の架空の話で、真剣に謎解きされても退屈なだけで、観客のほとんどはたぶん、そんなものをこのインディ・ジョーンズに求めていないと思うんです。おそらく、この点は作り手もわかっているんですよ。だから中盤、あの、ナスカの地上絵付近の、古代の墓に行くくだりの出来事があるんです。

 あのシーンは本当によくわからない。何がわからないって、あの墓を守っているやつらが何なのかよくわからない。あれはもう思い切り、「このまま順調にいくと退屈だから敵を出しておけ」というためだけの敵で、その後も一切出てこず、何のバックボーンもない。

 その前の部分もちょっと、インディに求めているもの、少なくとも過去のインディの面白さに見合ったものと違うんです。街中のカーチェイスのくだりとか、それはインディ・ジョーンズ的なものと関係ないというか、別にこのシリーズでやらなくていいと思うんですよ。カーチェイスは必要です。しかし、インディが街中で暴れる必要は何もない。

 過去のアーカイブを活かす、という点では褒めるべきところはあります。何よりあのカレン・アレン、一作目のヒロインが登場するところ。これなどは驚きとしていいものになるわけです。でも、褒められるのははっきり言ってそこだけ。あのー、なんで過去のアーカイブをちゃんと活かさないんでしょうか。カレン・アレンが出てきたのは一作目『レイダース』、1981年の作品です。今の観客は知らないし、一作目を観た観客もどんな感じだったか忘れている人が多いはずです。だからね、あれはね、ゲームの『MGS4』のように、あるいは映画なら『SAW』シリーズのように、過去の映画のシーンをすっと挿入すればもっと活きて来るじゃないですか、カレン・アレンの登場が。余計な謎解きだの説明だのをぐだぐだ入れるくらいならそういうところでサービスしてくれよ! 実際に長い時間が経っているわけだから、アーカイブとして活かすなら絶対にここは活かすべきところなんだよ!

 でねえ、途中でまあ、見せ場となる密林内でのカーチェイスがあるんですが、ここは確かに白熱した場面だし、疾走感もあるし、場面吸引力もある。だけどね、こうなるとあのケイト・ブランシェットの馬鹿なスタイルがいかにも軽いんです。なんか、馬鹿っぽいなあという気がしてたまらない。普通の将校なんかでは見栄えがしないと思ったのかもわかりませんが、ああいうキッチュなキャラを入れてくることで、シーンそのものの格式がなくなるんです。このケイト・ブランシェットのキャラクター自体が、最初こそいいものの、いざああいう場面になるといかにも馬鹿らしくなってくる。剣で戦うみたいなくだりはもう、本当に要らない。猿のくだりなんかもどうしようもない。違う映画でやってくれ。カーチェイス場面は過去作でも出てきて、特に『レイダース』『最後の聖戦』の出来映えは本当にいいんです。『魔宮の伝説』のトロッコも素晴らしい。あれをつくれた人たちがどうしてこういうものを撮るのか。

 この映画が過去作に比してやっぱり駄目なのは、仲間が多いせいでもたもたするところなんです。『魔宮の伝説』の女と子供はそれぞれに味があったし、役割も活きていた。『最後の聖戦』はショーン・コネリーですが、これはもう言うまでもなく非常に格好よく、頼りがいがあり、そのくせちょっと間抜けなところがあって、親子という設定も活きていた。今回はねえ、合計で四人も同行者がいるんです。そのうち一人はあれなんですが、そうするとどうしても疾走感に駆けるというか、これはやはり老齢となったハリソン一人では辛いという部分なのかもわかりませんが、どうももたもたもたもたする。過去作に出てきたパートナーに比べて魅力に欠けるし、もっと人物を絞ってもよかったんじゃないでしょうか。正直、ジョン・ハート演じたあの精神を病んだ友人はそれほど絡ませなくていい。インディがクリスタルスカルを持って走るというのでかまわない。そして、実は敵であるあいつを同行させたのもどうなんだという話で、ここも切ってよい。しかしそうなるとアレン・カレンとシャイア・ラブーフだけになってしまう。それだとやっぱり弱い。長々書いているんですが、要するに個々のキャラが立っていないんです。

 言いたいことは沢山ありますが、あのラストですね。ぼくが『魔宮の伝説』を推すのは、あの作品だけが変なファンタジー要素を押し出していないところなんです。『レイダース』にせよ『最後の聖戦』にせよ、クライマックスで変なファンタジーが出てくる。骨太な冒険活劇が、急に妙に幻想がかってしまう。本作は輪を掛けてひどいことになっていて、そりゃ金はかかっているし画面も見事ですけども、あれ、何なのですか? 特典映像のインタビューを観ると、どうやら宇宙人だの異次元人だのを使う構想はかなり最初のほうからあったようなんですが、あのー、それはインディ・ジョーンズに不必要じゃないでしょうか。しかもあの辺のくだりで駄目なのは、散々密林を越え、山谷を越えてやってきたのに、ぜんぜん汚れていないところ。ケイト・ブランシェットの服がちっとも汚れていないのが特に駄目で、もうそれまでの艱難辛苦の蓄積がぜんぜん見いだせない。金こそかかっていても、あのシーンのうすっぺらさはひどいものです。

 二時間の作品なんですが、体感時間はとても長かった。『魔宮の伝説』の三倍くらい長かった。まだまだ書き足りないところはありますが、この辺にしておきたいと思います。
[PR]
by karasmoker | 2009-07-12 23:57 | 洋画 | Comments(0)
←menu