『トイ・ストーリー3』 リー・アンクリッチ 2010

おもちゃという自由自在。
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ものすんごく些細で映画と一切関係ないどうでもいい愚痴。読み飛ばし推奨。
 今日ね、コンビニで買い物をしてね、おつりをもらったわけ。100円のおつりになるようにもらったわけ。でもね、ドアを出る間際、その100円玉を財布に入れようとしたらね、あれれ、50円じゃないかって思ったわけ。でも財布には100円が三枚と50円玉がもう一枚あって、確信は持てなかったの、小銭入れに半分入れているような感じになってたし。あれれ自分の勘違いかなって気もしたの。でもね、なんとなく50円玉のあの、真ん中の穴の感触がふっと指にあったものだから、こりゃ渡し間違いをしたな、と思って、レジのじじいに言ったの。そしたらね、レジのじじいはね、レジを開けて一秒くらい黙った後、「100円を渡しました」と毅然とした風に言うのね。そんなに堂々と言われたらこっちはちょっと自信ない部分もあるからさ、それにこの言い争いは結局絶対に解決しないってわかってるからさ、引き下がったの、急いでいたし。でもさ、その後さ、すっげえ悶々としたねあたし。だって買い物する前とした後で、やっぱり50円じゃ帳尻合わないんだもん、財布ん中。でさ、こうなるとさ、そのコンビニに対するストライキというかね、ボイコットというかね、したくなるよね、一週間くらい。結局あのじじいはさ、50円のために一週間、あたしが落とす分の利益を損失するのよね、ははは、ざまあ見なさい。これね、あたしの勘違いかもしんないけどさ、もしもあそこで100円と50円換えてくれてたら、あたしは今以上にヘビーユーザーになってあげてたのよ、「あたしが間違ってるのかもしんないのに買えてくれた」っていう感謝めいたもんもそこに生まれるわけじゃん。それなのにね、なんかあれだよね。でも、うん、なんかひとつ、商売の心がけを勉強した気がするね。なるほど、だったら50円分の価値はあったからまあいいや。

 ふわふわした軟着陸で速やかに映画評に映ります。
 ピクサー作品は長編ならすべて観ていますが、いちばん好きなのは『ウォーリー』です。その次が『Mr.インクレディブル』『モンスターズ・インク』『バグズ・ライフ』といったところでしょうか。『トイ・ストーリー』自体はそこまで思い入れないです。長男ということもあり、おもちゃは結構買ってもらったはずで、それなりに幼少期をともに過ごしたはずなのですが、むしろテレビゲームに熱中した記憶ばかりが根強くて、おもちゃにあまりぴんと来ない。ゲームカセットが主役の映画だったらもっと思い入れるかもしれないんですけどね。中古屋に売られていくファミコンソフトの話なら泣けるかもしれません、味気ないですけど。
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 個人的な話をついつい続けるなら、人形たるものには愛着よりむしろ畏怖のほうが大きいですね。昔、床の間に飾ってあった日本人形(女子)を妹が損壊したことがありました。顔の片側が無残に砕けたそれを見てぼくは恐怖におののき、「これはなんらかの呪いとかそういうあれが降りかかる可能性大」と考え、人形に対する謝罪文をしたためました。
「妹は貴女を故意に破損せしめたわけではなく、あくまで不慮の事故によるものにて候。取り返しのつかぬことと存知候えども、災厄、祟りの類の無きことを何卒お願い申し候。」
幼い妹は訳もわからずえへらえへらとしておったので、「何をか笑わん」と殴りつけ、妹をびいびい泣かせ、「まあ妹もこのように反省しておるので何卒」と土下座しました、人形に。
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 そういう記憶があるので、人形はどうも怖いのです。愛玩の思いが弱いのです。
 しかし映画の出来はそれを差し引いても大変によくできておりました。他のピクサー作品と比べて本シリーズが勝っているのはひとえに、キャラクターの多彩さです。要するに、「モチーフは何でもあり」なのです。おもちゃというものに落とし込みさえすれば、恐竜でも巨大な赤ちゃんでもエイリアンでも何でも出せる。もちろん異世界ファンタジー的な話なら、それこそ妖怪とかドラクエのモンスターみたいにいろいろ出せるわけですけど、それはやっぱり「異世界」ということで逃げている部分もある。本シリーズは現実に存在するものでありながら、さもワンダーランドのごとき多種多様なキャラを出せるので、観ている側は現実の異化効果みたいなもんを感知し、余計に楽しめるわけなのです。小さな世界が大きく見える、というのは最もわかりやすい異化のひとつです。保育園の小さな遊戯部屋が遊園地のように見えてくる。主人公たちが新しい居場所を開いたあの瞬間の快楽は、なかなか味わえるものではありません。
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 前々から出ていたキャラですが、本作ではバービー人形がすごく面白く見えました。なんでかというにこれもキャラの多彩さってところで、他の連中と等身が違うんですね。二等身くらいのキャラが多い中で、一人だけスタイル抜群というのは笑う。タッチが違うから面白いんです。これはぼくが昔から、「そういう漫画ないのかな、あったら面白いのに」と思っていたもので、明らかにタッチの異なるキャラ同士が共存している絵というのは、それだけで面白くなる。こっちの脳を程よく刺激してくる。
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 ピクサーはさすがに偉いなと思うのは、出てきたキャラにきちんと見せ場をつくるところです。脇役でもどこかでちゃんと見せ場をつくってやるというところに、キャラクターへの愛情を感じてやみません。恐竜の出番がちょっと少なかったくらいで、ほぼ全員、そのおもちゃ独特のやり方で活躍していました。トトロをさりげなく出してくるところもいいです。なおかつこれまたいいのは、ガキの凶暴性をきちんと描いている点ですね。純粋無垢で可愛らしくて、というわけじゃなく、「ガキは乱暴」というのをしっかり描いていて偉い。この映画でいちばん暴力的なのは、年少のガキですからね。
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 それでいうと、ジャイアントベイビーが怖いのが面白い。月夜ブランコに座り込んでいるベイビーは面白い。赤ん坊がたそがれているのが面白い。あれは人形の怖さが表現されているので、ぼくはとても好きです。うるさい猿も面白いんですねえ。あれもまたキャラの妙技の出しどころで、人格を持たせようと持たせまいと自由なんです。あの猿は人間的であってもなくてもいいわけで、単純に面白いほうを選択できる。おもちゃという題材は本当にやりたい放題できるんです。
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 飽くことなく観られます。最後、ハリウッド的冒険譚からの着地タイムが長いんですけど、あれはあれでいいんです。というか、ピクサーはそりゃ脚本をめっちゃ考えている人たちの集まりですから、なるほどすっごい考えているなと思わされます。あれね、命からがら逃げ出した後を、短く収めようと思えばできるんですよきっと。でも、そういうハリウッド的なお手本通りの尺の扱いでは、この映画に十分な余韻をもたせられないわけです。命からがら逃げ出したねやったねハッピー、ではなく、おもちゃの幸せをきっちり、くどくてもきっちり描くことが必要なんじゃ、というわけです。
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 心にずしりと来る、残る、ということは今回もなかったです。でもそれはぼく個人の捉え方だと思うし、これに撃ち抜かれる人がいてもおかしくない、というか、それなりにいてほしいとさえ思います。エンターテインメントとしてはピクサーのすごさが今回もいかんなく発揮されていて、映像的クオリティも前進の一途で、なんだかもう、逆につまらないくらいです(どないやねん)。

 これを人に薦めて、「つまらなかったよ」と言われることはそうそう無いでしょう。そういう風に思わせる作品というのは、とんでもないものなのです。
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by karasmoker | 2011-05-06 22:53 | アニメ | Comments(0)
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